私はこれまでホームビデオの編集は、主にパソコンを使っていました。
しかし、最近はビデオカメラではなく、iPhoneでビデオを撮影する機会が増えてきたので、わざわざパソコンに転送して作業しなくても、iPhone上でiMovieというアプリを使って、ほとんどの編集(クリップやビデオ結合、縦横変換など)が素早く簡単にできてしまうことがわかりました。
iMovieはとてもシンプルで使いやすいのですが、起動の方法によって使い方が異なるなど、多少のクセがあるので、備忘録を兼ねて以下にまとめて紹介します。
1. パソコンでのビデオ動画編集
パソコンの編集ソフトウェアは、VideoStudioやPowerDirector、そしてソニーのPlayMemories Homeなど、撮影機材や編集目的にあわせて使い分けていました。しかし、ここ数年のiPhoneのカメラ機能の進化はすさまじく、もはやデジカメやビデオカメラでなくても日常生活的には十分なクオリティの動画がiPhoneで撮れるようになりました。
さらに、2017年9月にリリースされたiOS11になってからは、動画のフォーマットもHEVC (H.265, ファイル拡張子は.movのまま)へと進化して、圧縮効率も更に改善されています。
気が付けば、単体のデジカメやビデオカメラを持ち出して撮影する機会はどんどん減り続け、逆にiPhoneでの動画撮影が主流になってしまいました。
こうなると、これまで使っていたパソコンソフトのほうも、使用頻度や使い分けが大きく変わり、VideoStudioやPowerDirectorを使う頻度も激減、代わりにApple純正のiMovieというアプリでiPhone本体で簡単な編集をすることが多くなりました。
2. iPhoneでのビデオ動画編集 - クリッピング
iMovieはとてもシンプルなアプリで動作も早くて使いやすいのですが、起動の方法によってできることが違ったり、多少のクセがあるので、慣れておく必要があります。まず、iPhoneで動画を撮影する前に、iPhoneのカメラ設定を確認しておきます。
(以下はiPhone本体のモデルバージョンというより、iOS11での機能となります)。
iPhoneで、「設定」>「カメラ」>「フォーマット」と選択します。
iPhoneの設定画面
「高効率」と「互換性優先」の選択で、「高効率」を選びます。
「高効率」は、最新のビデオフォーマットであるHEVC(H.265)フォーマットで、これはブルーレイやハイビジョン放送で採用されているAVC(H.264)フォーマットの進化版で、同じ画質で圧縮効率を改善したものです。
「互換性優先」は、上のAVC(H.264)フォーマットとなります。
iPhoneで撮影したビデオ映像を、テレビやパソコンなど他の機器で再生・編集しようとする場合は、HEVC(H.265)非対応の機器がまだ多いことから、「互換性優先」を選択しておくと安全ですが、個人的には、「高効率」のほうを選んでおいたほうが将来的にいろいろな意味で正しい選択になると思います。
これは、かつてH.264が出てきたときに、互換性優先で、ビデオ映像をMPEG2で保存するケースと似ています。当時(10年くらい前)は、MPEG2のほうが互換性は高かったですが、今やMPEG2はH.264と比較すると何も優位性はありません。
HEVCが新しいフォーマットだからと、互換性優位を選んでしまうと、近い将来MPEG2と同じことが起きてしまう可能性が高いのです。
iPhoneのビデオ映像を、パソコンに取り込んで再生する場合、Windows10の最新ビルドでも、デフォルトではHEVC再生がサポートされていないので、Windows Media Playerでは以下のような警告が出て再生できません。
警告ダイアログ
ビデオ映像を見るためには、コーデックをインストールする必要があります。
HEVCビデオ拡張機能という名前のコンポーネント(無料)を、Microsoft Storeから入手すれば、デフォルトで再生することができます。
コーデック入手
話をiPhoneでのビデオ動画編集に戻します。
「高効率」モードで撮影したビデオを選択して、画面上部の編集ボタンを押します。
画面上部の「編集」ボタン
すると、画面の下に、ビデオ動画のタイムラインが表示され、その両サイドに開始と終了のクリップ区間を示すマーカー(白い縦棒)が出てきます。
そのマーカーを指で左右にスライドすると、それに合わせてビデオ動画のシーケンスを移動することができます。
撮影したビデオ動画の、一部だけを選択してクリップ(切り抜き)したい場合は、このスライド機能だけで、起点と終了点を設定することができます。
起点と終了点の設定は、左右の黄色でハイライトされた矢印マークを指でドラッグすることで行います。
起点と終了点の設定
右下の「完了」ボタンを押すと、「新規クリップとして保存」「キャンセル」の選択になるので、「新規クリップとして保存」を選択すると、オリジナルのビデオ動画とは別のファイルで、新規クリップが作成されてiPhoneに保存されます。
新規クリップとして保存
このクリップ編集は、iMovieのアプリを立ち上げる必要もなく、iPhoneのデフォルト機能だけで可能です。
ビデオ動画の編集で最も多いのが、余計なシーンを削除するこのクリップ作業ではないでしょうか。
3. iPhoneでのビデオ動画編集 - 回転
次に頻度の多いのが、撮影したビデオの回転です。
iPhoneのビデオ撮影でよくやってしまう失敗が、撮影を開始したときのiPhone本体の傾きが間違っていて、撮影したビデオ映像が、横向きになってしまっていることです。
これを是正するためには、パソコンでの編集などでは専用のソフトとかなりのCPUパワー、そして場合によってはオリジナルの画像の劣化を招きますが、iMovieを使うと拍子抜けするほど簡単に修正できてしまいます。
先ほどの画面で、画面上部の「編集」ボタンを押して、画面下部に現れる〇の中心に...が入っているマークを選びます。
iMovieが出現
すると、iMovieの青いアイコンが出現するので、それを選択します。
iMovieでの編集画面
ここから、iMovieの編集画面になります。
ビデオ画面を回転させたい場合は、二本の指でフリックするように、画面中央を同時に回転させたい方向にスライドさせます。
ビデオ動画の回転
すると、上の画面のように、回転させる矢印が表示され、ビデオ動画の変換処理が自動的に開始されます。
しばらくすると、変換処理が終了するので、あとは、「保存」を選ぶと、自動的に保存されます。
ここで注意することは、「新規クリップとして保存」の選択肢がなく、オリジナルのビデオ動画に上書き保存されることです。
ちなみに、回転角度は、90度だけでなく、180度回転も可能です。
上記の回転モードで出てきたiMovieの編集画面では、下のツールバーにハサミ(カット)、色調、テキスト挿入、音楽挿入の4つのアイコンが出てきます。
ハサミ(カット)は、前述のクリップ編集と同じ機能ですが、「新規クリップとして保存」ではなく、自動的に上書き保存になる点が注意が必要です。
色調調整、テキスト挿入、音楽挿入などその他の機能も、「新規クリップとして保存」ではなく、自動的に上書き保存となります。
4. iPhoneでのビデオ動画編集 - 結合
以上は、撮影したビデオ動画を選択してから、編集をするものでした。
この方法とは別に、まず始めに、iMovieアプリを立ち上げてから、編集対象となるビデオ動画を選択する方法があり、この場合は、iMovieのフル機能を使うことができます。
まずiMovieアプリを選びます。
iMovieアプリ
すると、プロジェクト一覧画面が表示されます。
左上の「+」を選択すると、新規プロジェクトとなります。
「ムービー」を選択します。
編集したいビデオを選択して、〇に✔のマークを選び、画面下部の「ムービーの作成」を押します。
ビデオを選択
すると、タイムラインに選択したビデオが表示されます。
追加ビデオ動画を選択
最初に選んだビデオ動画と同じように、編集したいビデオを選択して、〇に+のマークを選びます。
すると、二つのビデオ動画が結合されたタイムラインが表示されます(後で選んだビデオ動画が後半部分)。
二つのビデオ動画のトランジション効果も選択できます(デフォルトはフェードアウト/フェードインです)。
ちなみに、編集したいビデオ動画を選択する際、〇に+のマークの右にある「・・・」を選択すると、「形式を選択して追加」となり、様々なオプションを選ぶことができます。
形式を選択して追加
保存方法の選択
「ビデオを保存」を選択すると、次は「書き出しサイズを選択」の画面になるので、保存目的によって選択します。通常の保存であればHD、SNSや他人へシェア目的で小サイズの場合は、360pか540pを選択します。
書き出しサイズを選択
書き出しサイズによって、出力されるファイル名は720p.movのようになります。
ここで、「ビデオを保存」ではなく、いきなり例えばDropboxに出力を指定すると、なぜか1080p.MOVとフルHDで出力されます。理由は不明ですが、720pではなく1080pで作成したい場合は、ローカル保存ではなく、いきなりDropbox保存にする必要があります。
以上で、結合ビデオ動画がiPhoneに書き出し保存されます。
以下は、iMovieを活用して、クリップ編集して、バックグラウンド音楽を追加したサンプル動画です。
iMovieで編集(クリップ、結合、音楽挿入)したビデオ動画サンプル
以上、iMovieを活用してiPhoneのビデオ動画を編集する方法の紹介でしたが、これまではパソコンソフトでしかできなかった高度な編集のほとんどが、iPhoneだけで完結してしまうのは驚きです。
しかも、パソコンでの編集に必要なビデオ動画の取り込みや、処理の重い有料ソフトウェアなどとは無縁に、むしろパソコンでの処理より格段にスピードが速く、また画質の劣化も一切なく処理できてしまうのは、隔世の感があります。
パソコンソフトを使わないとできない編集処理は、モザイク処理、余計なオブジェクトの消去、音声ボリュームのミキシング調整など、かなり高度な処理くらいで、99%以上の機能は、iPhone単体でできてしまうようになりました。
5. iPhoneのLive Photoについて
iPhoneで写真撮影するときに、Live Photoというモードがあります。
これは、通常の1枚撮影ではなく、シャッターボタンを押す(写真を撮影する)瞬間の前後1.5秒づつ、合計3秒の映像と音声が保存されます。
Live Photoモードは、「カシャ!」という撮影音をたてずに、静かに写真を撮ることができるのも便利です。
このLive Photoモードで撮影した写真は、通常のJPEGフォーマットではない、HEIF(High Efficiency Image File Format :ハイ・エフィシエンシー・イメージ・ファイル・フォーマット、略称:HEIF、ヒーフ)というフォーマットで保存されます。
HEIF は、Moving Picture Experts Group (MPEG) によって開発され、 MPEG-H Part 12 (ISO/IEC 23008-12) で定義された画像ファイルフォーマットです。
JPEGと大きく異なる点としては、HEIFは、圧縮方式はHEVC、ロスレス圧縮もHEVCを用い、メタデータとしてExif、XMP、MPEG-7を内包できます。また、EXIFタグ以外にも、今まで別ファイルとして保存されていたXMPのようなファイルや、1つのファイル内に複数の画像やアニメーションなどを内包するマルチピクチャ機能や、トリミングやオーバーレイ情報、透明度、サムネイル画像も一緒に埋め込むことができます。
実は、このHEIFファイルも、3秒間のビデオ動画として保存されているのです。
HEIFフォーマットはWindows10でデフォルトサポートされていないため、パソコンへ転送すると、HEICという静止画ファイルと、MOVの動画ファイルに分かれて保存されます。
HEICの静止画ファイルは、iPhoneの本体メモリで、3秒間の動画から、キー写真として指定された静止画となります。
Live Photoのキー写真の編集は、パソコンで行うのではなく、iPhone上で行ったほうが圧倒的に便利です。
HEICフォーマットの写真をWindowsパソコンで表示するためには、HEICのアドオンソフトをMicrosoft Storeからダウンロードしてインストールする必要があります。
HEIF画像拡張機能
また、HEICフォーマットのファイルは、FacebookなどのメジャーなSNSではアップロード可能なものの、他の多くの写真系クラウドサービスではサポートされていません。
そのため、HEICファイルからJPEGファイルへ一括変換するためのソフトウェアをインストールしておくと便利です。
私はフリーソフトのiMazing HEIC Converterというものを利用しています。
iMazing HEIC Converter
iMazing HEIC ConverterはWindows/Apple版と、iOS11版もリリースされています。
話がHEICサポートに発散してしまいましたが、Live Photo(HEICのMOVファイル)も、ビデオ動画として編集する場合は、HEVCビデオ動画と同様、iPhoneの編集機能を使えば便利です。
Live Photoを編集
6. 【参考】様々なビデオ機器の動画編集
最後に、iPhone以外のビデオ機器の動画編集について。
パソコンでの動画編集ソフトで、現在最もおススメなのは、VideoStudioでもPowerDirectorでもなく、ソニーの無料ソフトであるPlayMemories Homeです。
PlayMemories Home
必要最低機能はすべて揃っており、ソニーのデジカメやデジタルビデオカメラを使っているのであれば、間違いないベストチョイスです。
逆に、ソニーの製品を持っていないと、H.264など編集に必要なコーデックのダウンロードができず、製品の機能を最大限発揮することができません(ソニー製品をUSB接続すると、自動的に対応コーデックのダウンロードが始まる仕組みです)。
品質にこだわりのあるソニーらしく、ビデオ編集での画質劣化はほとんど発生しないように工夫されており、また、処理スピードもかなり高速です。
最近Ver.6.0に更新されて、ファイル操作など使いやすさが一気に改善されました。
PlayMemories Homeの唯一最大の欠点は、HEVCをサポートしていないので、iPhoneから取り込んだビデオ動画は、(互換性優先モードで撮影したものは別として)表示も再生も編集もできない点です。
私は、ソニー製のデジカメの動画モード撮影のファイル、デジタルビデオカメラの動画ファイル、そして、アクションカムで撮影したAVCファイルは、すべてPlayMemories Homeで編集作業をしています。
また、ネットからダウンロードした動画に音声を合成するときも、PlayMemories Homeを使っています。
VideoStudioやPowerDirectorは、編集したビデオ動画をまとめてBlu-Rayディスクを作成するときにメニュー画面を作成する場合に必要ですが、それ以外は出番がなくなってしまいました。
しかし、スマホだけでビデオ撮影から編集まですべて無料で簡単にできるようになるとは数年前には全く想像できませんでした。iPhoneの進化はすさまじいですね。。。
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