【エマーソン・レイク・アンド・パーマーの『庶民のファンファーレ』】MIDI再生に合わせて電子ピアノでソロを弾く

エマーソン・レイク・アンド・パーマーの往年の名曲『庶民のファンファーレ』

個人的には、ロックバンドのインストゥルメンタル曲として史上最高傑作と惚れ込んで、そのキーボード演奏を、バンドに合わせて弾くのは、ずーーっと学生時代からの夢でした。

EL&Pの『庶民のファンファーレ』(YouTubeより)

いつかは、シンセサイザーを購入して、ドラムとベースの仲間を募ってバンドを結成し、実際に演奏してみたいと思っていました。

それが、なんと、手持ちの電子ピアノとインターネットからのダウンロードで、いとも簡単に実現してしまうとは。。。

バンド仲間と一緒にプレイする楽しさには及びませんが、それに近い体験が手軽にできてしまうことがわかりました(キーボードソロの練習にも最適)。

私と同じコアなプログレファンの皆さん、これは事件ですよ!(それとも私が知らなかっただけ?)

1. 庶民のファンファーレ

エマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)は、1970年代に活躍したイギリスのプログレッシブ・ロックのグループです。

プログレッシブ・ロックとは、1970年代に一世を風靡したロックのジャンルであり、従来のロックにジャズやクラシックの要素を取り入れた先進的(プログレッシブ)で高度な音楽性が特徴のジャンルです。

メンバーは、キース・エマーソン(Kb)、グレッグ・レイク(Bs)、カール・パーマー(Ds)の3人。なんとロックグループなのにギタリストがいません。

キーボードのキース・エマーソンは、超絶的なテクニックと、クラシックやジャズをベースとした高度な音楽性を併せ持った稀有なスーパースターでした。

キース・エマーソン(Wikiより)

Surka - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8345595による

『庶民のファンファーレ』は、そのEL&Pの7作目の2枚組アルバム「四部作」(1977年)に収録されている曲です。

20世紀アメリカを代表する作曲家コープランドの「市民のためのファンファーレ」をベースに、ロックンロールとブルースで現代風にアレンジしたインストゥルメンタル曲で、ノリノリのロックンロール大曲です。

EL&Pの『庶民のファンファーレ』

アルバム「四部作」は商業的には失敗しましたが、そこに収録されたこの『庶民のファンファーレ』や、『ピアノ協奏曲第一番』などは、オリジナリティという点では、過去にも先にも類を見ないほどの世紀の名曲だったと思います。

曲はプログレの曲らしく9分近くと長いのですが、これでもかというほど畳み掛ける展開は圧倒的です。

4ビートのドラムとベースが延々と続く中、キース・エマーソンがYAMAHAのシンセサイザGX-1(当時700万円の超高級シンセサイザ)を駆使してプレイするのですが、それがメチャメチャにカッコいい!!!

当時のシンセサイザーはアナログシンセサイザーといって、現在のデジタルシンセサイザーとは仕組みが違い、アナログ回路を用いて音声合成を行うもので、構造も複雑でした。

EL&Pの『庶民のファンファーレ』は、今でもテレビ放送されるさまざまなスポーツ・イベントでもかかることが多いので、耳にした人も多いのではないでしょうか。

私は学生時代にこの曲と出会い、いつの日か、キーボードとドラムス、ベースの3人だけのバンドを結成して、生でこの曲を演奏したいという夢を抱いていました。

2. シンセサイザについて

『庶民のファンファーレ』の冒頭の主題テーマ(とその変奏)は、シンセサイザの多重音機能を駆使して、オーケストラのような重厚な音で構築されています。

この部分は、シンセサイザとDTMを使って打ち込みで制作するしかなさそうだと思っていました。

一方、中盤から終盤までのキーボードのソロは、基本的に単音が中心となるので、比較的容易に演奏できそうです。

私は、固定観念から、この曲を演奏するには73鍵の高価なシンセサイザーが必要だと思い込んでいたのですが、ふとひょんなことから、手元にある電子ピアノでもソロパートなら十分に弾けることがわかったのです。

現在市販されているデジタルシンセサイザーの大きな特徴は、スプリット機能とレイヤー機能です。

スプリット機能とは、鍵盤によって音色を分ける機能、レイヤー機能とは、音色をいくつも重ねたりできる機能を指します。

DTMを使った打ち込みは、シーケンサ機能と呼ばれています。シンセサイザー1台でドラム、ピアノ、ベース、メロディフレーズなどをどんどん演奏したり、打ち込んだりして録音していける機能のことです。

『庶民のファンファーレ』を弾くにあたって、当初、私はこのシーケンサ機能を使って、予めドラムとベースのパートを打ち込んでおく必要があると考えていました。

アナログシンセサイザについては、こちらの購入ガイドを読んでも、その機能は実に豊富で、予備知識がなければ全く理解不能の世界です。

シンセサイザを購入する準備として、「これからバンドでキーボードを担当する方へ!入門・初心者向けシンセサイザー選び方ガイド!」というサイトに紹介されている製品を比較検討したのですが、非常に敷居が高く、なかなか踏み出せずにいました。。。

3. MIDIファイルの入手

MIDI(Musical Instruments Digital Interface)とは、電子楽器の演奏データをパソコンや電子楽器などの機器間で転送・共有するための共通規格です。

もう30年以上も前、Windowsパソコンが普及する以前に制定された規格ですが、現在でも一番普及している極めて汎用性の高いフォーマットです。

『庶民のファンファーレ』のMIDIファイルがインターネットで無料でダウンロード入手できることを知ったのは、つい最近のことでした。

ネットで "elp fanfare for the common man midi file"で検索すればいくつかのバージョンが見つかります。私はそのなかで、freemidi.orgのmidiファイルをダウンロードしてパソコンで再生してみました。

実は以前のWindowsはMIDIファイルの再生をサポートしていたのですが、最新のWindows10ではその機能は削除されてしまったので、再生プラグインを別途インストールする必要があります。

私が利用したのは、kbMediaPlayerというフリーソフトを音源プラグインと一緒にインストールする方法です(詳細はこちらのサイトを参考)。

kbMediaPlayerは、2017年の更新で「VSTiプラグイン」を使用したMIDI再生が可能となったそうです。これは有難い!

拙宅の環境はWindows10の64bitですが、32bitのほうで試しましたが問題ありませんでした。

インストールの詳細は上記リンクを参照していただければわかると思いますが、まず、KbMediaPlayerは、窓の杜のこちらのリンクよりダウンロードしてインストールし、さらにヤマハが提供している無料のXG音源付属ミッドラジオプレーヤをこちらのリンクよりダウンロードして、あとはプラグインを有効化させます。

KbMediaPlayer

無事にインストール環境が整ったら早速、『庶民のファンファーレ』のMIDIファイルを選択して再生させると、見事にちゃんとXG音源で立派に再生してくれました!!

『庶民のファンファーレ』のMIDIファイル

以下のYouTubeは楽譜の代わりに鍵盤を弾くポジションを全て曲に合わせて表示してくれるまさに至れり尽くせりの動画です。

Fanfare For The Common Man Emerson, LAKE & Palmer
INTRUMENTAL BASI MIDI DEMO SOUNDFONTS

パソコンで『庶民のファンファーレ』のMIDIファイルが再生できることを確認したので、それならば、手元の電子ピアノでも鳴らせるのでは?と考えました。

ちょうど、手元の電子ピアノは、昨年の暮れに新しいモデルにリプレースをしたばかり。

1996年の大昔に購入したYAMAHAのCLP-411というクラビノーバをジモティーに出品して手放し、友人の紹介で2007年発売のRolandのHP205という電子ピアノを譲ってもらったのです。

YAMAHAのCLP-411

CLP-411はMIDI端子はかろうじて付いているものの、パソコンとの親和性はなく、プリセットされている音色も限られていました。

RolandのHP205

HP205のほうは、MIDI端子だけでなく、USB端子からのMIDIファイル再生にも対応しており、プリセットの音色も300種類以上と豊富に揃っています。

注意:USBメモリーのファイルシステムはNTFSではなく、一般的なFAT32にしておく必要があります。

【USB メモリーの曲を再生する】
  1. [内蔵曲/外部メモリー]ボタンを押します。本体メモリーは、あらかじめ聴きたい曲が本体メモリーに保存されているときにのみ選ぶことができます。USB メモリー(別売)の曲を選ぶには、聴きたい曲の入ったUSB メモリーを外部メモリー端子に接続してから曲ボタンを押します(21 ページ)。
  2. [-][+]ボタンを押して、曲を選びます。内蔵曲または本体メモリーの曲が選ばれているときは「内蔵曲」ランプ、USB メモリーの曲が選ばれているときは「外部メモリー」ランプが点灯します。外部メモリーのオーディオ・ファイル(42 ページ)や音楽CD を再生することができます。
  3. 再生する[ ]ボタンを押します。曲の再生が始まります。選んだ曲が最後まで演奏されると、再生は止まります。途中で再生を止めるときは、もう一度[ ]ボタンを押します。次に[ ]ボタンを押したときは、再生を止めたところから再生されます。
このHP205に、ネットからダウンロードした『庶民のファンファーレ』のMIDIファイルを保存したUSBメモリを挿入して、そこからファイル再生をしてみると。。。

見事に電子ピアノで『庶民のファンファーレ』のMIDIファイルが再生されました!!

EL&Pのオリジナル曲に非常に近いレベルです。

こうなると次にやるべき事が見えてきました。。。そうです、このMIDIファイルを利用して、キーボードのパートだけDTMソフトで消去して、いわゆる「カラオケバージョン」のMIDIファイルを作成して、電子ピアノでファイル再生させながら、ソロの部分を弾けば良いのです!

4. MIDIファイルの編集

MIDIファイルの編集ソフトには、「世界樹」というフリーソフトを使いました(ダウンロードはこちら)。

MIDIシーケンサー・MIDI編集ソフト「世界樹」

編集にはちょっとコツが必要で、自分がソロで弾きたいパートを消去すると、自動的に時間軸がズレてしまうなど、直感的な操作と異なるので注意が必要です(これはほとんどすべてのDTMシーケンサソフトに共通することですが)。

こうして自分が弾くソロのバートを削除したMIDIファイルを再びUSBメモリに保存して、Rolandの電子ピアノで再生してみました。

すると。。。

なぜか、演奏スピードが倍に速くなってしまうというトラブルが発生。。。

元の編集のやり方がまずかったのでしょうが、原因がわからないので、とりあえず応急対処として、再生側の演奏テンポを半減させて、通常のスピードで再生するようにしました。

【テンポの変え方】
  1. [テンポ/拍子]ボタンを押して、「テンポ」のランプを点灯させます。
  2. [-][+]ボタンを押して、テンポを変えます。
こんな芸当があっさりできてしまうのも、電子ピアノならではですね。

そして、ようやく、カラオケ版の『庶民のファンファーレ』のMIDIファイルが完成しました!

5. 『庶民のファンファーレ』の楽譜

最後に必要なものは、『庶民のファンファーレ』の楽譜です。

こちらも、以前に市販品を探したのですが見つからなかった記憶があり、これは自分で聴き取り作成するしかないか、と覚悟していたところ、ネットで検索すると、あっさりと無料版が見つかりました。

こちらもMIDIファイルと同様、いくつかのバージョンがありますが、私が使ったのはmusicnoteslib.comの61ページのスコアです(ダウンロードはこちら)。
Emerson_Lake_And_Palmer-Fanfare_For_The_Common_Man.pdf

このスコアは無料なのですが、キーボードのパートだけ抜き出して解読するのは少しややこしい構成になっており、特に後半のソロパートの部分はどうやら割愛されているようです。

他にも有料サイト(たとえばこちら)にもスコアはあるので、機会があれば比較してみたいと思います。

それでも何とか、楽譜も揃えることができました。

6. MIDIの再生に合わせてソロを弾く!

これでいよいよ、MIDIのバンド演奏に合わせてソロを弾く準備が整いました!

RolandのHP205には、シンセサイザのスプリット機能が付いているので、両手で弾く場合にも別々の音色で分けて同時に弾くことが可能です。

【スプリット演奏】
  1. [ピアノ]ボタンを押します。ピアノの音色が選ばれます。
  2. [スプリット]ボタンを押して、ボタンを点灯させます。鍵盤が左側と右側に分かれます。F 3 の鍵を境に、鍵盤が左側と右側に分かれます。鍵盤右側ではピアノの音色(鍵盤が分かれる前に鳴っていた音色)が鳴り、左側では「A. ベース+シンバル」(アコースティック・ベース+ シンバル)が鳴ります。
このスプリット機能を利用して、右手と左手で違う音色を設定します。

いろいろと試行錯誤した結果、プリセットされている音色のなかで、

右手のメロディー:65番の「パフ・オルガン」
左手のリズム:107番の「シンセ・ベース4」

の音が一番似ているので、この音を選択します。

【いろいろな音で演奏する】
  1. 音色ボタンを押して、音色グループを選びます。選んだ音色グループの音色番号1 の音色が鳴ります。鍵盤を弾いてみましょう。ディスプレイには、現在選ばれている音色の番号が表示されます。
  2. [-][+]ボタンを押して、音色グループの中から音色のバリエーションを選びます。鍵盤を弾くと、選んだ音色が鳴ります。次にこの音色ボタンを選んだときは、ここで選んだ音色バリエーションが鳴ります。
注:左手の音の設定は、スプリットボタンを押しながら[-][+]ボタンを押して、音色グループの中から選びます。

試してに弾いてみたところ、MIDIファイルの再生に対して、キーボードで弾いた音のレベルのバランスが合っておらず、これもボリューム調整が必要でした。

注:再生する曲の音量を変えるには、再生ボタンを押しながら[-][+]ボタンを押します。

そして、ようやく、なんとか当初の目的であった、『庶民のファンファーレ』バンド演奏に合わせて電子ピアノでソロを弾くことができるようになりました!!!

庶民のファンファーレ』

7. いつかは『庶民のファンファーレ』のバンド演奏を

あとは練習あるのみ。。。そして、いつの日か、昔からの夢であった

ドラムとベースの仲間を募ってバンドを結成し、『庶民のファンファーレ』を演奏する

を実現したいと思います。

以上、電子ピアノで『庶民のファンファーレ』】を弾く解説でした。

Wikiによると、キース・エマーソンの弾く当時のGX-1は、様々に改造されていたようです。以下引用します。

キース・エマーソン
1977年に発表したELP四部作のグループ演奏で使用されている。また、このアルバム収録曲のライブ演奏を主目的とした同年の「ワークス・ツアー」でも使用され、モントリオールのオリンピック・スタジアムのライブを収録したDVDビデオソフトで、GX-1を演奏している場面を見ることができる。

キース・エマーソンはかなり気に入って使用している。

彼は1990年代初頭までこの楽器を使っており、エマーソン・レイク・アンド・パウエルの映像や1992年の「ブラック・ムーン」のプロモーションビデオでも演奏している様子を確認できる。但し、彼は足鍵盤と椅子を除去してライブで使用している。当時のライブの写真を見ると、パネル左上の Electone のロゴの描かれている部分に何らかの改造をしたプッシュ・ボタンが数個埋め込まれているのがわかる。

インタビューによると、GX-1はチューニングが不安定なので、それを対策する改造をしているそうであるが、それらの改造によるプッシュ・ボタンなのかは不明である。その後、自己所有していた1台を自宅の納屋に置いていたところ、トラクターが突っ込んで納屋ごとGX-1が大破してしまい、使用不可能になってしまった。そこでもう1台をジョン・ポール・ジョーンズより購入している。

(引用おわり)

どうやらあの独特のサウンドは、キース・エマーソンがいろいろと工夫して造り上げたもののようで、電子ピアノのプリセットでは到底真似のできない奥深い響きなのです。

いつかバンド演奏ができる日に向けて、いずれはシンセサイザーを入手して、当時のサウンドに近い再現を追求してみたいと思います。 【究極のプログレッシブ・ロックアルバム名盤ベスト10】 ハイレゾディスクで聴くプログレッシブ・ロック(King Crimson, Pink Floyd, Yes, EL&P) [ショパン ピアノソナタ第3番を弾く] 練習奮闘記:第4楽章75小節までなんとか到達しました

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