日本人が知らない中国の最新事情(2018年夏の杭州訪問記)

先日仕事で中国の杭州に行ってきました。杭州とは、上海の近くにある人口1,000万人の大都市で、ハイテクや自動車産業の中心地でもあります。


杭州

その杭州が実はここ数年で猛烈な発展を遂げていたことを私は全く知らなかったため、中国があまりに目覚ましい発展を遂げている現実を目の当たりにして大きな衝撃を受けました。そして、これまで中国に対して抱いていた古い固定観念は完全に打ち砕かれてしまいました。



杭州は英語ではHangzhouと書き、「ハンジョウ」または「ハンゾウ」と発音します。

出張前にネットで少し調べてみましたが、街の中心地に「西湖」という世界遺産の湖があり観光名所になっていること、中国の巨大IT企業アリババの本社があること、8月の平均気温が33度とかなり暑いこと程度のことしかわかりませんでした。

出張当日。

着陸の直前に機内の窓越しに見える杭州の河川沿いに並ぶ膨大な数の高層ビル群にまず釘付けに。

河川沿いにびっしりと並ぶビル群

ちなみにこの河川は銭塘江(せんとうこう)といって、仙霞嶺山脈を源として杭州湾に注いでいます。



凄まじい数の高層ビルと、対照的に朽ち果てる寸前まで老朽化したマンションも確認できました。

飛行機で杭州空港に到着して、入国審査を終えてロビーで現地のガイドを待ちますが、なかなか現れません。電話をしても通じません。中国人だから時間や約束を守らないのだろう、仕方ないか、と、この時は正直なところ中国は遅れていると認識していました。

ところが。。。

30分ほど遅れて現地のガイドが現れました。

「すみません渋滞にはまってしまって。。。」

はいはいそうですか、どうせ時間にルーズな国だから仕方ないな、と。

迎えに来たワゴンに乗り込み、空港から市街に向かいます。

すると、確かに予想以上に交通量が多く、あながち渋滞で遅れたというのは嘘でもないようです。

さらに。。。

高速道路を走っている自動車が、予想に反して、ベンツやアウディ、BMWなどドイツの高級外車ばかりではないですか!しかもピカピカの新車ばかり。。。いやそれよりポルシェのカイエンがじゃんじゃん走っています。トヨタや日産といった日本車や、現地に本社のある吉利汽車(Geely、ボルボやダイムラーの筆頭株主)の車はあまり見かけません。

一体どういうことだ???

すっかり混乱した頭で次に視界に飛び込んできたのは、幹線道路沿いに見える新築の高層マンション群やお洒落なデザインの一軒家の集合住宅街です。

さらに、高速料金所のような建物が見えてきました。翼を拡げたようなデザインの近代的な建築物です。中国で連想するベタで田舎臭いデザインなんかではありません。

高速道路の料金所

なんなんだこれは???

初めは空港周辺だけ外国からの訪問者向けに無理矢理高級感を演出しているのではと疑いましたが、やがてそれは市街地に向かっていよいよ景観が壮大・華麗になってゆくにつれ、ついに適切な表現の言葉を失い、感嘆と驚愕の溜息しか出ません。

驚愕の高層マンションとオフィスビルの群れ

あの遠くに見えるビルは一体何階建てなのでしょうか。。。

そのうち、巨大なスタジアム?に巨大な風船のようなものが下がっている建物だとか、未来的な建物がこれでもかという程建っているのが見えてきます。

巨大なスタジアム

やがて高速を降りて市街に入りましたが、高級車の数はいよいよ増える一方で、自転車や電動三輪車も混在して道を走っています。

電動三輪車も良く見かける

交通マナーは日本からすると及第点ギリギリというところでしょうか、結構荒っぽく割り込んできたりクラクションは結構鳴らしたりします。

荷物を積んで走るバイクも

高層ビルは至る場所に所狭しと建ち並んでいます。

高層ビル

しかしどの建物もピカピカで、街の作りも歩道がゆったりと設計されており、欧米の街となんら遜色はありません。それどころか、洗練さでは欧米を凌いでいるレベルです。。。

アリババ本社近く

貧富の差が激しいと聞いていた中国社会にも関わらず、街にホームレスなどどこにもいません。かといって、人々のファッションは極めて普通、日本人のようにブランド品に身をつつんだ人はほとんど見かけません。

街には高級外車ばかり

商談を済ませて夜になって街に繰り出しました。眩いばかりの素敵なライトアップや建物自体がイルミネーションで飾られていたり、ここはラスベガスか。。。

ライトアップされた建物

通りも綺麗

下の写真2枚は、ファミリーマートの前の駐車スペースです。アウディが4台連続で駐車していました。

ファミマ前の駐車スペース

アウディが4台連続

そして。。。その先には青いフェラーリが駐車していました。青のフェラーリ生まれて初めて見ました。

青のフェラーリ

杭州の市街地をずっと訪ねて気付いたことがいくつかあります。

まず、ネオンサインやビルボードなどの広告がほとんどない。あったとしても最小限で日本のようなギトギトした品のない広告は皆無。これが杭州の街を美しく品格のあるものにしている要因だと思います。

そして、日本企業のロゴも製品も何もほとんど見かけない。あるのはローソンとファミリーマートくらいなもので、SONYもPanasonicも東芝も日立も何もない。あるのはすべて中国メーカーの中国製のものばかり。

会食を済ませ、西湖の近くにある大華飯店というホテルにチェックインしました。下はそのホテルのロビーです。

大華飯店のロビー

部屋の中はこんな感じ。何もかもが完璧に整っています。

部屋の内装

トイレがなんとウォシュレット付き。ちなみに中国メーカーです。

トイレ

ホテルの周辺はライブハウスやレストランで賑わっています。欧米からの観光客はほとんど見かけません。小さな子連れのカップルが目立ちます。度を外した若者や質の悪い酔っ払いも皆無。そういえばホテルの入口や要所には銃を携えたセキュリティが立って見張っています。




夜遅くの外出でも危険なことは全くありません。女性一人でも何の問題もないでしょう。私はいつか自分の家族を杭州に旅行に連れてきたいと思います。


一夜明けて翌日の朝、天気は快晴。西湖のほとりには散歩をしている人々がそれぞれ思い思いに優雅な時を過ごしています。

西湖

宿泊ホテルの低層館

家族連れやカップルなども見かけます。彼らは杭州の外から来た観光客なのでしょうか?それにしても皆幸せそうな雰囲気です。大声をあげてがなり立てる人や、騒いでいる人は皆無です。中国人てマナーの悪さで有名なんじゃなかったのか??

家族連れ観光客が多い

湖畔を少し歩くと、蓮の花が咲いているスポットに行き当たりました。湖面の遠くには観光名所の寺院や塔が見えます。



 西湖から徒歩で20分くらい歩いたところに河坊街という繁華街があります。通りの両面には小さな雑貨屋やブティックなどが並んでいます。雰囲気としては銀座や表参道をさらに垢抜けたような感じでしょうか。

河坊街

ここでも中国の人々は富裕層が中心なのか、落ち着いた感じの人が多かったと思います。あと特筆すべきは、富裕層と平民層が、お互いいがみ合いようなこともなく、実に隣人として仲良くやっていることです。富裕層は日本の金持ちのレベルとは次元が違い、おそらく数10億円規模の資産を保有していると思われます。一方、平民層(月収10万円程度)は労働産業やサービス産業に従事して、一生懸命働いていますが、彼らには純粋な笑顔があります。

以上、観光旅行の日記のようになってしまいましたが、2泊3日の滞在で私が中国に対して抱いていた先入観や固定観念は完全に吹き飛ばされてしまいました。

正直なところ、杭州を訪問する前は、中国に対して無意識に見下したような意識を抱いていました。銀座で爆買いするマナーの悪い観光客、急速な経済成長による貧富の差が激しい格差社会、粗悪品やコピー品が氾濫する商品市場、公害で汚染された空気、などなど。。。

ところが、杭州での滞在で私の中国に対する印象は完全に変わってしまいました。同時に如何に自分が今まで中国について無知だったか、日本のメディアの偏った報道に如何に悪影響を受けていたかを痛感しました。

「日本のメディアの中国に対する偏見について」

中国から帰国した日の夜のニュースで、中国人の話題が取り上げられていました。

8月31日放送のWBS

原因として、子供の教育費の高騰を上げ、都心部での夫婦が経済的な理由から二人以上の子供を育てられないという特集でした。

中国の出生率が低下していると紹介

でも待ってください。

2018年現在、日本は出生率1.4で世界最低レベルとなっています(世界187ケ国中171位、ランキングはこちら)。一方、中国は出生率1.7でこれは先進国では平均レベルです(152位、米国やイギリスより下でドイツやカナダより上)。しかも過去10年の人口増加の推移からすれば、「止まらぬ少子化」どころか、長年の一人っ子政策にも関わらず14億人に迫る勢いで人口増加が続いてきたことがわかります。

中国の人口推移(こちらのサイトより)

世界最低レベルで超高齢化社会で疲弊する日本がニュースでは「老いる中国」とネガティブに報道しているのは、滑稽としか言いようがありません。

杭州に行って感じたことですが、中国は「先進国として当たり前」の少子化問題を抱えているのは事実ですが、それが日本のような大きな社会問題にはなっていません。街を歩いてみても、日本のようにどこに行ってもお年寄りばかりが目立つような光景は皆無です。中国は老人は杭州のような都心部に住んでいない事情があるのかもしれませんが、超高齢化社会などとは無縁です。むしろ、街を歩いていると若年層の勢いやエネルギーが肌身を感じて伝わってきました。

日本は事あるごとに中国はダメだとか、日本と比較して劣っているとか騒ぎますが、ズバリ、日本はもはやあらゆる分野で中国に完全に追い越されてしまったと思います。

私は今回の出張でたくさんの中国人の方と知り合って、親睦を深めることができました。中国ではFacebookやLINEではなく、Wechatというアプリでビジネスもプライベートも繋がっています。Wechatはなんと10億人ものユーザーが加入しているそうです。私も早速Wechatで彼らと繋がることができました。


中国の知識階層はもはや、日本と日本人を競争相手とはまるで考えていないと思います。対抗意識など持っておらず、むしろ隣国の善き友人として好意や敬意さえ抱いています。

ちょうど私と同じように感じている人のブログを見つけましたので紹介します(こちらです)。このような情報はネットでも見つけるのが本当に難しく、ましてやTVや新聞、雑誌などには全く掲載されていません。

また、今回いろいろな現地の施設を訪問して、現場の人たちと意見交換する機会が多かったのですが、社会インフラのIT活用は進展が見覚ましく、日本や欧米を既に追い越して世界の最先端を行っていることを確信しました(信じ難いことですが)。

例えば、中国の病院では、患者のカルテやレントゲン写真などの電子化してクラウド管理することにより、患者の病歴を国内の病院で共有することが可能です(患者が希望した場合)。患者は複数の医療機関や専門医から希望を選択でき、また専門医は遠隔で診断することが可能です。これらの先端医療サービスは日本では法規制の壁などの理由で実現できていません。

以下、私を含めて一般的な日本人が誤解している以下の5つの思い込みは2018年の現在ではすべて間違いです。

1.中国人は教育レベルも低くマナーが悪い → ウソ
2.中国製のモノは品質が悪いコピー商品ばかり → ウソ
3.中国の都市は空気が汚い → ウソ
4.貧富の格差が社会に歪みを生じている → ウソ
5.中国人は日本人を嫌っている → ウソ

どういうわけか、このような中国のここ数年の躍進を、日本のメディアは一切取り上げず、相変わらず中国の悪い点ばかりを誇張して報道しています。

中国の最大のアキレス腱は、私は英語力の欠如だと思っています。杭州のような国際的な都市であっても、英語を普通に話せる人は非常に少ないことに驚きました。一流ホテルの従業員でさえたどたどしい英語ですし、現地の大きな企業のトップがまるで英語を話せないのには驚きました。

一方、若い世代はどんどん外国に留学や仕事で出て行って、欧米などの国際的な感覚を身に着けているようです。留学先としては、学費が高く手続きも煩雑な米国や英国よりも、オーストラリアやニュージーランドが多いそうです。20年前くらいまでは彼らは卒業後に中国に戻らなかったそうですが、最近は中国に帰国して起業したりする人のほうが多くなったそうです。

振り返って日本はどうでしょうか。数年前に、アメリカの名門大学のひとつであるハーバード大学に入学した日本人留学生が、年々減って遂に一人になってしまったというニュースがありました(こちらの記事を参照)。記事によると、過去10年間に米国の大学で学ぶ日本人留学生は4割減少したということです。バブル崩壊後、日本人の海外留学生数はめっきり減少してしまいました。

西湖の夕焼け

帰国便の飛行機の窓から日本の土地を眺めながら、発展途上国を訪れているような錯覚を覚えました。里山に代表されるように日本は自然に恵まれた美しい国です。しかし、同時に最盛期をとうに過ぎて、時代の流れとともに凋落してゆく国でもあることを痛感し、日本の将来をあれこれと憂慮してしまいました。。。


(おわり)

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