【ワンランク上の京都観光】 比叡山延暦寺、修学院離宮、桂離宮ほか

【そうだ京都に行こう】

京都は何度訪れても新しい発見があります。

今回は、京都の古寺と庭園巡りで個人的に特におススメのスポット、それもちょっと普通の観光とは趣の違う名所を紹介します。

比叡山延暦寺: 厳しい修行で知られる天台宗の総本山を徒歩で踏破します!
修学院離宮、桂離宮、京都御所:事前予約が必要ですが、その価値は十分あります!
等持院:こじんまりとした夢窓疎石による名園が見事です!



1. 比叡山延暦寺

延暦寺は、言わずと知れた、天台宗の総本山、京都市と滋賀県大津市にまたがる標高848mの比叡山全域を境内とする寺院です。

延暦寺の元三大師堂(がんさんだいしどう)

「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」でお馴染みの戦国武将・織田信長が、比叡山の焼き討ちを行ったのは有名です。

JR京都駅から比叡山延暦寺へのアクセスは、いろいろな手段がありますが、私は市営バスで出町柳駅まで約30分、出町柳からは叡山電鉄叡山本線に乗って、終点の八瀬比叡山口駅まで15分、さらに叡山ケーブルと叡山ロープウェイを乗り継いで、比叡山頂駅に辿り着きました。

比叡山回遊案内図

JR京都駅から山頂まで約1時間30分と結構な距離がありますが、ロープウェイ終点の比叡山頂駅まで辿り着くと、そこは京都市内の雑踏から離れた山奥深い別世界です。

叡山ロープウェイ

下界の景色

比叡山頂からは遥か彼方に京都市内の繁華街が見えます。


私が訪れたのは、11月中旬だったので、比叡山は早くも紅葉で色づき始めた季節でした。

比叡山頂から延暦寺散策の旅が始まります。

比叡山のエリアは大きく三塔(東塔、西塔、横川)に分かれており、これらを総称して比叡山延暦寺と呼びます。

延暦寺三塔巡礼マップ

地図は「諸堂めぐり」の延暦寺三塔巡礼マップを利用しました。

比叡山頂から東塔エリアまで徒歩で25分程度、東塔から西塔まではさらに20分かかります。北端に位置する横川までは徒歩でさらに1時間以上かかるので、横川エリアにはバスを利用するのが現実的でしょう。

京阪バス・京都バス共通の比叡山内1日フリー乗車券というのが、大人800円で販売しています(ガーデンミュージアムと延暦寺拝観の割引券付き)。私はこれを利用しました。

比叡山内1日フリー乗車券

三塔(東塔、西塔、横川)を効率良く訪問するために、比叡山頂 → 西塔 → 横川 → 東塔、と巡りました。

比叡山延暦寺の諸堂巡拝券は、550円ですが、上記のフリー乗車券に100円オフとなる割引券が付いています。

諸堂巡拝券

諸堂巡拝券を購入して、まず、比叡山頂から西塔エリアに向かいます。

【西塔】



15分ほど山道を上ると、先に見えてきたのは、山王院です。ここは、平安時代の天台寺門宗の宗祖である、智証大師円珍(814~91)の住房であったことで知られています。

山王院

弘仁9年(818)、最澄は叡山の伽藍のなかから、寺院として九院を定め、山王院はそのなかにも含まれていました。

山王院の建立についての詳細はわかっていないようですが、延暦寺界隈で最も歴史の古い建造物の1つであることは間違いないようです。

年季の入った外観の雰囲気に圧倒されてしまいます。。。


山王院からの下りの石段の先に浄土院が見えてきます。

浄土院



浄土院は、最澄の御廟所で、比叡山の中でも特に清浄な場所として崇められている場所です。伝教大師の廟所に仕える僧(侍真)が、伝教大師が生きているのと同じ条件で、12年間もの期間を通して浄土院に篭って仕えているそうです。凄まじい話ですが、侍真に選ばれるのは名誉なことなのだそうです。

そして、さらに歩くこと10分、西塔のシンボルとなる釈迦堂が見えてきました。

釈迦堂は、信長の焼討ち後、豊臣秀吉が大津の園城寺(三井寺)の金堂を山上に移築したもので、天台建築様式の代表とされる比叡山内最古、鎌倉時代の建物です。

釈迦堂


振り返って背後を見ると、下りてきた石段が直線状に見えます。


釈迦堂の近くには、相輪橖(そうりんとう)という高さ13.7mの珍しい仏塔が建っています。

相輪橖(そうりんとう)


相輪橖は中に写経をおさめているそうです。 最澄が弘仁11年(820年)に創建されたものがその始まりと伝えられ、現在のものは1895年頃に改鋳されたものだそうです。

相輪橖は、現存するのはたったの三基で、この比叡山に一つ、栃木県都賀郡の大慈寺に一つと、日光山のものだけだそうです。

その相輪橖の道をはさんだ反対側には、鎌倉時代初期に造立された弥勒石仏があります。信長の比叡山焼き討ちで損傷したそうですが、京都を代表する石仏の1つに数えられています。

弥勒石仏 

石段を上ってゆくと、恵亮堂(えりょうどう)があります。看板には「恵亮和尚を本尊として祀る」と書いてあります。恵亮和尚とは、当時最も強力な和尚であり、京都の妙法院を建立した人だそうです。

恵亮堂(えりょうどう)

再び長い石段を上ります。延暦寺の名所巡りはなかなか体力が必要です。

やがて、行く先に常行堂(にない堂)が見えてきます。



常行堂(にない堂)

常行堂と法華堂という同じ形の建物がふたつ並んで、渡り廊下でつながっています。

力持ちの弁慶がこの渡り廊下をてんびん棒にして、このお堂をかついだという伝説から「弁慶のにない堂」と呼ばれています。

立派な鐘楼もありました。

鐘楼

西塔にある様々な名所を巡るだけで、結構な時間と距離を歩くことになります。

私は仕事の出張の恰好だったので、スーツに革靴でしたが、山道はなんとか徒歩で行くことができました。

しかし、途中の山道でお気に入りのサングラスを落としてしまいました。

なんかカシャンという音がして、すれ違った人が何か声をかけてくれたような気がしたのですが、石段を上るのに夢中になっていたので、サングラスを落としたことに気が付きませんでした。

西塔を一通り散策したあとは、フリー乗車券を使ってバスで北端の横川エリアまで移動しました。

【横川】

横川中堂は、横川エリアの中心にある建物です。



横川中堂は、嘉祥元年(848)に慈覚大師(円仁)が創建したものです。昭和17年夏、雷火で全焼、幸いに本尊の聖観音(重文)は炎火を逃れ、昭和46年に復元されました。

横川中堂

元三大師堂(がんさんだいしどう)は、おみくじ発祥の地です。 ここでは、角大師(つのだいし)のお姿を授与していて、魔除けの護符になっています。

元三大師堂(がんさんだいしどう)

元三大師堂から先は、比叡山延暦寺エリアでも最も奥深い末端の場所となります。長い石段の下りが続くこともあり、行楽客の姿はほとんど見かけません。

いつ終わるともわからない石段を下りながら、果たしてこの道は合っているのだろうか、と不安になりますが、石段を下り先に進みます。。。

下り切った横川の最北端には、定光院(じょうこういん)という日蓮宗比叡山の研修道場があります。実際の研修道場の近くということで周囲の雰囲気も心なしか緊迫しています。

定光院(じょうこういん)

そして奥には、比叡山なのになぜか日蓮聖人の像があります。東京から移設されたもののようです。

日蓮上人像

定光院は、観光名所というより、実際の修道僧が生活をしている場所なので、訪れる側も静粛な気持ちになります。

厳しい修行で知られる比叡山ですが、失敗したら「死ななければならない」という恐ろしい不文律がある「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」という修行をご存知でしょうか。

これは、7年がかりで約4万キロ(地球1周に相当)を歩く比叡山延暦寺だけの荒行のことで、途中で止めることは如何なる理由であっても許されません。

1300年の歴史で達成したのは2人だけという、過酷さでは究極の修行です。

7年がかりで4万キロを踏破するというのは、毎日15km(1か月で450km)を休みなしで7年間歩く計算になります。ウルトラマラソンのランナーが走る距離が1か月250km程度であることを考えると、平坦な公道ではなく山道を歩くわけですから、これは途方もないペース(というか、並外れた耐久系スポーツの経験がなくては体力的に不可能)であることがわかります。

特に、修行後半に要求されるペースは究極の厳しさで、6年目には1日約60 km の行程を100日続け、7年目には、はじめの100日は全行程84 km におよぶ京都大回りで、後半100日は比叡山中30 km の行程に戻る、とあります。

これだけの難行なのですが、修行に失敗して実際に自殺したという記録は見当たらないようです。。。

その真偽の程は別として、延暦寺の修行の厳しさを象徴するものなのでしょう。。。

定光院を一通り散策したあとは、急いで、また元の道を引き返します。戻りはひたすら石段を上るので結構大変です。。。

横川には、また、天台中興の祖といわれる慈慧大師良源(元三大師)の御廟もあります。

元三大師御廟

【東塔】

親鸞が修行を行ったと言われる「修行の地」がありました。

親鸞聖人ご修行の地

東堂の中心には、根本中堂があります。根本中堂は比叡山延暦寺の総本堂です。

内部に祀られている薬師如来の前には、開創以来1200年間消えることなく「不滅の法灯」が輝いています。




根本中堂

東塔の散策が終わり、いよいよ京都経由で東京に戻る時間が来ました。

帰りは、ケーブル延暦寺駅から坂本ケーブルで琵琶湖に下ります。

坂本ケーブルは、全長2,025mで日本最長のケーブルカーだそうです。琵琶湖を見下ろせる大パノラマが素晴らしいです。

琵琶湖

ケーブル坂本駅からは、JR湖西線比叡山坂本駅を経由してJR京都駅に戻りました。

良く歩いた一日となりました。

比叡山延暦寺は、その奥深い場所柄、なかなか訪問する機会がありませんが、その崇高な雰囲気を味わう事ができるのは貴重な体験となりました。

(2007年11月14日に訪問)

2. 修学院離宮、桂離宮、京都御所

京都には、事前に予約をしないと入れない名所がいくつかあります。「苔寺」の愛称で有名な西芳寺もその一つですが、宮内庁管轄の「修学院離宮」、「桂離宮」、そして「京都御所」が筆頭に挙げられるのではないでしょうか。

拝観のためには、少なくとも1週間以上前に、往復はがきで申込みを行います。

。。。と、書きましたが、最近は、なんと、宮内庁のホームページからオンライン申込みができるようになったようです!

宮内庁のオンライン申込み

以前は往復はがきで申込みをしても予約が取りにくいと言われていたのですが。。。時代の流れですね。

そして、京都御所に至っては、2016年の夏から当日拝観が可能となりました。

2.1 修学院離宮

庭園がとにかく見事というほかありません。文句なしに京都の数多い名庭園のなかでもトップに数えられることの多い名庭園です。

拝観コースは以下のようなルートで、一回の参観定員は50人。拝観時間は約80分と長めです。

略図にあるように、下離宮、中離宮、上離宮の3つのエリアに分かれています。中離宮は後日に造成されたとのことです。



朝9時集合のグループでした。当日は運よく快晴の日和に恵まれました。






修学院離宮は、明暦元年(1655年)に後水尾上皇によって造営工事が起こされ、万冶2年(1659年)に完成した山荘です。



とにかくどこを取っても絵になるのですが、上離宮からの眺めが定番のようで、まさに背景の山並みすべてを借景に取り入れた素晴らしい庭園です!


上離宮の隣雲亭からの眺めが特に定番です。ここは本当に素晴らしい。天国のようです。この景色を見るだけでもここに来た価値があります。



ちょうど紅葉が始まった時期でもあるので、池にも真っ赤に染まった紅葉が映えていました。


紅葉のベストシーズンはおそらく11月下旬ではないでしょうか。もちろん観光客で混雑なんてこととは無縁で、じっくりと心ゆくまで紅葉を堪能できます。


浴龍池に紅葉の景色が反射してなんとも言えない風情を醸し出しています。


修学院離宮を訪れたあとは、心から幸せな気分に浸ることができます。

(2007年11月14日に訪問)

2.2 桂離宮

こちらも修学院離宮にはスケールではやや見劣りがするかも知れませんが、日本庭園の最高傑作という呼び声も高いその回遊式庭園が素晴らしいです。

この見学の日も絶好の快晴に恵まれました。


一回の参観定員は50人。拝観時間は約60分です。

回遊式庭園


松琴亭

茶屋では日陰で一息休んで、絶景を堪能することができます。


下は松琴亭の市松模様の襖です。







庭には手入れの行き届いた見事な苔がびっしりと張り巡らされていました。





桂離宮は、回遊式庭園の風景をさまざまな位置から楽しむことができます。その変化は飽きることがありません。

(2007年11月14日に訪問)

2.3 京都御所

京都御所は、かつては修学院離宮、桂離宮と同じく拝観には事前予約が必要でした。

ところが、嬉しいことに、2016年の夏から当日拝観が可能となりました。

京都御所は、「京都御苑」の広大な敷地のなかにあります。京都御苑には200本の梅の木が植えられています。

京都御所には梅の季節に訪れました。この日も絶好の日和に恵まれました。

見どころは、「蛤御門」「閑院宮邸跡」「拾翠亭」などです。



梅の花が満開でした!


何やら人が集まって何かを撮っているので近づいてみると。。。


なんと梅の花にウグイスならぬインコが!









赤い門の奥に見える建物が、「紫宸殿(ししんでん)」という、京都御所で最も格式の高い建物です。ここで明治、大正、昭和天皇の即位式が行われました。


紫宸殿(ししんでん)





京都御所はとにかく敷地が広大、スケールが大きくて圧倒されます。

【2017年2月16日に訪問】

3. 等持院

京都の数多くある寺院・庭園のなかで、個人的に最も気に入っている場所です。

庭園自体はこじんまりとしていますが、緑豊かな小宇宙のようで、観光客も少なく落ち着いて過ごすことができます。

等持院(3月)

等持院は、足利尊氏が夢窓疎石を開山として西暦1341年に創建したものです。

足利尊氏像

夢窓疎石は、鎌倉時代末から南北朝時代、室町時代初期にかけての臨済宗の禅僧で、世界遺産でもある天龍寺の庭園や、西芳寺(苔寺)の庭園を設計したことで有名です。

等持院の庭園は、夢窓疎石による3大名園の1つとされているようです。

場所は京福北野線の等持院駅下車徒歩約10分、立命館大学の南側に隣接した閑静な住宅街に位置しています。

庭園は、紅葉の時期だけでなく、初春や真夏の深緑の時期も見事です。

また、等持院には、JR東海のCMで有名になった達磨図があります。この達磨図は天龍寺にも同じものが飾られています。天龍寺の元住職の関牧翁(せきぼくおう)の作品であるそうです。

等持院の達磨図

達磨図とは、中国禅宗の開祖である達磨大師(だるまたいし)を描いたもので、臨済宗や曹洞宗など禅宗の寺院(天龍寺など)でも見ることができます。

等持院の見どころについては、「住宅街の中にある紅葉の穴場寺院!庭園が美しい京都「等持院」」が詳しいです。

(2000年3月31日に訪問)
(2007年8月2日に再訪問)


以上、京都の古寺と庭園巡りで個人的におススメのスポットでした。

紹介できなかった場所でも、まだまだたくさんおススメの場所はあります。特に、紅葉シーズンには息を呑むような美しい庭園や古寺が京都にはたくさんあります。

個人的には、退蔵院、無鄰菴、随心院、高桐院、曼殊院、詩仙堂、宝泉院、圓光寺、祇王寺などがおススメです。

これらの名寺・名園もいつかの機会に紹介したいと思います。


【京都で座禅体験、禅や瞑想を学びましょう!】早朝の妙心寺と昼過ぎの勝林寺

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