ハイレゾ対応カーナビ(ケンウッドMDV-Z702W)でapt-Xを試してみました

最近自家用車を13年振りに買い替えたのを機に、カーナビもハイレゾ対応のケンウッドMDV-Z702Wに替えました。


MDV-Z702(製品ページより)

これまで使っていたカーナビは、カロッツェリアの楽ナビ(AVIC-DRV120)という2004年頃に購入したモデルでした。実に12年振りに新しいカーナビに買い替えたことになりました。

この10年のうちに車で音楽を聴く環境も大きく変わり、以前は音楽CDを車に持ち込んで聴くスタイルだったのが、今ではスマホに保存した音楽をカーステに繋いで聴くというに変わりました。

スマホの音楽をカーナビで聴くためには、つい最近までこんなアダプターを使って車載のカセットプレーヤーにアナログ接続していました。Sonyのカセットアダプタ(Car Connecting Pack CPA-1)というものです。

Car Connecting Pack CPA-1

最近のカーステはさすがにカセットテープはかけられないのでこの製品もついに役目を終えました。

また一時期はiPhoneのアナログDockコネクタ(今はライトニングですね)にFMトランスミッタを繋いでFMラジオで聴いていたりもしましたが、面倒な上に雑音がひどく、結局止めてしまいました。

その後カーナビも劇的に進化。今やiPod/iPhoneに繋ぐUSBケーブルを装備したカーナビやカーステレオが当たり前のように普及しています。

MDV-Z702Wにも、USBケーブルが2本出ており、別売のアダプタを使えばiPhoneやAndroidなど様々なスマホと繋いで音楽を聴くことができます。

ケーブルを介した有線接続という方法と別に、無線のBluetoothを使ってスマホと接続するという方法もあります。ペアリングという事前準備が必要ですが、最近のBluetoothはペアリングも便利で、以前のようにパスコードを入力する必要もなく、あっという間に設定できるように非常に便利になりました。

手順としては、カーナビの地図画面から、画面右端を指で左方向にスワイプすると、下の写真のようにソース切替画面が出て来ます。

MDV-Z702のソース切替画面

その画面の右上にBT AUDIOというアイコンがあるので、それをタッチしてあとは画面の指示に従って設定するだけです。

設定画面その1

設定画面その2

ちなみに、最近のカーナビはFMチューナーは当然のこと、地デジTVもフルセグ仕様で内蔵されていて凄いですね。ディスプレイも7インチWVGA(800x480)のワイド画面でクッキリです。

今回は、DoCoMoのハイレゾ音楽対応スマホ、Sony Xperia A4 SO-04GをBluetoothを使って接続してみました。

これまでBluetoothで音楽を無線で飛ばすというのは、便利な半面、利用できる帯域幅に制限がある関係でモヤモヤとしたこもった音域になってしまうことが多く、また操作もモッサリとした反応で使いにくかったのですが、今回Bluetoothで繋げてみてビックリ!あっという間に接続して動作反応も問題なく、しかも音質も驚くほどクリアです。

スマホの音楽をBluetooth接続でカーナビ再生

曲名やアーティストなど楽曲情報もBluetoothでちゃんと転送して表示されるのも驚かされます。

楽曲情報もしっかりと表示されます

どうしてこれほどBluetooth接続でクリアな音楽が聴けるようになったのでしょうか?

これには理由がありました。

今回使ったスマホ(Xperia A4 SO-04G)とカーナビ(MDV-Z702W)の両方が、Bluetoothの新しい規格であるapt-Xに対応していたのです。

apt-Xとは、CSRという英国の半導体メーカーが開発したコーデックで、「アプトエックス」と発音します。

apt-Xのロゴマーク

これまでのBluetoothの音声コーデックは、SBC(SubBand Codec)コーデックや、AAC (Advanced Audio Coding)が標準的でしたが、SBCやAACは、利用できる製品が多い反面、圧縮効率や転送速度を優先しているため、音質面では今一つだったのです。

apt-Xは、SBCやAACの問題点を解決して、従来の聴覚心理を利用した圧縮方式を採用せず、同時に遅延も最小限に抑える技術特徴を持っています。apt-Xを使うと、CD音質クオリティ(44.1kHz, 16bit)の1.4Mbpsの信号を、352kbpsへ約4分の一に圧縮して伝送することができるそうです。

apt-X方式の特徴(サンワダイレクトより引用)

具体的な遅延時間の比較では、aptXで70ms(±10ms)という値に対し、AAC VBR(256kbps)で800ms(±200ms)、SBCで220ms(±50ms)、AAC(128kbps)で120ms(±30ms)の遅延が起こるそうです(「実験で検証! Bluetoothコーデック「aptX」はなぜ高音質で低遅延なのか?」より)。公式にはapt-Xの遅延は30msだそうです。

今ではAndroid4.0以降のスマートフォンの75%がaptXに対応しているそうで、全世界のaptX対応デバイスの合計は約10億台にも上るとのこと、凄いですね。

ただ、apt-Xは48kHz/16bitの音楽の伝送が限界なので、今流行りのハイレゾ音源の伝送はできません(最近発表されたapt-X HDなら48kHz/24bitまで対応できるとのことです。余談ですが、apt-X HDの対抗ソニーのLDACはBluetooth規格上限である1Mbps近くまで使って96kHz/24bit相当のハイレゾ音源を伝送することができるようです)。

実際に繋いで聴いてみると、レスポンスの良さ、音の伸び、どれを取ってもこれまでの「Bluetoothは便利だけど音が悪い」という常識を覆すものでした。

ハンドル手元のボタン操作も可能

音楽再生中は、楽曲タイトルや演奏時間などもカーナビに転送されているようで、パネルにちゃんと表示されます。しかも、ハンドルに付いているコントロールボタンで再生・一時停止・早送り・巻き戻しなどもできるので、完全ハンズフリーで運転できるので安全です(もちろん、再生中にスマホに着信があると、自動的にハンズフリーの音声通話に切り替わります)。

。。。これは便利過ぎる!

完璧なapt-Xですが、唯一残念な点は、現行のiPhoneはBluetoothはAACのみで、apt-Xには非対応ということです(しかしこれも今月末に発表が噂されるiPhone7ではどうなることでしょうか。。。)

また、ハイレゾ音源をハイレゾのまま忠実にワイヤレス再生するためには、apt-X HDでも帯域制限があるので現状ではできません(そもそもハイレゾを忠実に再生するためには、社内のスピーカーやアンプなどをすべてハイレゾ対応に買い替える必要があるのですが)。

ハイレゾ音源をどうしても再生したい場合には、音源をUSBまたはSDカードに保存してカーナビに入れるのが現実的です。

また、通常の音楽CDを再生すると、カーナビの楽曲情報データベースに保存されているCDはすぐに楽曲やアーチスト情報などが表示されますが、新譜CDなどデータベースに登録されていないものは、スマホを使ってデータベース更新が必要となります。

具体的には、Kenwood Music Infoという無料アプリケーションをスマホにインストールし、Bluetoothでカーナビに接続した状態でそのアプリを起動させます。

Kenwood Music Info

アプリを起動させると、上記画面のように Please connect と表示されるので、その状態で、新譜CDの、[アルバム名変更]→[楽曲情報取得]と選択します(詳細はこちらを参照ください)。

すると、スマホ経由でRoviの楽曲データベースから取得してきた楽曲情報が、Bluetooth経由でカーナビに送られ、カーナビのCDデータベースが更新されるという仕組みです。

CD楽曲情報を更新

こうして、新譜CDでも、楽曲やアーチスト情報などが表示されるようになりました。テクノロジーの進歩には驚かされます。。。


このように、車のなかで音楽を聴くスタイルは、今後も確実に進化し続けて行くのでしょうね。

(おわり)

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