先週のDolphonsとEaglesの試合(Week13)で、これまでに見たこともない非常に珍しいプレイコールがありました。
13対7で6点差を追うDolphinsが、第2クオーター残り4分44秒の4th and Goalの場面でした。
ボールスナップ直前
ボールはエンドゾーン直前の1ヤード地点にセットされています。
なんと、センターの周辺には通常いるはずのオフェンシブランが誰もおらず、ワイドレシーバー含めてすべて左右に分散しています。
ボールスナップを受けようとしているのは、クオーターバックではなくパンターのMatt Haackです。
オードリーのNFL倶楽部では、解説者は「ロンリーセンター」と呼んでいましたが、これは日本語の造語で、英語ではロンリーセンターという言葉はありません。
オードリーのNFL倶楽部
そして、スナップを受けたパンターが、そのまま左に流れてショベルパス、それをエンドゾーンでキッカーのJason Sandersがキャッチしてタッチダウンを決めたのです!
こんな奇妙なプレイコールは長年NFLを観てきて初めてです!
Dolphins CRAZY Goal-Line Fake Field Goal
何とも意表を突いた奇想天外なプレーコールですが、プロフットボールの世界では、このような奇策はまず成功することはないのですが、物の見事に決まりましたね。
おそらく、NFLの100年の歴史でも、パンターからキッカーへのTDパスは史上初ではないでしょうか??
。。。と思ったら、なんと1964年にもあったそうです(ESPNの記事より)。
The last time a team's leading punter and kicker combined on a passing touchdown was Dec. 6, 1964. The Chargers' John Hadl (who was the primary QB and punter) threw a TD to Keith Lincoln (who was a running back and kicker), according to Elias Sports.
4th and Goal ball on 1yardであれば、通常はフィールドゴールを狙ってフィールドゴールユニットが出てきます。
今回のプレーも、フィールドゴールユニットが出てきて、ボールをスナップする直前に、いきなりフォーメーションを変えたようで、相手のEaglesは意表を突かれた格好になりました。
その意味で、このプレーはFake Field Goalと呼ぶのが正しいと思います。
しかし、パンターが左に流れて、まさかのショベルパスでフリーで抜け出したキッカーにパスというのは、まさかまさかのプレーコールでした。
試合は結局31-37でホームのDolphinsが勝利しました。
Dolphinsはこれで3勝9敗、プレーオフ戦線からはすでに離脱しているのですが、敗退したEaglesは5勝7敗、NFC東地区でCowboysと負け越し同士で首位争いをしている(2位はワイルドカードは絶望)ので痛い一敗となりました。
Dolphinsは、近年NFLチームのなかではすっかり弱小チームに成り下がってしまいました。
80年代は、伝説のクオーターバックのダン・マリーノ擁するトップクラスのチームで、スーパーボウル出場もあったのですが、90年代に名監督のドン・シュラが引退してからは低迷が続いています。
ダン・マリーノ
私の記憶に残るのは、1994年シーズンのディビジョナル・プレイオフでの敗退、相手はチャージャーズでした。
試合残り時間あと数秒で、フィールドゴールを決めれば逆転勝利という場面で、センターのボールスナップが大きく上に逸れて、ホールダーが慌ててボールセットするも、キッカーのタイミングがずれてボールは大きく逸れてしまい、チャージャーズが奇跡の逃げ切り勝ちをしたゲームでした。
ほぼ負けが確定していた試合を拾い勝ちしたチャージャーズのQBスタン・ハンフリーズが、フィールドゴールが逸れて、子供のように踊り喜んでいたのが印象的でした。
。。と思って下のビデオ見ると、それは記憶違いで、ハンフリーズがはしゃいでいたのは、Steelersを破ってSuperBowl出場が決まった試合でしたかね(苦笑)。
その後、フランチャイズを代表するようなQBはここ20年くらい出てきていません。
Fiedler, Frerotte, Lemon, Pennington, Henne, Tannehill。。。記憶に残っているのはPennigtonくらいでしょうか。
しかし、Dolphinsは、2000年代に、Wild Catという新しいフォーメーションを導入して、NFLにWild Catブームを呼び起こしました。
今でこそ、Wild Catは研究し尽くされてほとんど有効性のないプレイコールになってしまいましたが、当時はWild CatはDolphinsの得意技でした。
Wild Catフォーメーションとは、センターからボールスナップを受けるのが、QBの横にラインナップしたRBや他のポジションの選手という、これも意表を突いたプレーコールでした。
王者PatriotsもこのWild Catにはずいぶん苦しめられましたね。
そういえば、昨シーズン(2018年)の第14週も、Dolphinsはこの年のスーパーボウル覇者のPatriots相手に大逆転劇を演じていましたね。
そのときも、ゲーム最後のプレーで、奇跡のTDで33-34で劇的サヨナラ勝利でした。
Dolphins Game Winning Miracle TD vs Patriots
このときは、第4クオーター残り7秒で自陣31ヤードからの1st and 10で、QBタネヒルが投げた短いパスをWRがキャッチ、その後ラテラルパスを何度も繋いで、サックされれば試合終了となるはずが、あれよあれよという間に69ヤードを走ってサヨナラTDをしてしまったのです!
ラテラル・パスによる逆転サヨナラ劇は史上初めてだったそうで、最終ラインにいた名プレーヤーのグロンカウスキーまでが脚がもつれて転んでしまったという誰もが想像もできない逆転劇でした。
このプレーも、偶然成功したわけではなく、Dolphinsは何度もキャンプ中から練習していたというから驚きです。
ひょっとして、Dolphinsがここ数年弱いのは、あまりに奇策ばかり練習しているからでは??
今シーズンのプレイオフが既に絶望的なDolphinsだからこそ、今回のような奇想天外なプレーを試みたのかもしれません。
この試合の勢いで来期には強いチームになって戻ってきてほしいと思います。
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