先日秋葉原にあるオヤイデやe-イヤホンという店舗を訪ねてビックリ。。。所狭しとバランスケーブルや対応製品が並んでいるではないですか。。。!
オヤイデ店頭のバランスケーブル群
e-イヤホンの商品棚(e-イヤホンブログより)
かくいう私も、Ponoのバランス接続を試したくて先日ケーブルを自作しました ^_^
Ponoプレーヤー用の自作バランスケーブル
自作でなんとかケーブルは完成したものの、極細の芯線を剥いてハンダ付しなければならない作業があまりに面倒で、イヤになってしまいました。
バランス対応のヘッドフォンやイヤフォンを手軽にもっと簡単に楽しめないものでしょうか?
そこで、市販品のバランスケーブルと対応ヘッドフォン/イヤフォンはどのようなものがあるのかを調べてみたのですが、驚くほど混沌とした状況であることがわかりました。
1. バランス接続とは
バランス接続の原理は、こちらのサイトに詳しく説明があるので割愛しますが、簡単に言うと、以下の通りです。従来のアンバランス接続では、「HOT(ホット)」と「GROUND(グラウンド)」の2種類で信号をやりとりする方法です。仕組みは簡単で安価ですが、ノイズに弱いという欠点があります。
一方、バランス接続では、「HOT(ホット)」「Cold(コールド)」「GROUND(グラウンド)」の3種類で信号を伝送します。アンバランス接続では共有されていた「Cold(コールド)」と「GROUND(グラウンド)」を分離することにより、ノイズに強い伝送となります。
なぜバランス接続はノイズに強いかというと、信号は最終的にアンプ部分でコールドの位相を反転させホット信号にミックスするという処理が行われますが、音には「ある信号の同相同士が足されると信号は倍になり、逆相同士が足されると打ち消し合う」という性質があることを利用して、(理論的には)最終的に回路でミックスされた元の音声信号は倍、ノイズは打ち消し合うという現象がおこります。
バランス接続のノイズキャンセルの原理(上記サイトより)
またバランス接続は、左右のチャンネルの音声が混在してしまういわゆるクロストークの低減にも効果的で、また左右のドライバユニットを個別のアンプで駆動することでパワーに余裕のある点も音に有利です(バイアンプ接続と同じ原理です)。
ホームオーディオのバランス接続用のケーブルは規格がはっきりと統一されており、XLR(通称キャノンプラグ)という端子で機器同士をつなぐことになります。典型的な例は、CDプレーヤーとアンプ間、もしくはプリアンプとパワーアンプ間などです。
ホームオーディオのバランス接続
各チャンネル3本xSTEREOで合計6本の線で結線されるわけです。もうひとつバランス接続のメリットは、アンバランス接続(通常のRCAピンによる接続)と比較して、接点がロックでがっちりと接続するため、接点部の緩みに起因する音質低下と無縁という点です。
XLRの極性
このXLR端子というのは、堅牢な反面、サイズも大きいため、当然ポータブルオーディオやヘッドフォンには向いていません。
そこで、別の端子を使うことになるのですが、実はこの端子の種類(コネクタ)がメーカーで千差万別で、一見共通規格が存在するように見えるものの、実は細かい点で様々な仕様が乱立しており、まったく互換性が見込めないという実に困った状況になっているのです。
2. ポータブルオーディオのバランス接続
そもそもポータブルオーディオでバランス接続が流行りだしたきっかけとなったのは、iriverのハイエンドポータブルプレーヤーAK120II/240と、SonyのポータブルアンプPHA-3だと思います。AK120IIのバランス出力端子は、筐体上部のヘッドフォン端子(3.5mmミニジャック)の横にあります(2.5mm 4極端子)
AK120IIのバランス出力端子(中央の穴)
一方、PHA-3のバランス出力端子は、ヘッドフォン端子(3.5mmミニジャック)の横に同じく3.5mmのミニジャックが2つ左右独立でついています。
PHA-3のバランス出力端子(左右独立)
ちなみに私が愛用しているPonoのプレーヤーも同じく3.5mmのミニジャックが2つ左右独立の仕様です。
ところが、同じソニーの最上位機種ウォークマンNW-ZX2では、バランス出力は正式にはサポートされていないものの、どうやらファームアップで計画されているようなのですが、バランス接続端子はAK120IIともPHA-3とも異なり、3.5mmの4極ピン(通常のアンバランス出力端子と共用)になります。
NW-ZX2のバランス出力端子(左端の端子)
さらに、最近発売されたパイオニアのポータブルアンプHPA-700では、バランス出力端子は、IRIS端子という4角の形状をしたものになっています。。。
HPA-700のバランス出力端子(中央の̻4角の端子)
ほかにもラトックシステムのポータブルアンプREX-KEB01F は、2.5mmのミニジャック(3.5mmではないところが注意)が2つ左右独立でついています。
REX-KEB01Fのバランス出力端子(右の2つの端子)
出力側だけでもこれだけ規格が乱立しているというのに、それを受けるヘッドフォンとケーブルのほうは更に複雑です。。。
3. ヘッドフォンのバランス接続
ではまず、ヘッドフォンから。。。バランス出力対応のヘッドフォンとして真っ先に思い浮かぶのは、ゼンハイザーのHD25(およびその後継機種)です。もう10年くらい前くらいでしょうか、高級ヘッドフォンのリケーブル(ケーブル交換)が流行りだした頃から、その手のヘッドフォンの代表格でした。
ゼンハイザーのHD25
ただしHD25用の市販されているバランスケーブルはラトックのRP-KEBSE1R/Aくらいしかないようで、それも2.5mmの2本線という、上記の出力端子のいずれにも該当しないもののせい(ラトックのポータブルアンプには接続可)か、多くのユーザーは4極プラグを使って自作しているようです。
ゼンハイザーにはHD25以外にもハイエンドのHD800/650がバランスケーブル対応しています。
海外メーカーのハイエンド機のバランス対応は比較的進んでいるようで、ゼンハイザー以外にもUltrazone Edition9やGrado GS1000などが商品化しています。また4極ケーブルを使ってバランス化改造できるAKG K701のような商品もあります。
ただし留意すべき点は、これらの製品のほとんどがバランス接続用のケーブルは別売となっており、それもXLRコネクタの場合がほとんど(据置き型のヘッドフォンアンプとの接続が前提)で、ポータブル機器と接続できる製品はほとんど存在しないという点です。
そのなかで例外的にヘッドフォンアンプやポータブルプレーヤー対応のバランスケーブル対応しているのが、最近のソニーの高級ヘッドフォンです。どうやらソニーはこの分野に本腰を入れているように見えます。ソニーのバランス対応についてはこちらの記事が詳しいです。
ソニーの最上位機種MDR-Z7は、専用のバランスケーブルが付属する数少ないヘッドフォンです。このバランスケーブルは、同じソニーのヘッドフォンアンプPHA-3に接続することができます。接続は3.5mmのステレオミニ端子を2本使います。
MDR-Z7とPHA-3のバランス接続
そもそもウォークマンNW-ZX2の2.5mmの4極プラグは、上の記事にも書いているとおり、プラグ内の導体の断面積が狭いというデメリットがあります。
またMDR-Z7の下位機種であるMDR-1Aも、バランス接続対応ですが、ケーブルは別売(MUC-S20BL1、実売9,000円前後)、ウォークマンNW-ZX2にはやはりバランス接続することはできません。
4. イヤフォンのバランス接続
次にインナーイヤフォンについて。。。リケーブルが可能なインナーイヤホンはShureやUE、Westoneなどリケーブルできる製品は基本可能なので、対応製品は多いのですが、イヤフォンユニット部とケーブルの接続部(コネクタ)は、規格化からは程遠い状態にあるため、対応ケーブルは乱立状態でどれがどのイヤフォンに対応するかを見極めるのは困難を極めます。。。
一応、MMCX、FitEar(IFM)、Westoneとコネクタの規格の名前はあるようですが、互換性が保証されているわけではないようです。MMCXは、Shureの「SE535」などSEシリーズ、Ultimate Earsの「UE900」、Westoneの「Adventure シリーズ ALPHA」、ソニーの「XBA-H2/H3」などで採用されているので一番普及しているのですが、MMCXの規格から外れる“独自端子”としているメーカーも存在するようです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
つまり、イヤフォンのリケーブルで特定のポータブルアンプ(もしくはプレーヤー)とバランス接続をしようとすると、
プラグの種類 X コネクタの種類
分のバリエーションがあって、そこから正しいケーブルを選択する必要があるということです。これはなかなか面倒な作業です。
これだけ互換性のないプラグとコネクタが乱立している状況は、オーディオ製品としては珍しいのではないでしょうか。。。
さて、では、ケーブル自作をせずに、既製品だけでバランス接続を楽しむための一番良い組み合わせは何を選べば良いのでしょうか?
一番馴染みのあるのはやはりソニーではないでしょうか。上記のMDR-Z7ヘッドフォンと、ヘッドフォンアンプPHA-3の組み合わせであれば、バランスケーブルも付属してきますので、買ってきてすぐにバランス接続を楽しむことができます。
しかし、ヘッドフォンアンプPHA-3を使いたくない場合、もしくはもっと気楽にインナーイヤフォンで楽しみたい場合は、以下の組み合わせをおすすめします。
手前味噌で恐縮ですが、個人的には携帯プレーヤーの決定版は、DSDネイティブ対応を果たしたPonoだと思います。あいにく国内販売はされていないので、購入するには米国のサイトでPaypalなどで決済を行う必要があるのですが、いずれ国内でも販売されるようになるのではと期待しています。
Pono Music Player
このPonoの場合は、バランス接続のプラグは、3.5mmミニプラグ2本となっています。それに対応するインナーイヤフォンは、UE Triple Fi.10 Proやその後継UE 900か、もしくはShureのリケーブル可能なSE315/415/535あたりが候補となります。
純正のバランスケーブルは発売されていないのですが、UE向けのケーブルもShure向けのケーブルも探すといくつかあるようです。
たとえば、ラトックシステムのバランスケーブルRCL-KEBSH1CKはMMCX端子なので、Shureのイヤフォンに対応しています。
ラトックシステムのバランスケーブル(RCL-KEBSH1CK)
注意点は、プラグが2.5mm x2なので、3.5mmプラグに挿す場合には3.5mmオス‐2.5mmメス変換プラグが必要となります。変換プラグは秋葉原の千石電商2号店の2階で50円くらいから手に入ります。
変換プラグをかますとヘッドフォン端子が若干長くなってしまいますが、余計な力がかからないように注意すれば実用上は問題ありません。
PonoにShure315をバランスケーブル(RCL-KEBSH1CK)を使ってバランス接続
(2015/03/24 追記)
上記のPonoにRCL-KEBSH1CKケーブルを3.5mmオス‐2.5mmメス変換プラグを介して接続する方法は、Ponoは3.5mmモノラルジャックの使用を禁止しているということで、故障の原因となるようです。私はしばらくこれで使っていて問題はありませんでしたが、お勧めしません。素直にSonyのMUC-M20BL1ケーブルを使うのが良いと思います。
一体全体どういうことでしょうか。。。?バランスケーブルでの音質の激変は、ハイレゾ音源の違いによる変化よりも分かり易く、オーディオを趣味として楽しむにはもってこいの要素なのですが、このままでは残念ながら普及には程遠い状況。。。
国内外のメーカーさんにぜひ超党派的に規格の一元化に向けて動いてほしいと切に願います。
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Ponoは故障の原因になるので3.5mmモノラルジャックの使用を禁止しています。RCL-KEBSH1CKは2.5mmモノラルなので3.5mmオス‐2.5mmメス変換プラグをつかっても内部でRとSが短絡されてモノラル相当になると思います。
返信削除Ponoにこの手は危険だと思います。
ShureにはすなおにSonyのMUC-M20BL1が安全だと思います。
コメント有難うございます。Ponoにモノラルジャックは危険というのは知りませんでした。ブログの内容も修正します。私も今のところトラブルはないのですが、この使い方を止めます。
削除匿名さんご指摘のとおり、ShureにはSonyのMUC-M20BL1とセットが安全ですね。
ご指摘有難うございました。
返信ありがとうございます。
返信削除ちなみに情報Sourceを記載していませんでしたね。Sourceは以下です。
https://ponomusic.force.com/069A0000001eCMz
PonoのBalance接続時のケーブル図面です。
私はこの図面を基にSE846とK701とHD650と自分でバランス接続改造したK550をPonoのBalancedで駆動可能に改造しました。
情報ソースありがとうございます。確かに
削除Note: NEVER Use a MONO 3.5 mm Plug! This Will Damage Your PonoPlayer!
とありますね。。。
匿名さんはハイエンドの名機をバランス改造されているのですね。それぞれの特徴が味わうことができて楽しそうですね。Ponoは年内にも某社から輸入代理店販売が始まるとのウワサも。。。OPPOのようなブームになるのではと思います。
最近、バランス接続に興味があり、いろいろ調べているのですが、分かり難い上に規格が乱立。
返信削除この記事は為になりました。
私的には2.5mm (もしくは3.5mm)x 2本が適切かと。
かつてシャープがバランス接続に着手していました。
MDで。
3.5mm4極プラグ対応のMDウォークマンと4極プラグヘッドホンを発売していました。(インナータイプ)
一度試聴したことがあります。
ややクリアな感じがしました。
実は、このMDウォークマン所有しております。
しかし、故障して聴くことができません。今度ダメ元でサービスセンターに持っていきます。
ブログ訪問有難うございます。この記事の内容もすっかり古くなってしまいましたがバランスケーブルはまだまだ発展途上のようです。最近5極4.4mmのバランスケーブルの共通規格がJEITAから発表され、ソニーが商品化を進めていますが、どうなることやら。
削除MDウォークマンがバランス接続モデルが出ていたとは知りませんでした。まだお持ちということでお宝ではないでしょうか。無事修理できることをお祈りしています。