【究極の洋楽ポピュラーアルバム名盤ベスト10】

名盤ベスト10シリーズ、これで最終です(たぶん)。

「人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある」

この命題でこれまでにロック、プログレ、ジャズ、クラシックの名盤ベスト10を選んできました。

ロック、プログレ、ジャズでは、この命題は見事に実証されてしまったものの、クラシックの場合は、年齢を重ねても人生の財産とも思える究極の名盤に出会うことが珍しくないということでした。逆に、若いときに影響を受けたアルバムでも、年を取るとそれほど重要と思えなくなってくるものも少なからずありました。

今回は洋楽ポピュラーです。

私が初めに音楽を聴き始めたのは、小学校低学年のときで、ABBA、カーペンターズ、ビージーズ、サイモンとガーファンクルといった洋楽ポピュラーでした。洋楽レコ―ドを家で聴いていた兄の影響でした。

ちなみに歌謡曲や邦楽も当時はそれなりに聴いていましたが、なぜか私は洋楽のほうが圧倒的に好みでした。

以下、独断と偏見で選出した10枚です(カッコ内は収録年)。

ポピュラーの名盤ベスト10

No.1  噂 /フリートウッド・マック (1977)



フリートウッド・マックの「噂」は、発売以来全世界で2,000万枚以上を売り上げているモンスターアルバムです。歌姫スティービー・ニックスとそのフィアンセだったリンジー・バッキンガムが参加してからグループは以前のR&B路線から商業ポピュラー路線に転換して大成功を収めました。

スティービー・ニックスの「ドリームス」を筆頭に、透明度の高い、なおかつエネルギッシュな曲がぎっしり。どの曲が好みかと言われると返答に困るほど、このアルバムはほぼすべての曲がシングルカットされてもおかしくないほど奇跡的な出来栄えです。

フリートウッド・マックは長年の伝統的R&Bの強固なリズムセクション上に、スタイリッシュな楽曲が重なっているのが特徴だと思います。それが曲に深みを与えて単なるシングル狙いのポップスとは次元の異なる音楽性に繋がっているような気がします。

ヒット曲「オウン・ウェイ」のシングルB面に収録されいていた「シルヴァー・スプリングス」はオリジナルのアルバムには収録されていませんでしたが、スティービー・ニックスの甘い歌声が満喫できる名曲でした(現在のリイシューCDには収録されています)。

噂のジャケット裏

中学生時代に一番夢中になって聴いていたアルバムの1つです。

録音が素晴らしいのもこのアルバムの特徴で、2000年代に入ってから発売されたDVD-Audio盤(絶版)は5.1chのサラウンドも収録されており、素晴らしいです。その後SACD盤もリリースされました。

No.2  ホワイト・アルバム /ザ・ビートルズ (1968)



ビートルズの1枚は、こちらと「アビー・ロード」で悩みましたが、この「ホワイト・アルバム」にはポピュラー音楽の要素のすべて、いやもしかしたら音楽の要素のすべてが詰まっていると表現しても誇張し過ぎることはないので、こちらを選びました。

ビートルズが解散した1970年は、私はまだ幼稚園生だったので、もちろんリアル体験ではないのですが、ホワイトアルバムやアビーロードをはじめビートルズのアルバムは中学生になって全部聴きました。中学生になってビートルズと出会い、これが私の決定的な音楽嗜好の原点となりました。このように、私の音楽やオーディオの趣味のルーツは中学生に遡ります。

ビートルズで現代のポピュラー音楽のメロディラインはすべて出尽くしてしまったという説があります。それほどまでにビートルズは偉大だったということでしょう。

「ブラックバード」のようなアコースティックな清廉な曲から、「ヘルター・スケルター」のように超ヘヴィーな曲、「レボルーション9」のような現代実験的な曲まで、この2枚組アルバムにはあらゆるジャンルの曲が有機的に散りばめられており、何度繰り返し聴いても聴き飽きることがありません。

当時中学生だった私は、英語の対訳などよく理解できず、もっぱら音楽のサウンドだけを聴いていたのですが、それだけでもビートルズの世界からは圧倒的な影響を受けました。

(2018/12/11追記)
ホワイトアルバムのスーパー・デラックス・エディション(限定盤、6SHM-CD+Blu-ray)というのが2018/11に発売されていることを知りました。

スーパー・デラックス・エディション(限定盤、6SHM-CD+Blu-ray)

これはDTS-HD マスター・オーディオ 5.1の音源が含まれているということで、是非とも聴いてみたいのですが、14,719円とハイエンドな価格設定。。。これでは手が出ません。

No.3  フェイス /ジョージ・マイケル (1987)



ワム!のジョージ・マイケルが満を持して発表したソロアルバムです。ジョージ・マイケルは男性ボーカリストとしては天才的な表現力を誇っており、このアルバムはその彼の絶頂期のものです。

このアルバムも「噂」と同様、捨て曲ゼロ、すべての曲がシングルカットされてもおかしくないほど奇跡的な出来栄えです。

アルバムの全体は、セクシャルな内容がてんこ盛りで、ジョージ・マイケルがセックスアピールを自信満々にさらけ出している感じです。

「ファザー・フィギュア」は素晴らしいバラードですがオリエンタルなテイストが加わって実に印象深いです。私の一番のお気に入りです。

「アイ・ウォント・ユア・セックス」は、曲のエロさとは裏腹に、途中からの展開(アレンジ)が実に見事な名曲です。サビだけ聴いていると意識しないのですが、実は9分を超える大曲です。

ジョージ・マイケルはこのアルバムのリリース後に、CBSソニーと契約関係で訴訟を起こされてしまい、絶頂期に何年もアルバムをリリースできなくなってしまいました。結局、その後にリリースされたアルバムはどれもパッとせずに、折角の才能が開花することなくキャリアを終え、2016年に急逝してしまいました。実に残念なことです。

No.4  ソリチュード~ソリティア /ピーター・セテラ (1986)



シカゴのボーカリストだったピーター・セテラのファーストソロアルバムです。シカゴ時代からその甘いボーカルは女性には大人気で、「素直になれなくて」などバラードを歌わせたら天下一品でした。

ピーター・セテラの曲は、確かに、デリケートで、軟弱な男のラブソングと揶揄されることもありますが、良いものは良いのです。

このソロアルバムは、映画「カラテ・キッズ2」の主題曲である「グローリー・オブ・ラブ」を始め、超一級品のバラードがたくさん収められています。

Glory of Love

エイミー・グラントとのデュエット曲「 ネクスト・タイム」、ラストの「愛だけが証し」など、当時学生だった青春時代の実体験とも重なって、忘れ難い曲の数々です。

No.5 スリラー /マイケル・ジャクソン (1982)




言わずと知れた古今東西ナンバーワンのアルバム、全世界で6,500万枚(!)を売り上げて未だに売れ続けているバケモノアルバムです。

内容についてはあれこれ書く必要もないでしょう。。。

スリラーのMTVのPVは、当時のベストヒットUSA文化の象徴でした。

Thriller

このアルバムをリアルタイム体験できたことは実に幸運でした。唯一の心残りは、マイケルジャクソンが来日して東京ドームコンサートをやったとき、アリーナ席のチケットを持っていたのですが、金欠で泣く泣く友人に譲ってしまったことです。

次作の「バッド」もかなりの傑作でした。

「スリラー」は、CD盤以外に、SACD盤(ステレオ音源のみ)が発売されていましたが、なぜかすぐに廃盤、その後入手困難になりました。マイケルジャクソンが急死した際は、取引価格が高騰して、確か40,000円(!)の値で取引されていたようです。


私は幸いにも価格高騰の前にSACD盤を個人輸入で入手しましたが、たまたま新品未開封状態で現在に至っており、今では我が家の家宝になっています。

No.6  アライバル /ABBA (1976)



ABBAを聴いていたのは小学生時代です。確か日本にも来日してTV番組にも出演していました。当時兄がこのLPを買ってきて家のステレオで良く聴いていたのをよく覚えています(私にはLPを触らせてもくれませんでした)。

この「アライバル」には、「ダンシング・クイーン」や「ノウイング・ミー,ノウイング・ユー」「マネー,マネー,マネー」が収録されています。また、「アライバル」というインストゥルメンタル曲もなかなか印象的で良い雰囲気です。

ポップスの名曲というのは、時代を超えて聴き継がれるものですが、このアルバムはその典型例です。映画や舞台の「マンマ・ミーア」など、ABBAの名曲はこれからも何十年も愛されるのでしょう。

No.7  メモリー・オブ・トゥリーズ /エンヤ (1999)



アイルランド出身のエンヤは、その独特の宗教色の強い環境音楽的な雰囲気で1990年代に一世を風靡しました。私も何枚かアルバムを持っていますが、良くも悪くもワンパターン、最近はあまり聴かなくなってしまいました。

その中で、この「メモリー・オブ・ツリーズ」を選んだのは、アルバムタイトルの「ザ・メモリー・オブ・トゥリーズ」の素晴らしさもさることながら、最後に収録されているシンセサイザのインストゥルメンタル曲「オリエル・ウィンドウ」 (日本盤のみのボーナス・トラック)が、あまりにも素晴らしいからです。このオマケ的な曲に私はすっかり心を奪われてしまいました。

「オリエル・ウィンドウ」

「ザ・メモリー・オブ・トゥリーズ」も「オリエル・ウィンドウ」もどちらもエンヤの透明な歌声ではないインストゥルメンタル曲なので、この2曲がベストと言ったらエンヤファンには怒られてしまうかもしれません。が、エンヤはシンガーソングライター兼演奏家なので、この2曲も彼女の才能の賜物であることは間違いありません。

ちなみに、アイルランドではありませんが、アイスランド出身のビョークも独特のキャラクターで私のお気に入りのミュージシャンです。寒い国の音楽はなぜか心に響くものがあります。

No.8  パープル・レイン /プリンス&ザ・レボリューション (1984)



音楽アーチストのなかには、凡人が思いもしないようなメロディや演奏スタイルを発想してしまう真の天才が少なからずいます。プリンスも間違いなくその一人でした。商業的にも大成功した本作は、私が大学生になってMTVの文化の影響をモロに受けた時代にリリースされたこともあり、生涯忘れることのできない1枚です。

プリンスを洋楽ポピュラーにジャンル分けするのは間違っているかもしれません。彼のギターテクニックは超絶で、Prince and the Revolutionというバンドを率いて演奏していたのですが、世間ではPrinceしか認知度がありませんでした。アメリカのローリング・ストーン誌の『歴史上最も過小評価されている25人のギタリスト』の堂々第1位に選ばれています。

「レッツ・ゴー・クレイジー」「ビートに抱かれて」(When The Doves Cry)といった超メジャー曲はもちろんカッコイイのですが、プリンスの発狂的なボーカルの迫力に圧倒される「ダーリン・ニッキー」が私の一押しです。

No.9  コールド・スプリング・ハーバー /ビリー・ジョエル (1971)



ビリー・ジョエルの初々しいデビューアルバムです。抒情的な旋律と感傷的な歌詞が全体を占有しており、決して万人向けの傑作ではないと思いますが、一度聴くと忘れ難いアルバムです。

第1曲の「シーズ・ガッタ・ウェイ」は静かに語りかけてくる美しいラブソングです。後半の「トゥモロー・イズ・トゥデイ」~「ノクターン」~「ゴット・トゥ・ビギン・アゲイン」は畳み掛けるような抒情性豊かなバラードの連続で気が沈み込んでしまいますが、旋律はとにかく美しく、ビリー・ジョエルの歌声も心に染み入ります。

何かに落胆したり、絶望的な気分になったときにはこのアルバムはとても良い癒しとなります。

No.10  セブン・ザ・ハードウェイ /パット・ベネター (1985)



個人的にはパット・ベネターの代表アルバムというだけでなく、80年代を代表する名アルバムにも関わらず、稀にみるほど注目されなかった超名作だと思います。これほどのアルバムが現在廃盤になっているのは一体どういうことでしょうか

冒頭からエネルギー全開で、途中には幻想的な曲も挟みながら、息をつく暇もなくテンションの高い曲が続きます。

シングルヒットした「セックス・アズ・ア・ウェポン」もいいのですが、それ以外の曲もどれも一級品、個人的にはディストーションの効いたハードな「レッド・ビジョン」が気に入っています。

Red Vision

とにかく一人でも多くの人にこのアルバムの良さを知ってもらいたい、そんな一枚です。

【番外】  麗しのベラ・ドンナ /スティービー・ニックス (1981)



究極のアルバム名盤ベストのNo.1にフリートウッド・マックを選んでいるので、スティービー・ニックスのソロアルバムまで選ぶのは思い入れが強すぎるので、番外にしました。

スティービー・ニックスは容姿も端麗で日本人好みの顔立ちなのですが、歌手としての実力はアイドルの次元を遥かに超えていました。永遠の妖精とも言われていましたが、イーグルスのドン・ヘンリーとも恋仲になったり(このときに中絶して子供を断念したのを歌ったのが名曲「セーラ」です)、ミック・フリートウッドとも付き合っていたり、恋多き波乱万丈の人生だったようです。

スティービー・ニックス

「麗しのベラ・ドンナ」はそのスティービー・ニックスのソロデビューアルバムです。参加ミュージシャンの顔ぶれも凄まじく、トムペティやドンヘンリーとのデュエットも収録されています。

個人的には最後の「ハイウェイマン」が気に入っています。シンプルなバックのギターはおそらくトムペティだと思います。ハイウェイマンとは日本語訳だと「追いはぎ」ということなのですが、うーんそこは意味がよくわかりません。

スティービー・ニックスの声は、フリートウッド・マック時代からよりドスの効いたハスキーボイスになっており、それがいよいよ味にもなっています。

ソロ3作目の「ロック・ア・リトル」(1985)はセールス的にはイマイチだったよですが、個人的には大傑作でした。その後はいよいよ妖艶さを増して、「ジ・アザー・サイド・オブ・ザ・ミラー」(1989)も気に入っています。

最近のニュースで、フリートウッド・マックが北米ツアーの開催を発表しました(詳しくはこちらのサイト)。2018年10月から2019年4月まで計52公演を行う予定だそうでビックリです。ただしリンジー・バッキンガムはバンドを脱退したとのこと。ちょっと複雑な気分です。。。

以上が私の選んだ【究極の洋楽ポピュラーアルバム名盤ベスト10】でした。

また、ベスト10から漏れた名盤には、マドンナのデビューアルバム(1983)や、ジャネット・ジャクソンのリズム・ネイション1814(1989)、ボーイズ・トゥ・メンのII(1994)などがあります。

ネットで検索すると、ローリング・ストーン誌の「最高傑作アルバムベスト500」とか、ブック・オフの「洋楽名盤100選」というのがあって、なかなか面白いです。

私が選んだ10枚のうち、60年代が1枚、70年代が3枚、80年代が4枚、そして90年代が2枚となりました(2000年以降のアルバムは0枚です)。

私は2000年で35歳でしたから、冒頭に紹介した、人は33歳で。。。という結果と見事に一致してしまいました。

そういえば最近新しいポップスの音楽を聴いた記憶がありません。。。

比較的新しいところでも2000年初頭に登場したビヨンセ、リアーナくらいが最後で、その後登場したジャスティン・ティンバーレイクやレディーガガなどは代表曲さえ聴いたことがありません。

また、ベスト10に選んだアルバムのなかには、洋楽ポピュラーというよりロックのジャンルでは?というものも混じっています(ビートルズ、フリートウッド・マックなど)。厳密にどちらのジャンルなのかは微妙ですが、個人的にはポピュラー音楽だと考えました。線引きが難しいですが、インストゥルメンタル曲がなかったり、リズムセクションのメンバー交代が激しいバンドは、ロックというよりポピュラー音楽ではないでしょうか。

私が音楽に興味を持ち始めた当時はネットなどないので、情報はもっぱら友人との会話や、レコード店、ラジオ番組などが中心です。そんななか、「WEA-WAY Vol.1」というワーナー・パイオニアが発行していたWEAグループミュージシャンカタログ(非売品)が絶大なレファレンスとなっていました。

WEAグループミュージシャンカタログ

LED ZEPPELINのページ

リンダ・ロンシュタットやロッド・スチュアートなどのポピュラー歌手はもちろん、ドゥービー・ブラザース、イーグルス、フリートウッド・マック、レッド・ツェッペリン、クイーン、ヴァン・ヘイレン、イエスなどロックグループのディスコグラフィー情報も充実していました。

当時の音楽に対する情熱は今ではすっかり薄れてしまいましたが、それは、やはり、

「人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある」


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