私はジャズとの出会いは遅く、一番多感な10代20代の時期はロックとクラシックが中心でした。ジャズを本格的に聴き始めたのは30歳を過ぎてからです。
かつての音楽に対する熱意も醒め、最近は昔のお気に入りアルバムを聴き返すだけで、最新の音楽に対する興味も熱意もすっかり失せてしまいました。
これまでの投稿で、ロック(こちらです)とクラシック(こちらです)の人生で個人的に最も影響を受けたアルバムをそれぞれ10枚ずつ選びました。今回はジャズのアルバムから以下の10枚を選びました(カッコ内はリリース年)。
No.1 シンプル・マインズ /ヨーグ・ライター・トリオ (2002)
いつか王子様が、のスタンダードから始まるライブ録音なのですが、後半に向けてどんどん盛り上がり、ラスト数曲はまさに汗握る駆け引きを堪能することができます。
このアルバムに出会った当時、私は本格的なオーディオシステムを導入した時期だったのもあって、思い出が詰まった1枚です。
No.2 アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズムセクション /アート・ペッパー (1957)
定番中の定番。もはや何の説明も要らないと思いますが、この私はアルバムをCD, SACD, DVDオーディオの3種類のフォーマットを所有していますが、編集が微妙に異なっていて楽しめます(SACD版が一番気に入っています)。
冒頭のYou’d be so nice to come home toに代表される軽快で耳当たりの良い音楽が揃っています。
No.3 テレンス・ブランチャード /バウンス (2003)
テレンス・ブランチャードをどうして聴くようになったのか思い出せませんが、冒頭の曲はいきなりカッコイイし、スローな曲も含めてセンス抜群な都会的な雰囲気に満ちたアルバムです(残念ながらこのアルバムは国内では廃盤)。パワフルなジャズとスムースジャズのどちらもこなせるアーティストです。
トランペットというと、ウィントン・マルサリスや、クリス・ボッティのほうが圧倒的に知名度が高いと思いますが、私はこのアルバムと、レッツ・ゲット・ロスト(4人の女性歌手と共演)の2枚ですっかりテレンス・ブランチャードのファンになりました。
No.4 メデスキー・マーチン&ウッド / アンインビジブル (2002)
ジャズ・ファンク・バンドというユニークなカテゴリに属する名盤です。前衛音楽として独創性は群を抜いていますが、取っつきにくさもピカ一です(現に、私はこのバンドの他のアルバムは、どれ一つとしてピンと来たものがなくガッカリしました)。
しかし、このアルバムは突然変異のごとく、珠玉のごとく名曲が揃っています。他に比類する音楽ジャンルがなく、まさにこのアルバムだけでしか味わえない世界が展開します。一度気に入ってしまうと病みつきになります。
こちらもDVDオーディオ盤(既に廃盤)が出ており、マルチチャンネルでは次元の違う音楽体験を楽しむことができます。
No.5 アナザー・マインド /上原ひろみ (2003)
日本のジャズアーティストとしてはナンバーワンの人気を誇る上原ひろみ(Hiromi)のデビューアルバムです。
最初に断っておくと、私はHiromiのファンではありません。彼女の作品では、このデビュー作とセカンドがあまりに強烈過ぎて、その後のアルバムは大衆化してしまって好みではないからです。
しかし、このデビューアルバムにはブッ飛びました。この若さにして超絶技巧的なテクニックは当然のこと、特筆すべき曲の独創性、これは従来のジャズのカテゴリに当てはまらない、敢えて名付ければ、プログレッシブ・ジャズとでも呼んだらいいでしょうか。アルバムタイトルにもなっている10分を超える大作Another Mindは極め付けの名作です。録音もテラークならではの超優秀盤。こちらもSACDマルチチャンネル盤が発売されています。
No.6 カインド・オブ・ブルー /マイルス・デイヴィス (1959)
こちらもあまりに有名過ぎるので説明は不要です。秋の夜長にのんびりと聴くには最高のアルバムです。クールジャズの代表作品ですが、マイルスデイビスの作品は時代とともにスタイルが激変し、そのどれもが名作なので、どれか1枚を選ぶのが困難です。このアルバム以外には、奇想天外なビッチェズ・ブリューやマーカス・ミラーと組んだトゥトゥが気に入っています。
No.7 All Night Wrong /アラン・ホールズワース (2002)
不世出のギタリスト、アラン・ホールズワースの日本でのライブ録音盤。演奏は、ハードロックとフュージョンが融合した私好みのプログレッシブ・ジャズといった感じです。ライブ収録ですが、観客の中年男性群が放つ独特の裏声での歓声が耳障りなのが唯一残念です(聴き込むとやがて慣れますが)。
ギターテクがゴリゴリというより、幻想的に宙に浮くような感覚の曲風が多く、上品な大人の趣味のジャズという感じです。
このCD(SACD盤もあり)も、超優秀録音盤です。ライブをDSDで一発収録したのでしょうか。
No.8 ポートレイト・イン・ジャズ /ビル・エバンス (1959)
こちらも定番。ビル・エバンズのピアノトリオはどれも甲乙つけ難いのですが、リラックスして聴くには最高の音楽です。あまり深く考えずにとにかく音楽に身を浸して聴くのが良いです。
No.9 フロム・オスロ /アキコ・グレース (2004)
アキコ・グレースは、数々の賞を総ナメにしたマンハッタン・シリーズが有名なのですが、その直後に発売されたこのアルバムは、金粉が振り撒かれたかのような素晴らしい出来栄えです。
華奢な容姿からは想像できないほどタッチは相変わらず力強く、曲は独創性に溢れています。バックを支えるリズムセクションのレベルも高く、特にドラムのスネアやハイハットの美しさは格別です。
アキコ・グレースはその後、様々なジャンルに挑戦しました(ボーカルまでやった)がどれも成功したとは言い難く、他の日本人アーティストが活躍を拡げるなか、影も薄くなり近年活動をほとんど聞かなくなったのが大変残念です。
No.10 マイ・フェア・レディ /シェリー・マン&ヒズ・フレンズ (1956)
クラシック音楽の指揮者で有名なアンドレ・プレヴィンが、実はジャズ演奏家だったことを知りませんでした。このアルバムでは、そんなプレヴィンのスウィングジャズのルーツを知ることができます。ドラムスのシェリー・マンのノリノリの演奏も素晴らしい。ウエスト・コースト・ジャズトリオの傑作です。
【番外】 ラジオ・ミュージック・ソサイエティ /エスペランサ・スポルディング (2012)
エスペランサ・スポルディングを知ったのは、東京ジャズで彼女が演奏するブラック・ゴールドをTVで観たときでした。ベーシストとしてバークリー音楽大学に20歳という史上最年少で講師に就任という天才アーティストですが、歌唱力も桁外れに素晴らしいです。
もはやジャズ界でのシンガーソングライターという枠さえ超越してしまって、将来の音楽シーンを牽引する有望タレントの一人だと思うのですが、日本ではほとんど名前が知られていないのではないでしょうか。今後の動向が一番気になるアーティストということで番外に入れました。
以上が私の選んだ【究極のジャズアルバム名盤ベスト10】でした。
選んだ10枚は、どれもが1950年代の古典か、2000年初期に発売されたアルバムか、いずれかに偏ってしまいました。それは、やはり本格的にジャズを聴き始めた年齢が30歳と遅かったので、ジャズの世界の裾野の広さをまだ理解していないことに尽きるでしょう。
「人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある」
残念ながらこの傾向は否定しようがありません。結局音楽とは突き詰めてみると、自分の人生の伴侶のようなものであり、共通体験があって初めて自分の心に残るものだと痛感しました。年を取ると滅多なことでは感激しなくなってしまうのも事実です。余程のイベントがない限りは、その経験と共に心に残る音楽というのも生まれないのでしょう。
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(おわり)
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