前評判通り、レースコースが冗談かと思うような難しさで、MTB初心者の私は全く歯が立ちませんでしたが、幸運も重なって何とかカットオフタイムぎりぎりに滑り込みました。
レース会場の丸沼は、朝から快晴に恵まれて、この季節としてはかなり暖かい気温と、レースコンディションとしては非常に恵まれました。
5月に突然思い付いたエクステラジャパンへの挑戦。。。コースの難易度が高過ぎて、4か月のMTB修行では、正直全く歯が立ちませんでしたが、こうして無事に五体満足で帰還できてホッとしています。
1. エクステラジャパンについて
XTERRA(エクステラ)は、オープンウォータースイミング、MTB、トレイルランニングの3種目を1人の競技者が連続して行う競技で「オフロード版トライアスロン」です。
ITUの世界選手権もあり、現在では世界16カ国100レースが行われています。
日本では、2004年から2013年まで群馬県丸沼でエクステラジャパンが開催されていましたが、2015年の北海道での開催を最後にエクステラは開催されていませんでした。
今年になってエクステラジャパンを丸沼で復活させることになり、晴れて4年ぶり(丸沼では6年ぶり)に復活しました。
レースは、スイム1.2km マウンテンバイク25km トレラン10kmです。
オフロードトライアスロンは過酷な競技ですが、特に、丸沼で開催されるエクステラジャパンは、世界100レースのなかでも最も過酷なコースの一つに数えられるほど厳しいので知られています。
丸沼は、標高1,430mと高地なので水温が低く、空気が薄いのでスイムでもリタイヤしていまう可能性があります。また、通常立ち入り禁止の原生林を抜けるテクニカルなバイクコースとトレイルコースは、以前の大会では野生の熊が出たこともあるそうで、レース経験者からは「エグイ」「キツイ」、そして「こんなに楽しいコースはない」との評価も。。。
XTERRAホームページ記事より引用
上のXTERRAホームページ記事(英語)から一部Google翻訳して抜粋します。
「会場は、賑やかな東京の首都である観光荘リゾートから4時間です。温泉は海抜4,000フィートの保護された自然保護区にあります。レース自体は、丸沼湖の穏やかな海での1,200メートルの泳ぎと、アドレナリンが降り注ぐ16マイルのマウンテンバイク、途方もなくワイルドな6マイルのトレイルランを組み合わせています」
「この自転車コースは、長野に拠点を置く元プロマウンテンバイクポールチェットウィンドによって作成されました。想像を超えた最も技術的でスリリングで忘れられないルートに乗ったすべての人から呼ばれています」
こんな過激なレースに何故参加する気になったかと言うと、以下のビデオをYouTubeでたまたま観たのがきっかけでした。
Technical Mountain Bike Paths of XTERRA (抜粋)
MTBで派手に転倒するシーン、ゴール目前で脚がもつれて転びそうになるシーンなど、XTERRAの過酷さを象徴する内容ですが、素晴らしいBGM(Cit Eastwood-2 Par)も相まって、一体どれほど過酷なレースなんだろうか、とすっかり心が虜になってしまったのです。
2. レース前日
前日に都内から自家用車にMTBを積んで早朝に出発しました。先月の珠洲トライアスロンのときは、ランシューズを忘れて途中で車で引き返しましたが、今回は準備に抜かりなく。。。と思っていたら、ゴーグルを忘れたことに途中で気付きました。。。
気付いたのは、既に群馬まで来てしまった後だったので、沼田インターチェンジで関越道を降りて、ゴーグルを売っていそうな店を探します。
。。。が、スポーツ用品店などは軒並み閉店。頼みのホームセンターにも置いていません。
結局、100円ショップで大人用ゴーグルを発見!
100円ショップのゴーグル
若干不安ですが、まあ何とかなるかと。。。
道を進むと、やがて、丸沼方面は空が晴れてきました!
そして、ようやく丸沼に到着。自宅から190km、事故渋滞があったので朝7時前に出発したのに、到着はちょうど昼でした(片道5時間)。
丸沼
本日宿泊でお世話になる環湖荘の前には、レース出場者の全員の名前が掲示されていました。Championship(トライアスロン)出場者は全員で188名(男性167名、女性21名)、そしてエリートクラスで全世界から14名のプロが参加しています。
環湖荘前のスタートアップリスト
旅館前では、エクステラエキスポが開催中。選手や関係者で賑わっています。
エクステラジャパンの参加者の特徴は、トライアスロン大会と比較すると、競技年齢がかなり若いように感じました。
MTBがネックとなって、シニアクラスは参戦が少ないのでしょうか。。。
私はXTERRAロゴ入りの防水バックを購入しました。これなかなかカッコいい(≧∇≦)
XTERRAロゴ入りの防水バック
旅館の前の丸沼に出てみると、ゴールやトランジションエリアなど既にレースの準備が完了していました。
ゴール
丸沼
トランジションエリア
選手の多くは、既にMTBのコースに試走に出ているようです。
私は試走はするつもりはなかったのですが、コースがどんな様子かちょっと調べようとMTBを組み上げて少しコースに出てみました。
なんかいきなりシングルトラックで走りにくそうです。。。ほんの数100mくらい走っただけで早々に引き返してしまいました。
丸沼のMTBバイクコースは超難度で、エグイというのを事前に聞いていたので、試走なんかしたらそれだけで体力消耗してしまうし、何より転倒して怪我でもしてしまったら元も子もないので、試走はするつもりはありませんでした。
チェックインの時間までのんびりと呑気に居眠りをすることに。。。丸沼の高原の空気は涼しくて気持ち良いです!
エリート選手のプレスインタビューを聴いてから、宿にチェックインしました。
エリート選手のプレスインタビュー
宿は4人の相部屋です。4人ともエクステラは初挑戦ということで意気投合、耐久系スポーツの話で大いに盛り上がりました。
レースを通じて知り合いが増えるのは心強いし、嬉しいものです。
温泉に入ってから待望の夕食タイム
夕食
ビールで乾杯してお互いの明日の健闘を祈ります。
昼間に居眠りしたにも関わらず、夜は再び睡魔が襲ってきました。最近やけに眠くなるのですが、夜10時前に就寝。
3. レース当日の朝
昨晩はぐっすり熟睡してしまったので、朝は5時30分に目が覚めました。思い返せば、アイアンマン北海道に挑戦したときは、前日の夜は緊張で一睡もできなかったのですが、難敵エクステラを前にしてぐっすりと寝込んでしまうとは、神経が太くなったのか、油断しているのか、その両方か。。。
まだほとんど人のいない湖に出てみました。
丸沼が朝霧に覆われていて、実に神秘的です。。。
こんな神聖な場所でレースができること幸運に、感謝の念が沸き起こってきました。
スイムアップからのトランジションパス
湖の水温を確かめると、驚くほど冷たいです!水道の水より冷たいのでは。。。果たして大丈夫でしょうか??
宿の部屋に戻ると3人も起きていたので、準備をして朝食に行きます。
食事を終えて外に出てみると、早朝の朝霧がすっかり晴れて、快晴の天気!
今日の天気予報では最高26℃と、この季節の丸沼として異例なほど温度が高いので、水温もじき暖かくなるのではと安心しました。
事務局のお姉さんにエクステラとレースNoのスタンプを押してもらいました。
ブリーフィング(情報提供「Xterra Japan 丸沼を盛り上げる会」)
何と、カットオフの時間が変更になったとの重大発表が!
大会開催概要(配布資料)では、カットオフタイムは以下のように決められていました。
スタート:11:00
スイムカットオフ:12:00
バイクカットオフ:15:00
ランカットオフ:16:00
制限時間(レース全体):5時間00分
それが、ブリーフィングの説明では、
スタート:11:05 (エリート選手のスタートが11:00のため、5分遅れでスタート)
スイムカットオフ:12:05
バイクカットオフ:15:35
ランカットオフ:17:05
制限時間(レース全体):6時間00分
と変更になったと、サラッと説明が。。。
カットオフタイムが非常に重要な私のような遅い選手にとっては朗報です!
しかし、誰も気にしていないようなので、ブリーフィングの質疑応答で、私がカットオフタイムについて再度確認の質問をしました。
ウーム、こんな重要な変更が、ブリーフィングでサラッとだけ説明されていいものなのでしょうか。。。?
とにかく、これでずいぶん気分的にはラクになりました。
トランジションエリアにバイクをセットして、シューズなど必要なものを全て準備します。
タイヤの空気圧は1.8くらい。ラックの隣のベテラン選手の方に教えていただき、空気圧を少し抜きました。
そして、ウェットスーツの下半身を着込んで、スイムスタートエリアに向かいます。
いよいよレースが始まります!
4. スイム(1200m、41分21秒)
スイムは私の最も苦手な種目なのですが、先月の珠洲の1mの荒波のなかでも泳げたイメージが残っていて、いつも以上に気持ち的には余裕でした。試泳をしてみると、思った以上に水温は高く、ウェットスーツを着ていれば何の問題もない状態でした。
「Xterra Japan 丸沼を盛り上げる会」より
そして、私はレース前の1週間ほとんどトレーニングをしていなかったので、早く泳いでみたくなりました。
エリートのスタートが済んで、5分後に、いつものように、
「みんな気合入れて行くぞ!」
「オーッ!!!」
という掛け声のなか、レースがスタート!!
「Xterra Japan 丸沼を盛り上げる会」より
Garminのスタートボタンを押したのですが、なぜか表示がいつものように切り替わりません。。。
皆が勢い良くスタートするなか、ほぼ最後尾から、Garminをいろいろいじくっているうちに、まあいいや、ということで記録を諦めてスイムを開始しました。。。
岸に近いところは透明度が低いので、ドラフティングで誰かに付いていくことはできません。
心配していた100円ショップのゴーグルは特に問題なさそうです。
水温は結構冷たいですが、寒いという程ではありませんでした。
人数も少ないせいか、バトルもあまり発生しません。
「Xterra Japan 丸沼を盛り上げる会」より
最初のうちは、なんとなく調子が良さそうな気がして、結構力泳して少しでもタイムを縮めようと頑張って、他の選手を追い抜いたりしました。
が、やがて、そんな元気もあっという間になくなり、みるみるうちに息が上がって苦しくなってきました。。。
これは先月の珠洲と同じ状況。。。でも波もなく快適なコンディションなのに何故?
ひょっとして高度が高く空気が薄いのが影響しているのでしょうか?
とにかく息苦しく、ブイの方向を確認する余裕など全くありません。
珠洲のときはコースロープに掴まって一息つきましたが、丸沼にはコースロープはありません。
あまりの息苦しさに、200mのブイの遥か手前で、立ち泳ぎをして息を整えます。。。
しかし、一向に息苦しさは収まらず、かと言ってずっと立ち泳ぎをしていても仕方ないので、平泳ぎに切り替えることにしました。
トライアスロンのスイムで平泳ぎをするのは初めてのことです。屈辱感で一杯に。。。
平泳ぎをしてしばらくすると、胸の奥からゲップが出てきました。
ゲップが出たのは、珠洲のときと全く同じです。
そして、やや息苦しさが収まったような気がしたので、再びクロールに切り替えて、200mのブイを頑張って目指します。
しかし苦しい。。。
ブイを回って次のブイを目指しているうち、自分は集団の最後尾に取り残されていることを認識しました。
ドラフティングをしようにも周囲にもう誰一人いません。
そして。。。後方からは、先にスタートしたエリート集団が猛烈な勢いで迫ってきました!
。。。こんなはずじゃなかった。。。
落胆すると弱気になってしまい、ひょっとしてこのままスイムでDNFになってしまうのではという考えが頭をよぎりました。
絶望的な気分で、しかし、2つ目のブイを目指して泳ぎます。たった200mが気の遠くなるほどに感じました。
2つ目のブイを回って、あと200m泳ぐと、1周回で陸に上がれます。
陸を目指して泳いでいるうちに、再び大きなゲップが。。。しかしこれで相当ラクになりました!
今更ですが、ようやくいつものプールのときのように、フォームをしっかり維持してリズムを保って泳げるようになりました!
陸に上がってタイムを確認します。確か25分くらい経過していたと思います。
カットオフの1時間は問題ないですが、それだけバイクやランの時間が厳しくなってしまいます。。。
再び沖のブイを目指して2周目を泳ぎ出します。
もう大丈夫、息も上がらず、リズムでゆっくりと着実に泳ぎます。決して無理せず。。。
2周回目は本当に一人旅でした。
スイムはいつも遅いのですが、ここまで集団より遅れたは初めてのことです。
2周回を終えて陸に上がったときに後ろを確認しましたが、選手の姿は全く認められませんでした。。。
5. バイク(25km、3時間33分09秒)
Garminのスタートを失敗した上に、ラップを押すのも忘れてしまい、記録は早くもメチャクチャに。。。時計で時刻だけ確認することにしました。そして、トランジションで急いでウェットスーツを脱ぎます。
今回は、ふくらはぎのコンプレッション(CompreSports)をウェットの下に付けていたのが幸いして、ウェットスーツは簡単に脱ぐことができラッキーでした。
そして、バイクのセットをして、ほとんどバイクの残っていないトランジョションエリアを出て、いよいよMTBコースに向かいました。
トランジションに要した時間は5分くらいだと思います。
バイクコースは、最初は丸沼湖畔の崖沿いを走るコースです。
以下に2011年開催のエクステラジャパン丸沼のバイクコースの写真をFacebookサイトから引用します。
上の写真のとおり、コースの多くの部分は原生林のなかのシングルトラックでした。
とにかく、無理をして怪我をすることだけは避けようと、できれば、転倒・落車をせずにバイクコースを終えたいと考えていました。
ところが。。。
スタートして5分もたたないうちに派手に転倒!!
ガクンと下った先に丸太のある個所を、何とかなるだろうと無理矢理突っ込んだところ、丸太に前輪が見事にハマって、ジャックナイフのごとく、身体ごと前に吹っ飛ばされてしまいました。。。
幸い、打撲や大きな痛みはなく、気を取り直して再びバイクにまたがりました。
転倒しないでコースを終える計画が、あっという間にご破算に。。。
意外にも、普段の練習で転倒慣れしたせいか、動揺せずに落ち着いていられます!
しかし、さらに数分後に、またしても派手に転倒!!
今度は、湖畔沿いの崖の上りを無理して通過しようとして失速、ビンディングを外すのに失敗して、バイクごと湖畔の谷底に滑落してしまいました。
「Xterra Japan 丸沼を盛り上げる会」より
幸い、転倒した個所は草木が茂っていてソフトランディング、身体は木の幹で谷の途中で止まりましたが、バイクはかなり下のほうまで滑落してしまいました。。。
幸運だったのは、たまたまその転倒場所に、ライフガードのスタッフの方がいて、バイクを谷底から引き揚げてくれるのを手伝ってくれました。
「怪我はないですか?」
「はい大丈夫です」
二人がかりで何とかMTBバイクをコースまで引き揚げました。
1度ならずとも2度まで、しかもコースの序盤で。。。先が思いやられます。
しかも、転倒の衝撃で、バイクに装着したもう一つのGarminも表示がおかしくなってしまい、腕時計のGarminと2台とも使い物にならないという厳しい状況に。。。
さすがに、湖畔まで滑落して湖に落ちてしまうと大変なことになるので、以降は、無理をせずに、少しでも不安な場所はバイクを降りて押すことにしました。
湖畔沿いのコースはシングルトラックで、道も湖畔に向かって傾いているので、そこをバイクを降りて押すのも苦労しました。
おまけに、木の根や切り株、大きな岩などが容赦なくコースを塞いでいるので、MTBを担いだり、ほんの少しバイクに乗れたと思ったらすぐにまた降りなければならないといったことを延々と繰り返さなければなりません。
以下は、丸沼湖畔のシングルトラック(大尻沼近辺)を走るトップクラス選手の貴重な映像です。
情報提供:Xterra Japanを盛り上げる会
トップクラスの選手でさえ押し走りしなければならない状況が良くわかると思います。
私のMTBのFathom1はドロッパーシートポストという非常に便利な機能が付いていて、サドルの高さを手元で調整することができます。
そこで、MTBを降りる場所では、その直前にドロッパーシートポストでサドルを一番低い位置にしてから降りると、次に乗るときに脚を高く上げずに乗れ、乗った後に、手元のボタンでサドルを高く上げることができ、非常に効果的でした。
やがて、エリートの選手の2周目がやってきて、そのたびに道を譲ります。
は、はやい。。。
台湾の選手だったか、下りのコースを凄まじい勢いで降りてゆく様を見て、MTBのテクニックの違いをまざまざと見せつけられた思いでした。
急峻な上り坂で、バイクを押していた時に、バイクシューズが脱げてしまい、バランスを崩してMTBが坂の下に落ちてしまったこともあります。
そして。。私は3度目の派手な転倒をしてしまいました。
どこでどうやって転倒したのか記憶にありません。。。記憶にあるのは、前半(それもジープロードに入る前に)だけで3度派手に転倒したということと、右腕の肘を打って出血、ずっと痛かったということだけです。
バイクスタートから3.6kmほどの場所にエイドがありました。
水と梅干を摂取します。
ここからはジープロードでダラダラと長い上り坂が5kmくらい続き、300mくらい上ります。
MTBバイク高低図
バイクを押して歩くのに疲れ果てていたので、上り坂だろうが、バイクに乗って前に進めるのは非常に嬉しく感じました。
ここはMTBの練習でやったように、無理せず、スピードは上げずにしっかりと軽いギアで着実に進みます。
この時点では、MTBで脚を使い切ってしまうと最後のトレランで大変なので、脚は温存しておこう、と考えていました。後でそんな余裕は全くなくなるのですが。。。
同じくらいのスピードの選手と抜きつ抜かれつ。。。この時点では、ジョークを言い合うなど、まだ和やかな雰囲気でやっていました。
途中、山間部の絶景ポイントや、丸沼が一望できるような素晴らしい景観がチラッと見えますが、立ち止まっている余裕はありません。
途中、ジープロードをヘビがニョロニョロと横切りました。ギリギリで踏まなかったと思いますが、ヘビもビックリ、私もビックリでした。大自然ですね。。。
私は、今回のMTBのサドル設定を、いつもより高めにしていたのですが、緩やかな上りが長く続くと、もう少しサドルを高くすればよかったと思うようになり、2周目ではサドルの位置を高めに調整しようと考えました。
5kmほどダラダラとした上りが続き、その後、コースは右に折れて森林のなかに、いきなりとんでもない下りに入ります。
生身の人間がここをMTBで下るのは正気の沙汰ではない。。。と思うほど、激烈な下りです。
バイクに乗るのは不可能なので、降りて両手でブレーキをかけながら降りるのですが、足元も不安定で、下手をするとMTBと身体が別々に斜面をずるずると落ちて行ってしまうような、そんなコースが長々と続きます。
慎重に、時間をかけて下ります、というかMTBと一緒に滑り落ちます。
そして。。。ようやく下りが終わり、ここで1周回(右)と2周回(左)で分かれる場所に出ました。
そこでコース案内をしてくれたボランティアに、見慣れた顔を発見!
以前スイムの練習会で一緒だったTさんです!
頑張って!とエールをもらい、元気が出てきました。やはり、知り合いがいると心強い限りです。
そして、コースは2周回目、再び丸沼湖畔の崖沿いを進みます。
さすがに1周回目で転倒した場所はバイクを押して、同じ失敗を繰り返さないようにします。
湖畔沿いは危ないのでリスクを冒さないよう進みますが、なんとなく、このままではカットオフに間に合わないのではと心配になってきました。
湖畔沿いを過ぎて、ダートの個所では、勇気を出してMTBに乗って走る機会を増やしました。
こうしてレースに出ている最中に、MTBのコツが少しずつわかってきたような気がして、それは楽しかったです。
ブレーキのかけ方は、前輪を控えめにして後輪中心でコントロールすること、後輪が障害物などに当たってドリフトしてしまっても、慌てずに、スピードを落とさずに突っ込んでゆく方がむしろ車体が安定する、などなど。
そして、再びエイドに到着。時間がないので最低限の水だけ摂取して先を急ぎます。
2周回目も、再びキコキコと上り坂を延々と進みます。
時速は5kmから8kmくらい、歩くのとそれほど変わらないほどの遅さです。
今度は、サドルを1周回目より高くセットしたので、より快適に漕ぐことができて、大正解でした。
途中まで後ろをついていた女性ライダーの方にお礼を告げて、お互い頑張りましょう、と励まし合って、先を行かせてもらいました。
実は、この時点で、かなり時間的にはマズイことになっていました。
例えバイクのカットオフの15:35に間に合ったとしても、その後のトレランがまたとんでもない難コースという評判だったので、カットオフギリギリでは完走は無理だとわかっていたからです。
キコキコと上るペースを早めて、上り坂が緩やかな個所は、頑張ってガチ踏みして力走します。
ハアハアと息苦しいですが、頑張るしかありません。
2周回目は、1周回目より、上り坂のエンドに辿り着くのがしんどかったです。
そして。。。再びあの有り得ない下り坂を進みますが、1周回目と違い、周囲にはもはや選手がいません。私一人だけの世界。。。
下り坂を1周回目と同じペースでは、時間が無くなってしまうので、やや緩やかな下りは頑張ってMTBに乗って強引に進みました。
2周回目は道もなんとなく覚えているし、もうこれ以上MTBを押して歩き(走り)たくないという事情もありました。
段差や衝撃で、何度もサドルが一番下まで下がってしまい、どうやらストッパーが砂を噛んで効いていないようですが、構っている場合ではありません。
そして。。。無理して下りを走り続けた結果。。。
当然ながら派手に転倒。。。!!
覚えているだけでも今日4回目です。
下り坂の先に丸太の段差があるのを見落としました。
身体が左前に投げ出され、左肩からもんどり打って地面に叩きつけられました。
運良く、ぬかるみ気味の柔らかい土の個所だったので、大きなダメージは受けずに済みました。
転倒の衝撃でMTBのハンドルが左にズレてしまいましたが、まあ何とかなるレベルなので、直している時間もないのでそのまま行くことに。
そうこうしているうちに、気が付くと猛烈に腹が減っていることに気付きました。
このままではハンガーノックになってしまう。。。
本当は、折り返し地点まで頑張ろうと思いましたが、我慢できず、途中で休憩。
木にMTBを立てかけて、バッグからアンパン半分とホテルの饅頭を取り出して夢中で口にほおばります。
そして再びスタート、折り返し地点からは再び丸沼のイベント会場方面に向かいます。
空腹感は満たされたのですが、何故か力が出ません。補給が遅すぎたか。。。
ここから再び湖畔沿いを走るのか。。。無茶して落車でもしたらまた谷底まで落ちてしまうな、と思いましたが、とにかく時間がない!
しかも、脚に力が入らず、息も上がって相当に苦しいです。。。
情けないことに、リタイヤという考えがふつふつと浮かんできました。。。
そもそも、当初のカットオフ時間だったら、もうバイクで切られている時間だ。
自分はそもそもエクステラに出場できる資格がなかったのではないか?
ついに生涯初の耐久系レースDNFとなってしまう日が来てしまったか。。。(これまで出たのはせいぜい20レースくらいですが、DNFは一度もありません)
こうなると負の連鎖で、いよいよ考えが弱気になってしまい止まりません。。。
やがてコースは意外にもフラットになってきました。これはラッキー!
このフラットなコースが続くならひょっとして行けるんでは??
しかし時間はいよいよヤバくなってきて後がありません、追い詰められました。
湖畔沿いを無理にMTBに乗るのは何としても避けたかったのですが、もうそんな選択肢は自分には残されていない、こうなったら一か八かで激走するしかない!
そう思って、バイクにまたがって残りのルートはどうしても無理な場所以外は、ほとんど降りずにガチ踏みで突き進みました。
気合と魂で走ります!
転倒して谷底に落ちませんように。。。
息が上がり、意識は朦朧として、しかししっかり先を凝視していないといけない。
このレースで一番辛くて苦しい区間、いや、MTBを乗ってこんなに苦しい思いは初めて。
ここから先の区間は、もうほとんど記憶にないほど意識が飛んでしまい、どこをどうやって進んだか良く覚えていません。。。
とにかく、無我夢中で、バイクのトランジションに飛び込んで、オフィシャルの方に、
「ちゃんと線の前で降りてください!」
と注意されてハッと我に返る始末でした。
時計を見ると、バイククローズの10分前くらいだったと思います。
ランに残された時間は1時間40分くらい、果たして制限時間に間に合うのか??
最初はもうシューズを履き替える時間も惜しいとMTBシューズでトレランに出ようかとも思いましたが、思い止まって、トレランシューズに履き替えました(本当は靴下も変える予定でしたがそれは止めました)。
ここから地獄のトレランコースが始まります。。。
6. ラン(10km、1時間34分32秒)
バイクを降りてランに出たときは正直ラクになって助かったと思いました。というのは、ランコースの最初は、池沿いのガレ場を進むので、走りたくても到底走れるような場所ではないので、歩いて進めたからです。
(Xterra Japanのホームページより引用)
ようやく息が整いました。意識もしっかりしてきました。
バイクで酷使した脚はかなりパンパンで、左の太ももにズキっとくる違和感があり、ガレ場の岩を踏み外すとなんかヤバイ感じです。
やがてガレ場が終わり、ポンプ場?のような建物沿いにメチャクチャ狭いところを通るようなルートになっています。
フラフラな状態で通ると、数メートル下のコンクリートの歩道に落下しそうになります。
そこを通って、今度は激坂が始まります。
トラロープが垂らしてあり、それに掴まらないと、ドロドロの滑りやすい地面は簡単に転んでしまいます。
まるでハセツネのトレイルの登山口のような激坂が続きます。
トレイルランコース高低図
汗が顔からポタポタと滴り落ちます。。。ううう暑い。。
やがて激坂は、青色(か緑色だったか?)のプラスチックの階段状のものに変わり、延々と急峻な上りが続き、苦行そのもの。。。
意を決して休みを極力入れずに上り続けて、鉄塔の先にようやくスタッフのいる折り返し地点に辿り着きました。
よくもこんなコースを設計したものです。呆れます。。。
Garminの距離計が使えないので、何キロ走ったかまるでわかりません。
スタッフの方に確認すると、ここが中間地点(スタートから2.5km)ということで、ここからは有難いことにロードの下り坂になります。
ロードに出ていきなり下り坂ですが、トレランシューズの靴底にはびっしりと泥がこびり付いていて、いきなりコケそうに。
泥を道路脇でこすり落として、再びスタート。
ここまでオフロードをもう嫌というほど味わってきたので、ロードの下り坂は本当に嬉しい限り!
スピードを上げて先を行く選手を追い抜きます。
やがて。。。
道脇のスタッフの方がこっちへおいでと招いています。
最初はカメラマンかと思いましたが、そうではなくて、ここからロードの下りを脇道に入って、せせらぎの流れのなかを上ってくださいと。
あーーー
このままロードの下りを行かせてくれるわけではないんだ。
半ば観念してせせらぎの流れの中に脚を踏み入れ、泥にズボッとはまり、早速シューズが泥だらけ水浸しになります。
そして、上り坂は行けども行けども続いており、これでもかとワイルドなコースを進まされます。
倒木の下を這い潜ったり、グチャグチャのぬかるみに足を取られたり。。。
そして、ようやく折り返しで下りになったと思ったら、今度は清流のなかを進めと。
疲れも喉の渇きもピークに達していたので、ここで、清流の流れに手を差し入れて、グビグビと水を飲みました。
ついでに頭にも水をかけ、汗と泥だらけの顔も洗います。
これで生き返りました!
再び清流を下り、1本丸太を渡り(これは滑るのがこわかったので両手もついて慎重に渡りました)、そしてようやく先ほどの下りのロードに戻ってきました。
ここから折り返しまであと1kmです!
ロードを下ってゆくと、大会本部の前が見えてきました。
既にゴールして、荷物を片付けた選手がMTBに乗って坂を丸沼高原に向かって帰ってゆくのに出くわします。
「頑張れー!」
と声援をもらいます。
大会本部の沿道の声援が耳に届きます。
「頑張れー!絶対間に合うぞ!その調子だ!」
みんな声を張り上げて応援してくれます!小さな子供まで。。。
。。。みんな本当にありがとう!
しかし、笑顔で応える余裕があるわけもなく、再び折り返しで、エイドに立ち寄る余裕もなく、再びガレ場に向かって脚を進めます。
時計を確認すると、1周回で約45分。
同じペースでもう1周回すれば、制限時間には十分間に合うはず。
2周回目でペースが落ちたら、最後の1kmの下りでダッシュしよう。そう決めました。
そして、再びトラロープ、急な階段、折り返し、下りのロードと進みます。
2周回目も前と同じ場所の清流で給水。
そして。。。最後の最後で私は道に迷ってしまいました。。。!!
わけもわからずブッシュをかき分けて進むと、スタッフの人がここじゃないよ、もっと奥だよ!と教えてくれました。
奥に進むと、女性の選手が進んでいるのが見えました。さっきまで私の後ろを付いてきた選手です。
その選手の後ろについて、再び下りのロードに。時間ロスは最小限で済みました。
あと1km!
眼下から会場のアナウンスが聞こえてきます。
「さて、もうクローズまで時間がなくなってきました。。あと数名でしょうか。。。」
時計を確認します、まだあと数分は余裕があるはず。
クローズが17:00か17:05か良くわからなくなったので、目標を17:00に間に合うように後半はペースを上げることができました。
そして。。。遂にゴール!
手元のGarminは5時間48分41秒を表示しています(その後の正式記録では、5時間49分2秒でした)。
こうして長い長いエクステラの1日が終わりました。
7. エクステラを終えて
ゴール直後は、完走した嬉しさというより、終始追い詰められた状況からの解放感が圧倒し、とにかくホッとしました。
不思議と身体の疲れはほとんど感じず、それよりも精神的な疲れに圧倒されてしまい、Garminの時計を落としたり、スマホを一時紛失してしまったりと、頭が働かずに散々な状態でした。
スイムをほぼビリで上がって、バイクで何度となく転倒を繰り返し、カットオフタイムの延長がなかったらまったく完走には程遠いタイムで終わったということもあり、今の心境は複雑です。
5月にMTBのトレーニングを始めて、たった4か月の練習期間では、全く歯が立ちませんでした。
いやもしかしたら、練習で数知れず転倒したことで、ケガしないで転倒するテクニック?だけは身に付いていたのかもしれません。
それとも、私は生まれつき身体が頑丈にできているのでしょうか??これまでの人生で一度も骨折したことはありません。
レースの最中にMTBのコツが掴めてきたのは嬉しかったですが、先月の珠洲のようにアドレナリンが全開になるような歓喜を感じるような余裕はありませんでした。
ラッキーだったのは、腰痛や脚の痙攣といったトラブルに見舞われなかったことと、あれほど転倒しても、大きな怪我もせずに済んだということです。
エクステラが激烈なレースだったことは間違いありません。
こんな非日常を体験できる機会は滅多にないでしょう。
誤解を恐れずに言えば、完走を目指すという点では、エクステラジャパンは通常のショートトライアスロンとは別の過酷度だと思います。
大自然のなかでのワイルドなレースは、都会で暮らす身としては、自然の素晴らしさと過酷さを同時に味わうことができる貴重な機会でした。
エクステラナイト
エクステラナイトにレースの結果速報が張り出されていました。
結果速報
エントリー188名に対して出走者158名、制限時間内完走者は127名、完走率は65.5%(対出走者比)という低さでした。
私は都合でエクステラナイトには参加できず、レースの後に自家用車で東京に戻りました。
完走メダル
レースが終わって東京に戻った今、冷静に振り返ると、エクステラはつくづくクレイジーなスポーツだったとしみじみ感じます。
また、こんなクレイジーな大会に喜んで参加してくる選手たちも本当にとんでもないクレイジーな人たちばかりで、大会中の会場を包みこむエネルギーと熱狂度はスゴイものがありました。
エクステラジャパンを復活させてくれた大会関係者の方々には、こんなレースを経験させてもらって心からの感謝(と、よくもこんなタフなコースを設定してくれたなという恨み?笑)で一杯です。
また、Lumina企画の3回の練習会にも参加することができ、懇切丁寧に教えていただいた竹谷コーチほか関係者の皆様にも心から感謝です。
来年も再び挑戦するかどうか。。。いやいやそんなことは今は全く考えられません。
しばらくはMTBは物置にしまい込んで、平穏な生活を送りたいと思います。
(2019/09/16 追記)
レース直後、疲労が溜まっているはずなのですが、不思議と眠くならず、5時間運転して夜中に東京に戻り、そのままこのブログを朝の5時に書き上げました。
それから眠ろうとしたのですが、MTBの下り坂でブレーキをかけて転ぶシーンの夢ばかり見てしまい、そのたびに脚に力が入って起きてしまいます。完全なトラウマ状態ですね。。。
レース直後は気付かなかったのですが、帰宅して翌日になったら、身体のあちこちが傷だらけで、太ももは大きなアザが2か所、内出血していました。どこでぶつけたのか覚えていません。。。
(2019/09/17 追記)
正式リザルトが発表されました。
総合タイム:5時間49分2秒
完走127名中122位(出走159名、完走率76%)ビリから6番目 (^^);;
ちなみに優勝タイム(エリートクラス)は、なんと2時間41分54秒‼
(2019/09/18 追記)
Garminのメチャクチャになった記録から何とかランのデータを復活させることができました。
時間:1時間34分32秒
獲得標高:300m
平均速度:14分53秒/km
距離が6.35kmとなっているのはちょっと不思議です。。。実際のコースは10kmよりも短かったのかもしれません。
エクステラ費用まとめ
エントリー費(早割) 22,550円 (Xterra Japan Challenge 36,600円に含まれる)
宿泊(環湖荘) 12,030円- AMEXキャンペーン20%還元 = 9.624円
高速料金(練馬ー大沼往復) 5,660円
(2019/09/30 追記)
Xterra Japanのオフィシャルビデオが公開されました。
大会当日の熱気が見事に伝わってくる素晴らしい映像です。
また、10月にハワイのマウイ島で開催されるXterra World Championship 2019のプロモーションビデオも公開されました。
Xterra World Championshipは、世界各地のXterraの成績優秀者だけが参加できる、文字通り世界一を決めるハイレベルな大会です。Xterra Japan 2019でもエイジ別のスロットを獲得した選手がたくさん参加すると思います。
この素晴らしい完走記を読んで、先日の興奮が蘇ってきました!
返信削除私も今回エクステラ初出場で、本文の「バイクで崖から落ちてレスキューに助けてもらった」でピンときました、レース後温泉で談笑した者です!お互い泥だらけ傷だらけで完走をたたえ合いましたね(^_^;)私もスイムは普段以上に苦しく、溺れないようにいつもの倍息継ぎをして泳ぎ切りましたが、空気が薄いせいだったんですね、納得しました!
ちなみに私の場合はフルマラソンやトライアスロン以上に”大地に翻弄される楽しさ”を満喫できて、北海道からただ一人参加した甲斐がありました!
あ!あの温泉で隣だった方ですね!そのときはトライウェアのまま泥だらけの恰好で失礼しました。。。ゴール直後に本能的に温泉にダッシュしてました(笑)。
削除私も北海道の自然が大好きで、毎年のように家族旅行で訪れるのですが、今回の丸沼は人生初めて "過剰自然摂取" 症状となってしまいました!
ヤバいことに辛い記憶だけが薄れてしまい、このままでは来年も喜んでエントリーしてしまいそうですが、また機会がありましたらぜひよろしくお願いします。