電力自由化がスタート
電力自由化に伴い、新電力会社が次々と設立され、今では500社を超える家庭向け新電力会社が東京電力管轄の地域でサービスを競っています(電力自由化開始の背景については、「電力自由化の制度はいつから開始したの?その理由は?」に詳しく説明されています)。
新電力会社のサービスや東京電力の新プランに乗り換えるのと、現在の契約を継続するのと、果たしてどちらがトクなのかを比較しました。
1.東京電力の電気料金プラン
現在の家(2011年に入居)の契約は、東京電力株式会社(現在は東京電力エナジーパートナー株式会社)のオール電気向けの「電化上手」プランです。
電化上手の料金体系は以下のとおり。
・季節区分が「夏季」(7月1日~9月30日)と「その他」に分かれており、料金は夏季が3と割高なのに対し、その他は割安に設定されている。
・時間帯は3つに区分されており、夜間時間(午後11時~午前7時)が最も割安に設定されている
電化上手の料金体系
この「電化上手」は、電力自由化以後は、「スマートライフ」というプランに変更されています。
電力自由化以前は、「従量電灯B・C」というプランが一般家庭向けでした。今でも大多数の家庭が、「従量電灯B・C」に加入中です。
「従量電灯B」は、契約容量が60A(アンペア)以下の契約者を対象とした、東京電力で最も契約者数が多い一般的な家庭用電気料金のプランです。
「従量電灯C」は、60A以上の電流を流してもらう必要のある人、例えば、レストランや美容院や規模のある大きい事務所は、従量電灯Cを申し込みます。
さらに、従量電灯BとCの違いは以下のとおりです。
- 従量電灯Bは電気の使用量が少ない一般家庭、つまり単身世帯や核家族向けです。
- 従量電灯Cは契約容量が6kVA以上、つまり電気製品の多い家庭や、業務用大型冷蔵庫などを使用する商店個人商店など電気をたくさん使う利用者向けです。
- 従量電灯Bは、基本料金が契約アンペア数によって決まり一定です。
- 従量電灯Cは、基本料金が契約する容量によって1kVAあたり280.80円で決まります。
従量電灯の契約内容については、「東京電力の電気料金: 従量電灯B・C」というサイトに詳しく説明があります。
2.拙宅の現在の電気料金プラン
拙宅は一戸建てのオール電化でガスは契約していません。また、エコキュートと5kWの太陽光発電システムを設置しています。
「電化上手」の契約電力量は12kVA(割引対象:通電制御型 2kVA)です。
加入中の契約内容や使用量の履歴などは、「電気ご使用量のお知らせ」という用紙が毎月ポストに投函されます。
電気ご使用量のお知らせ
通常の電気料金の支払い分です。
1枚目
太陽光発電での余った電気を東京電力に売電した売上(東京電力が拙宅に支払った金額)です。
2枚目
現在の契約内容や過去の利用履歴など詳細は、ネットで東京電力のマイページ「でんき家計簿」(電力自由化前の契約者)もしくは「くらしTEPCO」(電力自由化後の契約者)から確認することができます。
でんき家計簿
使用量グラフ
料金グラフ
支払い額から受取り額を差し引くと、年間の電気代は94,642円(月平均7,886円)でした。
3.「電化上手」と「スマートライフ」の比較
以前の「電化上手」と、現在の「スマートライフ」の比較は、「【徹底比較】電化上手が廃止! 東京電力のスマートライフプランとの違いは?」というサイトに詳細が説明されています。
「スマートライフ」プランの料金体系
「スマートライフ」では、時間帯を2つに区分して、「電化上手」よりもシンプルな料金体系となっています。
では、現在契約のプランを「電化上手」から、新しい「スマートライフ」に切り替えたらどの程度の節約になるでしょうか?
東京電力の「電気・ガス料金簡単試算」ページで、1か月の電気料金を入力して、プランを切り替えたときの試算をしてみました。
電気・ガス料金簡単試算
試算をしてみた結果、拙宅の場合は、最もおトクなプランは、現在のプラン、つまり「電化上手」から変更しないという試算結果になりました。
試算結果
つまり、拙宅の場合は「スマートライフ」プランに切り替えるより、現在の「電化上手」のほうが割安だということです。
ではそのような割安な「電化上手」はなぜ廃止になったのでしょうか?
それは、震災後に深夜電力が値上がりしているのが原因の一つのようです。例えば、東京電力が2015年5月におこなった値上げでは、普通電気料金の平均値上げ率が8.46%だったのに対して、オール電化の深夜料金の値上げ率は21.60%と2.5倍以上でした。
拙宅も、震災後は電気料金が割高になったという実感がありました。
深夜電力の設定は、「電化上手」が午後11時~午前7時で12.25円だったのに対して、「スマートライフ」プランでは、午前1時~午前6時で17.46円となっています。
オール電化がある程度普及したこともあり、政府としては、オール電化世帯に対して、割安な「電化上手」料金を割増し値上げすることで、一般家庭の契約と公平にしたいという意向があったのでしょう。
つまり、現在「電化上手」は、予定利率の高い生命保険のお宝保険のようなものでしょううか。
新電力会社のサービスで深夜時間帯に電気料金が安くなるオール電化に対応したプランはほとんどありません。
したがって、「電化上手」に加入している世帯は、新電力会社のサービスへの乗り換えをしなくても、現行のプランを継続するのが、最も経済的だということになります。
将来、東京電力が「電化上手」を廃止してしまったら、割高な「スマートライフ」プランへの切替えか、他の新電力会社のプランに乗換えをしなければなりませんが、顧客を失うリスクを取ってまで東京電力が「電化上手」を廃止する可能性は小さいと考えています。
4. 新電力会社の料金プラン
新電力会社のプランは、「新電力会社おすすめランキング」というサイトに詳しく紹介されています。
2019年人気No.1は、基本料金0円の「Looopでんき」だそうです。2019年3月までの限定で指定された窓口から申し込むと、最大30,000円のキャッシュバックが受け取れるというキャンペーンを実施中です。
人気No.2は、「ENEOSでんき」で、ガソリン、軽油、灯油代がお得になるプランが魅力のようです。こちらも最大30,000円のキャッシュバックが受け取れるというキャンペーンを実施中です。
CMも多くて知名度の高い「東京ガスの電気」は、ガスとセットで割安を訴求できるので有利かと思ったら、電気・ガスで別々の業者と契約したほうが割安になるということで、セット割の利点を活かせてないようです。
5.太陽光発電のメリット
以降の話は、新電力会社へのプラン乗換えの話とは直接関係のない話ですが、太陽光発電パネルが電気料金に及ぼすメリットについて記します。
拙宅は、5.0kWの太陽光発電パネルを屋根に設置しています(設置認定容量はパワーコンディショナー定格の4.0kW)。「東京都の住宅用太陽光発電」のサイトによると、東京都の平均設置容量は4.1kWなので、平均よりもやや大容量となっています(ちなみに東京都の平均設置容量は全国で2番目に小さい)。
太陽光パネルを屋根に搭載
また、エアコンの代わりに、全館空調システムという24時間365日稼働させる集中冷暖房システムを導入しています。
家族は子供二人の四人家族で、妻は専業主婦なので普段は在宅です。オール電化なので当然料理には電気を消費します。また特に電気を消費する家電製品はありませんが、オーディオシステムと65型の型式の古い液晶TVはそれなりに電力を消費します。
前述のとおり、2017年3月~2018年2月の1年間の電気代は211,642円(月平均17,600円)、太陽光発電による売電額(電力会社に売って収入となった金額)は、117,000円です。
ここで留意すべきは、この電気代は、太陽光発電で発電した電力の一部は自家消費しているので、太陽光発電システムがなければ、電気代はもっと高かったであろうという点です。
少し細かい話になりますが、「太陽光発電の変換効率」のサイトによると、東京エリアだと、売電している割合は発電量の50%程度のようです。
拙宅の上記1年間の太陽光発電による売電額は117,000円なので、これが発電量の約50%なので、実際には上記の211,642円に加えて、117,000円を加えた328,642円というのが(太陽光発電がない場合の)年間の電気消費量に対する料金ということになります。
このなかから、エアロテックの電気代だけを試算するのは難しいので、三菱地所ホームに上記のデータを送ったところ、拙宅のエアロテックの電気代は、おおよそ65,000円という回答をいただきました。カタログの49,000円よりやや高めですが、まあまあ妥当なレベルというところでしょうか。
ちなみに、この太陽光発電システムへの設置費用は
初期投資額:5kW x 40万円/kW = 200万円
補助金:(東京都10万円 + 国4.8万円)x 5kW=74万円(区の補助金は抽選4倍で落選)
で、補助金を勘案すると初期投資は約126万円でした。
年間の売電額が上記のとおり117,000円ですが、売電している割合が発電量の50%なので、実際の発電額は234,000円/年となります。
つまり、太陽光パネルの発電量は23.4万円/年にもなります。
126万円 ÷ 23.4万円/年 = 5.4年
ということで、だいたい5年半経てば太陽光発電の初期投資は元が取れる計算になります。
拙宅は築7年なので既に初期投資費用は回収済みということになります。
私が家を建てた当時の買取単価は42円/kwhの10年固定買取と、現在の条件(26円/kwh)と比較するとかなり高額でした。現在は、補助金は国も東京都も区も無くなってしまったので一概に言えません。一方、太陽光パネルの変換効率はこちらのサイトによるとここ数年で25%とかなり改善されており、またコストダウンも進んでいるので、その点は現在のほうが有利だと思われます。
因みに拙宅の太陽光パネルは三菱電機製の多結晶シリコン(モデル:PV-MX190HA)です。「単結晶」が「多結晶」を抜く、2017年の太陽光パネル市場」の記事によると、2017年以降は単結晶が多結晶をシェアで抜いているそうです。
6.結論
電力自由化に伴って、様々な新電力会社のサービスが登場していますが、オール電化の住まいの場合は、東京電力の「電化上手」プランが最も経済的なプランということで、乗換え不要だということがわかりました。しかし、今後の固定買取価格の下落や、新電力会社のオール電化向けのサービスが登場すれば、東京電力の「電化上手」プランの乗換え先を積極的に検討すべきであることもわかりました。
(2022年3月31日 追記)
3年以上前のブログ記事にも関わらず、今でもたくさんのアクセス(Googleの検索「電化上ス、見直し」で平均掲載順位5.4)をいただいているのは、電気料金引改定への関心が高いからなのでしょう。
先月、この「電化上手」も、ついに2022年10月1日より見直しされることになりました。
詳細は東京電力の公式サイトをご覧ください。
平たく言ってしまえば、夜間を値上げする代わりに昼と朝晩を値下げ、夜間蓄熱式機器に対する割引が廃止されます(オール電化割引は引き続き適用)。
幸いにも、今回の見直しで大幅に電気料金が上がるケースは少ないようですが、今後もいつ、お宝契約ともいえる「電化上手」が改悪されるかは予断を許しません。
また、ニュースでは、新電力会社の倒産が2021年度は過去最多の14件に上ったと発表されました。
(出典:IT Media)
電力自由化もまだまだこれからのようですね。。。
東京エリアだと、売電している割合は発電量の50%程度
返信削除これは額ではなく発電量では?
売電単価と買電単価は違うので、売電している金額の2倍の収入があるとかんかるのは早計ですよ
コメント失礼します。
返信削除電力会社が多すぎてどこ選べばいいか迷ってます。最近愛用している電気料金比較サイトがあるので載せますね。簡単に比較できるのでとても楽です。
https://selectra.jp/
メッチャオススメなので使ってみるのは良いのでオススです