ちなみにこれまで使っていたプリアンプ、マランツのAV7005とフロントパネルはまったく同じです。外観上の違いは、AV8801が3ピースのセパレートトップカバーになっているところぐらいでしょうか。。。
左がAV7005、右がAV8801
これまでのAV7005は、DSDビットストリーム信号をデコードする機能が省略されていたので、SACDプレーヤーとHDMI経由でつないだ場合、送り出し側のプレーヤーがDSD信号を一度PCMに変換してから送り出す仕様になっていました。
これに対してAV8801は、PCM1795という強力なDSD対応DACチップを11.2ch分、合計7個搭載しているので、PCM変換することなくネイティブのDSD再生(ステレオ、マルチチャンネル再生どちらも)ができるのです。
DSD信号をネイティブに再生するメリットは、アナログ出力を得るための余計な変換回路(補完フィルタ、ΔΣ変換)を簡素化することによる音質向上が期待できるというものです。詳しくはシンタックスジャパンのこちらのサイトに判り易い解説があります。
DSDの音源はSACDディスク以外にも最近ではハイレゾファイルとして配信されているものが増えてきたため、我が家ではもっぱらDSDファイルをネットワーク上のNASに保存したものから再生させて楽しんでいます。
AV8801にはネットワーク再生機能があるのですが、残念ながらDSDファイルのストリーム再生には非対応なので、OPPOのネットワークプレーヤーを経由して再生させています。本当は、AVアンプがDSDファイルのストリーム再生に対応していれば、伝送ジッタの影響が大きいHDMIインタフェースを介することなくネットワークからダイレクトに伝送信号を受け取れるので音質向上につながるのですが、これができるAVアンプでステレオ/マルチチャンネルDSDに両対応しているものは私が知る限りソニーのTA-DA5800ESというミドルクラスのAVアンプしかありません。
ちなみに再生中の画面はこんな感じです。トラックタ。。の右に小さくDSDと出ているのがDSDダイレクトを表しています。OPPOが最近のファームウェアアップグレードでDSF/DFFファイルのアルバムアート表示に対応したのは嬉しいです。
ちなみにオーディオマニアの常識としては、ジッタの多いHDMIでデジタル信号を伝送させることは避け、再生プレーヤー側でDSDからアナログ変換した信号をアンプに送る方法が圧倒的に多いと思います。この場合のデメリットは、5.1マルチチャンネルの場合、アナログケーブルを6本も繋がなければならないという点です。
HDMIのジッターについては、オーディオ技術者協会のこちらのサイトに詳しい測定結果が出ています。
またこちらのサイトによると、HDMIのジッターはSPDIFの約40倍(!)というデータが示されています。
HDMIのジッターを低減させる方法として、ARC(Audo Rate Control)という規格がHDMI1.4で制定されましたが、残念ながらメーカーでの実装(ソニーのHATSやパイオニアのPQLS)がバラバラで互換性がありません。
OPPOのネットワークプレーヤーBDP-103/105はHDMIの出力を2系統持ち、A/V信号を分離することによって音質向上を図っています。DSDビットストリームに余計なビデオ信号を混ぜないという考え方で、一定の効果があるようです。
話をAV8801のDSDダイレクト再生に戻すと、このモードを使うと、フロントパネルにはDSD DIRECTの文字が光ります。
DSD DIRECT表示です!
ところが話はここから更にややこしくなるのですが、AVアンプに装備されているマルチチャンネル用の音場補正(部屋の音響特性に合わせた各スピーカー間のレベル調整、位相調整、クロスオーバー周波数調整など)プログラムを使うと、せっかくのDSDダイレクト入力でアナログ変換された信号が再び強制的にPCM変換してDSP処理することになってしまうのです。
もちろん音場補正プログラムを使わずにピュアダイレクトモードでDSD DIRECTモードのまま再生すればよいのですが、その場合は音場補正なしの音を聴くことになり、多くの場合、音場補正オンより音質的に不利になってしまうというジレンマに陥ってしまいます。。。
ここらへんの事情が、マルチチャンネルDSDがピュアオーディオとして普及が進まない原因のひとつではないかと思います。。。
DSDダイレクト再生の他にも、AV8801を導入して便利になったのが、HDMI2系統同時出力機能です。これまでのAV7005は、HDMI出力は1系統しかなかったのですが、HDMI2系統同時出力ができるようになってTVとプロジェクタを切り替えるときにいちいちAVアンプの出力も切り替える手間がなくなりました。
もちろん機能面以外にも、AV8801はAVプリアンプのフラッグシップモデルとして、多くの特徴や性能改善があります。ただし発売時期からしばらく経っているので、最先端機能(たとえばDolby AtmosやHDMI2.0など)には対応していません。
さて、肝心の音質ですが、正直これほど変化するとは予想もしていませんでした。同じマランツのAVプリなのだからそう変わらないだろうと正直あまり期待もしていなかったのですが。。。
まず、楽器のセパレーションが圧倒的に改善されました。聞き慣れたソースで今まで中低音に混ざって気付かなかった微妙な楽器音や効果音がはっきりと聴こえるようになりました。
また、(サラウンドソースで)リアチャンネルの音質が改善され、これまでは付属でしかなかったような背後からの音にも臨場感が乗りました。
ソースをDSDダイレクトモードから、PCMソースのものに切り替えても、上記の傾向は変わらなかったので、DSDダイレクトの効果というより、AVアンプのグレードそのものが変わった影響ではないかと思います。
これから秋の夜長にじっくり聴き込んでいこうと思いますが、(価格も手頃になった)AV8801を導入して大正解でした。
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