【世田谷区を流れる野川は自然の宝庫だ】カワセミ、アオサギ、ウシガエル、雷魚(カムルチー)など

世田谷区を流れる野川沿いは、豊かな自然が残っており、カワセミなど都会ではあまり見る機会のない生きものにたくさん出会うことができます。

二子玉川駅からジョギングで15分くらい野川に沿って走ると、驚くほど自然の豊かな地域(喜多見や宇奈根)に辿り着き、その自然環境は上流の成城地域まで続きます。

野川

野川で出会うことのできる生きものと、周辺の散策スポットをまとめて記事にしてみました。

1. 野川について

野川は、東京都を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川で、水源は、国分寺にある日立製作所中央研究所です。

三鷹市と調布市を経由して、狛江市と世田谷区では、国分寺崖線沿いの自然豊かな地域を経由して、最後は二子玉川近辺で多摩川に流れ込みます。

野川流域マップ(創林社「生きている野川それから」より引用)

世田谷区環境総合対策室が2008年に作成した「せたがやの水辺」というパンフレットに、世田谷区域の野川マップが掲載されています。


「せたがやの水辺」のマップ


野川の周辺地域は、幹線道路は唯一多摩堤通りだけで、近くに鉄道の駅もありません(最寄り駅は二子玉川駅もしくは喜多見駅まで徒歩20~30分ほど)。

また、次太夫堀公園・民家園や、成城三丁目緑地の樹林地や国分寺崖線といった自然にも囲われています。

そのためか、世田谷区内とは思えない程豊かな自然に恵まれています。


野川周辺の地図

以前は家庭用排水などで汚染がひどかった野川ですが、ここ数十年の水質改善の成果で、生きものの宝庫のような自然環境が戻ってきました。


野川で見られる魚類と底生動物

川魚では、モツゴ、オイカワ、ウグイ、ウキゴリなど。

野川の魚たち

以下では、野川で実際に出会うことのできる生きものたちを紹介します。

2. カワセミ

カワセミは、青い背とオレンジ色の腹が特徴の「飛ぶ宝石」とも言われている美しい鳥です。

カワセミ(Wikiより)

水面すれすれを速いスピードで飛び、水中に飛び込んでその長いクチバシで魚や昆虫を捕獲する姿は、なかなかカッコイイものがあります。

野川でカワセミを初めて見かけたのは、2017年の9月3日。家族で野川沿いをサイクリングしていたときでした。

カワセミを目撃(中央の島に止まっている)

そして、今月(2019年7月)、久し振りに野川沿いを早朝のジョギングで走っていたところ、前回見かけた場所とほぼ同じ所で、再びカワセミを目撃できました。

それも二日連続で。

場所は、新井橋と町田橋の間(東名高速道路の高架近辺)、住所では世田谷区大蔵六丁目と岡本三丁目の境界です。


カワセミ発見の場所(その1)

カワセミは雀くらいの大きさなので、野川沿いの側道や橋の上からでは、近くを飛ばないとオレンジや青が識別しにくいのですが、かなり速く飛ぶので、そういう鳥がいたらカワセミの可能性が高いです。

2019年7月23日の早朝7時30分ころには、大正橋(たいしょうばし)近辺に、2羽のカワセミが仲良く揃って飛んでいました。


カワセミ発見の場所(その2)

つがいだったのでしょうか。

早朝ジョギングの途中でiPhoneしか持ち合わせていなかったので、望遠を使った全体を写真撮影することはできませんでしたが、以下の動画では、2羽が水面を飛んで、時折エサを狙って水中に突っ込む姿がわかると思います。

2羽のカワセミ(大正橋より)

その後、2019年7月28日には、ずっと下流の野川水道橋でもカワセミを見かけたので、野川の流域の広い範囲で活動しているのかもしれません。

3. アオサギ

最初に野川を訪れたときには、アオサギが堂々と川の中州に佇んでいる姿を見つけて驚きました。

野川のアオサギ(その1)

野川のアオサギ(その2)

アオサギは多摩川河川敷でも良く見かけることができますが、野川ではほとんど毎日のように堂々と佇んでいる姿を見ることができます。

場所は、多摩川との合流地点から、上流に向かってほとんどどの地点でも頻繁に見かけることができます。

アオサギはペリカンに近い鳥の種類で、全長は1メートル近い大きな鳥です。身体は白いのにアオサギと呼ばれるのは、「アオ」は古語で灰色を表しているからだそうです。

アオサギ(Wikiより)

アオサギは、空中高いところを飛んでいることもあれば、水面スレスレを豪快に飛ぶこともあります。

野川の上空を、大きなアオサギが雄大に空を飛んでいることもありますが、大抵は堂々と川の中に佇んでいます。

アオサギと似た鳥で、ダイサギやコサギがいます。

ダイサギ

コサギ

ダイサギやコサギは、アオサギよりも身体が白いですが、クチバシが黄色いのがダイサギ、黒いのがコサギです。

野川にはいろいろなサギがいます。

アオサギは比較的良くみかける=警戒心が薄いのに対して、ダイサギやコサギは、遠目に見つけても近くに寄ると、サっと羽ばたいて逃げてしまうことが多いようです。

下の動画は、カルガモが10匹以上も集まって川辺で遊んでいる上を、コサギが優雅に飛んで行くものです。

カルガモの群れとコサギ(喜多見大橋の近く)

こんなアオサギやサギの仲間が当たり前のように見れるというのも野川ならではですね。

4. ウシガエル

実は、私はウシガエルを目撃したことはありません。

ウシガエル(Wikiより)

しかし、その独特の鳴き声(牛の鳴き声に似ています)が強烈で、最初聴いたときは一体何の音かとギョッとするほど音圧の高い鳴き声です。

まずはこちらをお聴きください。

ウシガエルの鳴き声(2019/7/21 大正橋より)

上の映像では、ウシガエルの鳴き声は2匹だけですが、その低域音圧は相当なもので、川沿いの家屋のガラス窓をビリビリと共鳴させるほどでした。

実際に、ウシガエルの鳴き声の騒音は凄まじいらしく、田んぼに面したマンションの住民は、昼夜問わずあまりのうるささに会話もできない程だということです。。。

ウシガエルは外来種で、大型かつ貪欲で環境の変化に強い上に、口に入るあらゆる動物や昆虫を捕食してしまうため、日本の侵略的外来種ワースト100にも指定されています。

ウシガエルは警戒心が強く、夜行性ということで、捕獲することはもちろん、姿を見つけることも難しいようです。

野川の在来種の環境を破壊しかねないウシガエルなので、オタマジャクシの間に捕獲して駆除するようです。

ウシガエルのオタマジャクシ

ウシガエルのオタマジャクシは、普通のオタマジャクシとは比較にならないほど大型で、後で述べる「野川せせらぎ教室」でも、大量に捕まえることができます。

5. 雷魚(カムルチー)

雷魚(カムルチー)は、以前子供と一緒に参加した「世田谷区トラストまちづくり」の人気イベント「野川せせらぎ教室」で見つけた水中の生きものです。

「野川せせらぎ教室」は、今年で第55回の開催を迎えました。2006年から始まって年間3回ほどの開催なので、もう10年以上続いているイベントです。人気イベントなので、抽選に当たらないと参加できません。

教室は、「タモ網」という 水中にいる魚をすくう網を使って、水辺の生きものさがしをします。

タモ網で川底をガサガサと探るので、通称「水辺ガサガサ」と呼んでいます。

場所は、野川の神明橋の近くで開催されます。


「野川せせらぎ教室」が開催される神明橋

野川せせらぎ教室

このあたりは川沿い民家もなく、写真のようにまるで田舎のような場所で、ここが世田谷区(成城)とは信じ難いほどの自然に恵まれています。

「野川せせらぎ教室」には、これまで3回参加しました。

1回目の第43回せせらぎ教室では、スミウキゴリ、モツゴ、メダカ、ナマズ、ニホンウナギなどが捕れました。この時はまだタモ網に慣れていなかったこともあり、我が家が捕れたのは小さなエビや小魚ばかりでした。

1回目:2016年7月24日

2回目は、第50回記念のせせらぎ教室で、快晴の天気に恵まれました。モツゴ、オイカワ、シマドジョウ、タモロコ、鮎の稚魚などが捕れました。

2回目:2018年5月20日

そして、3回目の第51回せせらぎ教室では、オイカワ、スミウキゴリ、シマドジョウ、カメなどが捕れました。ちなみにカメは、水底に沈んでいたルイヴィトンのボストンバッグのなかに住んでいたのを私が見つけました。

3回目:2018年7月22日

このときに、次女が偶然に捕まえた魚が雷魚(カムルチー)でした。

雷魚(カムルチー)

見た目は、普通の淡水魚の稚魚と似ているのですが、ベテランの指導員の方曰く、雷魚(カムルチー)が野川で捕れるのは極めて珍しいということで、指導員の方も興奮気味に説明をしてくださいました。

ベテランの指導員の方もビックリ

カムルチーを手に喜ぶ次女

雷魚というのは、スズキ目タイワンドジョウ科に分類される淡水魚で、非常に獰猛で、肉付の良く細長い大きな肉食魚です。

雷魚(「ライギョとは」のサイトより)

朝鮮半島から輸入された外来種で、多摩川では釣れることもあるそうです。今回捕まえたのは、その稚魚だそうです。

日本に居る外来種の3種の中で1番大きな魚で、本州にいる魚の中でも非常に大きな種類の魚です。体長は最大で120㎝、13kgにも達するようです。

雷魚という名前は、人などに噛み付き、雷が鳴っても離さないという事から由来されています。

こんな獰猛な魚の稚魚もいるとは。。。野川の生きものの世界は奥が深いですね。

6. ハグロトンボ

2016年7月の「野川せせらぎ教室」で神明橋の近くで見かけました。

ハグロトンボは、野川の五大名昆虫(ゲンジボタル、フタスジモンカゲロウ、シマアメンボ、ハグロトンボ、カンタン)のひとつです。

ゲンジボタルは、上流の野川公園を中心としてホタル観察会を開催するなど再生に努めていますが、こちらの記事によると、残念ながら、在来種は絶滅してしまったようです。

ハグロトンボも、かつてはたくさんいたそうですが、だんだん姿を見かけなくなっています。

ハグロトンポ

羽はビロードのように真っ黒で、胴体は緑色に光っています(緑色はオスです)。飛ぶとチョウのようにヒラヒラと舞う感じでとても優雅です。

全身が黒いトンボは「神様トンボ」と呼ばれ、神様の使いで縁起が良いらしいです。

野川にはいろいろな種類のトンボが飛んでいます。特に、喜多見大橋より上流の野川緑道近辺に多い気がします。

7. その他

「野川せせらぎ教室」が開催される神明橋の近くには、「世田谷トラストまちづくりビジターセンター」があります。
世田谷トラストまちづくりビジターセンター

センターの内部には、野川で生活している様々な魚類と底生動物が水槽で飼育されています。





野川の豊かな自然環境を体験するには絶好の場所で、小学生を中心にたくさんの子供たちが訪れています。


野川もかつては、生活排水などで汚染されてしまい、生きものの姿がほとんど消えてしまった時期もあったそうですが、財団法人の「せたがやトラストまちづくり」や、地元のボランティアの方々の努力の甲斐あって、ようやく現在のような自然豊かな環境に回復することができたそうです。

野川ルールという小冊子があります。これは、東京都建設局の「野川流域連絡会の生きもの分科会」が作成したもので、生きものへの餌やりや採取、犬の散歩の他にペットの放流・草刈・ゴミなど6項目について提案したものです。

こちらからダウンロードできます。
野川ルール

このように、野川の自然はたくさんの人たちの努力で、成り立っているのです。

私は、生まれも育ちも世田谷区で、その豊かな自然のなかで子供時代を過ごし、動物や昆虫といった生きものに人一倍の興味と親しみを感じて育ってきました。

そんな世田谷区の豊かな自然を、次世代の子供たちに引き継いでいきたいと思っています。

8. 【おまけ】野川の散策ルート

野川を下流から上るルートのスタート地点は、二子玉川駅直下にある兵庫島公園です。兵庫島公園から野川沿いにサイクリングロードを1kmほど進むと、「吉澤橋」に辿り着きます。

吉澤橋

「吉澤橋」は、その先の多摩堤通りの信号待ちの車でいつも渋滞している交通量の多い橋です。

吉澤橋から二子玉川方面を臨む

「吉澤橋」の少し先には、「野川水道橋」があります。

野川水道橋

「野川水道橋」は、かつて、多摩川より取水した水を、砧下浄水場から、駒沢給水塔に貯水する際に、この橋に水道鉄管が通っていたことに由来します。

「野川水道橋」を超えて「天神森橋」に向かう途中で、野川は仙川と合流します。

野川と仙川の分岐点

「天神森橋」は、水道道路と多摩堤通りが合流する信号があるため、いつも渋滞している交通量の多い橋です。

天神森橋

天神森橋から上流方面を臨む

「天神森橋」から先は車の交通量も一気に少なくなり、野川の静かな自然環境が続きます。

「天神森橋」から上流に向かうと、「町田橋」、東名高速高架を超えて、「新井橋」で多摩堤通りに当たります。

町田橋

東名高速高架

新井橋

新井橋は、多摩堤通りの幹線道路なので交通量は非常に多く、渡るのには注意が必要です(この辺りの野川は、川辺まで降りてゆくことはできません)。

2019年現在、東京外環道の東名ジャンクション予定地(東京都世田谷区)付近の大深度地下トンネル工事の関係で、周囲は大規模な工事が進んでいます。

【外環道・大深度地下工事】野川で気泡の発生続く、というニュースにもなっており、周囲の自然環境への影響が心配されています。

東京外環道の東名ジャンクション予定地

東名ジャンクション予定地の先は、「大正橋」(たいしょうばし) → 「水道橋」 → 「茶屋道橋」 と、「喜多見大橋」(多摩堤通り)まで、どれも車の往来が少ない小じんまりとした橋が続きます。

大正橋

大正橋からの景観(上流方向)

「大正橋」と「水道橋」の間に、次太夫堀公園の入口(南)があります。

次太夫堀公園の入口

次太夫堀公園は、民家園など世田谷の農村風景の典型的なイメージと昔ながらの小川を復元した自然が豊かな公園で、早朝ジョギングはここを折り返し地点にしています。

次太夫堀公園

園内には、稲穂が見事な水田があります。

公園内の水田

次太夫堀公園地図

「水道橋」のすぐ手前には、工事のための仮設の橋が掛けられており、大型車両が行き来できるようになっていますが、特に頻繁に工事車両が往来するようなことはありません。

仮設の橋

仮設の橋の先に「水道橋」があります。

水道橋

水道橋は現在閉鎖中で、渡ることができません。

水道橋の先に、茶屋道橋があります。

茶屋道橋
茶屋道橋

茶屋道橋から上流を臨む

「茶屋道橋」の先には、再び幹線道路の「喜多見大橋」(多摩堤通り)があります。この橋の近くには、デイリーヤマザキやマクドナルドなどがあります。


喜多見大橋

喜多見大橋より上流を臨む

デイリーヤマザキとマクドナルド

喜多見大橋を超えて、野川沿いの道は再び自然一杯の雰囲気になります。


再び次太夫堀公園の入口(北側)があります。

次太夫堀公園北入口

そして、「中野田橋」「雁追橋」という小さな橋が続きます。

中野田橋

雁追橋

雁追橋の先に、世田谷通りの中ノ橋が通っており、ここは交通量が一気に増えます。

中ノ橋

幸い、この橋の下は、野川の川沿いに降りれるようになっているので、中ノ橋を横断しなくても先に進むことができます。

水質もとてもきれいです。

水質

野川沿いに降り立つと、ここが世田谷区ということを忘れてしまうほど、絵になる光景です。


小田急線の高架のあたりは、上空をハトの大群が何度も旋回を繰り返していました。

小田急線の高架

上野田橋

高架を過ぎると、野川緑道という全長700mくらいの舗装された桜並木になります。市民の憩いの場所となっており、散歩やジョギングをする人がたくさんいます。

野川緑道

この辺りの住所は世田谷区成城で、「神明橋」を中心として、土手を下りて野川の川沿いいまで出ることができ、自然観察には絶好の場所になっています。

神明橋

神明橋より上流を臨む

二子玉川駅の「兵庫島公園」を起点に、成城の「神明橋」までは、片道約5km、徒歩で約1時間のルートです。


徒歩では往復は少しキツイですが、サイクリングやジョギングであれば往復できる距離なので、特に早朝の野川の自然を散策がおススメです。

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