【究極の洋楽ロックアルバム名盤ベスト10】(プログレ除く)

「人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある」、という衝撃的な研究結果が少し前に話題になりました(最近の調査によると、30歳と6カ月とさらに早まっている)。

かくいう私も、かつての音楽に対する熱意も醒め、最近は昔のお気に入りアルバムを聴き返すだけで、最新の音楽に対する興味も熱意もすっかり失せてしまいました。

もはや人生で一生の宝となるアルバムに出会うこともないだろうということで、これまでの人生で個人的に最も影響を受けた洋楽ロックアルバムを10枚選びました。

しかし、たったの10枚に絞るのは至難の業。そこで、プログレ(プログレッシブ・ロック)は除外するという制約をつけて独断と偏見で選出したのが以下の10枚です。

【究極の洋楽ロックアルバム名盤ベスト10】

No.1  幻想飛行 /ボストン (1976)



私が生まれて初めて買ったLPがボストンのドント・ルック・バックでした。たぶん中学1年生のときだったと思います。小学生時代はビートルズとかサイモンとガーファンクル、ABBAなんかを聴いていたのですが、ボストンと出会ってから本格的な洋楽ロックの世界に没入していったのでした。透明感のある宇宙的な拡がりを持つ独特のボストンサウンドは今聞いても斬新そのもの。ボストンのニューアルバムというのは、サイクルが8年ぐらいあって異常に長いですが、3作目まではどれもが大傑作でした。

No.2  ヒステリア /デフ・レパード (1987)



ハードロックのコンセプトアルバムとしては史上最高傑作です。アルバム通して一切捨て曲なし、すべての曲が有機的に繋がっており、スピード感溢れる最高のハードロックを堪能できます。ドラマーはこのアルバム収録前に交通事故で片腕を失ったのですが、カスタムオーダーのドラムセットを駆使して、見事なリズム感を構築しています。数々のヒット曲が生まれましたが、私はストレートなロックンロール Run Riot が一番気に入っています。

No.3 ダウンワード・スパイラル /ナイン・インチ・ネイルズ (1994)



インダストリアル・ロックの代表的アルバム。先入観無しに聴けば神経を逆撫でするノイズ音に嫌悪感しか感じないと思いますが、何度も聴き込めば、真にクリエイティブに創造された音楽性の高さと独創性に中毒になってしまいます。Eraser~Reptileの2曲に渡るメロディラインやリズムは圧倒的なオリジナリティで個人的には最も気に入っています。

また発売10周年を記念して2004年にリリースされたSACDマルチチャンネル盤は、ステレオとは異次元の音楽体験を楽しむことができます。

No.4 ミッドナイト・マッドネス /ナイト・レンジャー (1983)



商業ロックの典型的なアルバム。キャッチ―なメロディラインとテクニカルな演奏でどの曲も完成度は高い。捨て曲なし。前半のシングル・ヒット曲群もいいですが、後半のパッション・プレイ~ホエン・ユー・クローズ・ユア・アイズ~チッピン・アウェイ~レット・ヒム・ランまで最高の曲が連続して聴いていて至福感に浸れます。似たようなバンドが履いて捨てるほど出てきたなかで、何故か彼らだけが長年記憶に強烈に残っているのは何故でしょうか。

No.5  暗黒の掟 /ヴァン・ヘイレン (1980)



ヴァン・ヘイレンのアルバム1枚を選ぶのは至難の業でした。敢えてこの1枚を選んだのは、このアルバムが実に陽気ながら反体制・反骨精神に溢れた作品だからです。歌詞の意味は曖昧ですが、表題の「女性と子供を優先」という社会の規範を皮肉って、「お前のガキの成績を見たことあるか?」とか、「あのストリッパーはかつてのプロムクイーン(学園祭のミスグランプリ)だぜ」とか、デイブ・リー・ロスのボーカルは超下品で、お世辞にも万人向けではありませんが、カッコ良さは抜群です。個人的にはこの後立て続けにリリースされた「戒厳令」「ダイヴァー・ダウン」の3部作が彼らの最高傑作だと思います。

No.6  ユーズ・ユア・イリュージョン /ガンズ・アンド・ローゼズ (1991)



ビートルズの「ホワイトアルバム」、ピンクフロイドの「ザ・ウォール」と並ぶ、ロック史上最高傑作の2枚組アルバムの1つです。アメリカの狂気と苦悩、その怒りが炸裂する、怖ろしい程エネルギーが詰まったアルバムです。

I(レッド)からは、ラストの大曲「コーマ」が素晴らしいです。曲の中間部は心臓音のリズムに静かにメロディが奏でられ、やがてドラムスの高揚とともにギターが割り言って、ディストーションが利いたボーカルが加わるシーケンスにはシビれます。
「バック・オフ・ビッチ」も女性を痛烈に蔑む曲で、デイブ・リー・ロスの下品だけどユーモラスなボーカルとは対極的なシリアスで暴力的なボーカルが惹き付けます。

II(ブルー)のほうは、9分を超える超大作「イストレインジド」が素晴らしいです。嗚咽のようなかすれ声で始まる曲は、ジャンルではバラードだと思うのですが、あまりに壮大な構成のため、単なるハードロックグループのバラードとは全く別物です。アクセル・ローズの絶望的な精神状態がモロに心に響きます。

No.7  メロンコリーそして終りのない悲しみ /スマッシング・パンプキンズ (1995)



30歳を過ぎて出会った数少ない生涯ベストアルバムです。彼らのライブ公演は、最前列のスピーカーの前の席だと難聴になると言われるほどの轟音らしいですが、このアルバムでももはや楽器間の解像度など期待すべきもないほど混沌とした演奏が繰り広げられます。にも拘わらず、2枚組を一気に聴き通せてしまうのは、彼らの音楽性の高さ所以でしょう。

個人的にお気に入りの曲は、テンション全開になる「ジェリーベリー」、これぞスマパン的な「ゼロ」、これでもかというディストーションの利いた「ラブ」、Disc2の冒頭を飾るノリノリな「ホエア・ボーイズ・フィアー・トゥ・トレッド」、音の洪水「ボディーズ」、軽快なリズムの「1979」、超ハードな「X.Y.U.」、などなど。。。うーーん選びきれません。

No.8  白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス  /ホワイトスネイク (1987)



商業ロックの究極の1枚。最高の曲を、最高のアーティストが最高の演奏をして、最高のアレンジがされるとこうなるというお手本のようなアルバム。初期のような粗削りの魅力はないが、完成度の高さではこのアルバムに匹敵するハードロックアルバムはないものと断言できます。

月並みですが、やはりこのアルバムのハイライトは「スティル・オブ・ザ・ナイト」で決まりです。

No.9  カインド・オブ・マジック /クイーン (1986)



こちらもクイーンのアルバム1枚を選ぶのは至難の業でした。70年代のアルバムに「伝説のチャンピオン」「ウィー・ウィル・ロックユー」などの超名曲の数々が収められており、世間的には「オペラ座の夜」が彼らの最高傑作ということになってます。が、このアルバムは映画「ハイランダー」のサントラの発展形のような恰好で製作されたこともあり、写実的な曲が特徴のクイーンにしては超ハードな出来栄えとなっており、個人的には最も気に入っています。

超ハードなGimme The Prizeが個人的なベストオブベストです。フレディがGimme The Prize!とシャウトするところは鳥肌が立つほど迫力があります。

Queen - Gimme the Prize

No.10  キャプテン・アンド・ミー /ドゥービー・ブラザース (1973)



ゴキゲンなサウンドが魅力のドゥービー・ブラザースの代表作。中学時代からのお気に入りの1枚です。果たしてポピュラー音楽なのかロックなのか微妙ですが、イーグルスと同じウエストコースト発進のアメリカンミュージックの代表格です。

「サウスシティ・ミッドナイト・レディ」の包み込むような優しい旋律と、「イヴィル・ウーマン」の超ハードなズッシリと来る衝撃、そして私の一番のお気に入りは、能天気で陽気な「ウィズアウト・ユー」です。

実は、私はドゥービー・ブラザースのトム・ジョンストン時代のアルバムは苦手で、マイク・マクドナルドが加入した「ミニッツ・バイ・ミニッツ」以降のもののほうが好みなのですが、この「キャプテン・アンド・ミー」は文句なしに底なしに楽しめるアルバムです。

【番外】  伝説のライヴ /レッド・ツェッペリン (2003)



ベスト10にあのレッド・ツェッペリンが入っていないのは、やはり彼らのアルバムから1枚を選ぶのは至難の業というか不可能だったからです。敢えて選べばデビューアルバムか、2枚目、もしくはプレゼンスあたりなのですが、どれも超傑作なので絞り切れない。。。ということで、2003年にリリースされたこちらのライブ収録盤(演奏は1972年)のDVDオーディオ盤は、白熱の演奏もさることながら、48kHz/24bitハイレゾ&マルチチャンネル仕様で腰を抜かすほどの高音質なので番外としました(DVDオーディオ盤は現在廃盤となっており入手困難)。

以上が私の選んだ【究極の洋楽ロックアルバム名盤ベスト10】(ただしプログレ除く)でした。

ちなみに、ここにプログレッシブ・ロックを含むと、5大バンド(King Crimson, Pink Floyd, Yes, EL&P, Genesis)から少なくとも1枚ずつは選ぶことになるので、ほとんどプログレッシブ・ロック名盤ベストになってしまいます。。。

また、ベスト10から漏れた名盤には、サウンドガーデンのスーパーアンノウン(1994)や、スティーブ・ヴァイのエイリアン・ラヴ・シークレッツ(1995)、TOTOのアイソレーション(1984)、ポリスのシンクロニシティ(1983)などが含まれます。

ネットで検索すると、こちらの「ロックの最高傑作ベスト100」とか、こちらの「100枚の超名盤ロック&ポップス全アルバム完全レビュー」というのがあって、なかなか面白いです。

私が選んだ10枚のうち、70年代が2枚、80年代が5枚、そして90年代が3枚となりました(2000年以降のアルバムは0枚です)。私は2000年で35歳でしたから、冒頭に紹介した、人は33歳で。。。という結果と見事に一致しています。

現に、こちらの「英国ローリングストーン誌のロックの2000年代ベストアルバム」を見ても、聴いたことのあるアルバムどころか、知っているアーティストもほとんどありません。

私のロックの嗜好はもうこれ以上発展することも変化することもないのかもしれません(そう考えると少し寂しい気もしますが)。

次の機会には、クラシック、ジャズでも同じような名盤ベスト10を選んでみたいと思います。



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(おわり)

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