私はヤフオクで過去15年間で233のアイテムを出品してきたので、ヤフオクに出品して高値落札されるためのコツとかテクニックについては、ある程度理解しているつもりでしたが、この想定外の高値落札には喜ぶとともに、非常に驚きました。
当初はなぜそんな高値がついたのか謎でしたが、最近読んだ行動経済学の本に、そのヒントがありました。
以下に、高値落札の経緯と、ヤフオクで高値で売るために役立つ行動経済学の「プロスペクト理論」についてまとめてみました。
1. ヤフオク出品
先日ヤフオクに出品したのは、OPPOデジタルジャパン株式会社のユニバーサルBDプレーヤー「BDP-93 NuForce Edition」です。
BDP-93 NuForce Edition
型はさすがに古くなりましたが、BDプレーヤーとして定番の根強い人気があります。
これは一昨年にヤフオクでジャンク品を9,100円で落札したものです。
元の商品(ジャンク品)
ジャンク品ということで、リモコンなど付属品はなく、外箱がついているだけでしたが、幸いにも機器の動作は問題ありませんでした。
BDP-93は2011年に発売されたモデルで、当時の本体価格は95,000円(税抜)でした。現在は生産終了品となっており、後継機種のBDP-103が発売されたこともあり、市場価値は決して高いものではありません。
使用頻度も高くなかったため、ヤフオクに2020年の1月末に出品しました。
ヤフオク出品
出品時の商品説明は以下のとおりです。
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OPPOデジタルジャパン株式会社による音質/画質改善の特別バージョン品(NuForce Edition)です。
2018年10月にヤフオクで中古落札した商品です。
上部や裏面の端子部に使用感がありますが、フロント部は目立った傷はなく良品です。
ディスク再生含めて完動品です。
外箱、電源ケーブル、HDMIケーブルが付属します(リモコンは付属しません)。
他製品購入により不要となり出品します。
商品の詳細は以下をご参照ください。
http://www.fuhlen.jp/nuforce/highend/products/oppo_bdp_93.html
商品は手元にありますので、すぐに発送が可能です。
ノークレームノーリターンでお願い致します。
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開始価格は1円、オークション終了は6日後の日曜日午後11時36分、送料無料(出品者負担)と設定しました。
開始価格1円や、オークション終了を日曜日の夜に設定するのは、高値販売のためのヤフオクの定石でもあります。
送料無料とするのも、経験則上、こちらのほうが結果的には高値落札に繋がることが多いです。
ちなみにこの商品の送料は、ヤフネコ宅急便で全国一律価格で1100円(120サイズ)です。
ちなみに出品者の私の総合評価は250、出品における良い評価の割合は100%です。
OPPOのBDP-93は評価の高い製品ですが、この中古品は純正リモコンが欠落しており、また背面のHDMI入力端子部は下の写真のとおり傷だらけでした。
使用感のある背面
そういう訳で、購入価格の9,100円の値段がつけば御の字で、おそらく5,000~7,000円くらいで落札されるのが現実的ではという予想でした。
実際、オークション開始から5日後の土曜日の午後4時の時点では、現在価格は5,250円に留まっていました。
5,250円(1/25午後4時時点)
オークション終了まであと1日、このまま5,250円で落札されてしまうのか。。。
2. 学習リモコンの追加
オークション終了が翌日に迫った土曜日、ある事をひらめきました。「この商品市場価値が低いのは、リモコンが付属していないからに違いない。ならば市販の学習リモコンに、純正リモコンのコマンドを記憶させて付属品としたら、ひょっとして高値で売れるのでは?」
実は、私はそのとき同じ製品であるBDP-93をある事情でもう一台所有していたのです。なので、BDP-93の純正リモコンも手元にありました。
そして学習リモコンも、数年前に500円で買った激安汎用学習リモコン(UMA-PLRM01)の新品未開封品が家にあることを思い出しました。
純正リモコン(左)と学習リモコン(右)
早速、その学習リモコンに純正リモコンのコマンドを学習記憶させてみると、純正リモコンと同じように使えるようになりました。
そして、ヤフオクの編集機能を使って商品説明に以下の文章を追加投稿しました。
(2020年 1月 25日 15時 32分 追加)
【リモコン付属しました!】
純正リモコンではありませんが、学習機能付きリモコン(UMA-PLRM01)に純正リモコンの基本的な操作(電源、再生/停止/早送り/巻き戻し、十字キー、設定、戻る、ホームボタン、消音、カラーボタンなど)のキーを割り当てたものを無償で付属します。純正リモコンのすべてのコマンドが割り当てられていませんが、機器のほとんどの操作はこの学習リモコンで可能です。
ヤフオクのルールでは、一度出品した商品の商品説明の文章修正や削除はできませんが、文章を追記することは何度でも可能です。
そして、さらに、以下の文章を追加投稿しました。
(2020年 1月 25日 15時 36分 追加)
学習リモコンの詳細は追加の画像を参照ください。
(一緒に撮影した純正リモコンは、キーの配置の参考のためで、純正リモコンは付属しません)
(2020年 1月 25日 22時 59分 追加)
リモコンについて追記です。OPPOではiPhone/Android向けに "OPPO Remote Control " というリモコンアプリを無償提供しているので、純正リモコンがなくてもすべての操作が可能です(ネット接続は必須)。ご参考まで。
商品説明の追記をしたのが、出品から6日後の土曜日の夕方だったので、オークション終了まであと1日しか残っていませんでした。
その時点で、アクセス数は500を超えていたので、果たして、この追記に気が付いてくれる人がどの程度いるか、正直効果のほどは不明でした。
翌日の日曜日。。。
なんと、前日に5,250円で高止まりしていたのが、一気に26,000円まで高騰しているではないですか!!
入札価格はその後さらに上がり続け、ついに日曜日夜のオークション終了1時間前の22:30には33,000円まで値上がりしました!
そして、オークション終了の23:56分には、入札件数63件、最終落札価格は40,500円(元値の4倍)という驚くような高値が付きました!
2年前に9,100円で落札したジャンク品に、500円の学習リモコンを後付けで付属したら、4倍以上の40,500円で売れたことになります。
3. 高値落札の理由
ちなみに、同じ期間に出品されていた同機種の他商品は、落札価格は26,500円に留まっていました。
同機種の他商品は26,500円で落札
ヤフオクでbDP-93の過去120日間に落札された7商品を調べてみても、
26,500円
17,600円
21,070円
28,600円
25,500円
31,800円
20,500円
と、私の40,500円が如何に突出して高値落札されたのかがよくわかります。
過去に落札されたBDP-93一覧
純正リモコンについては、私の出品以外は、最初から付属品に含まれていました。純正リモコンが欠落していたので、学習リモコンを代替で付属させていたのは私の出品だけです。
これは一体どういうことでしょうか??
なぜ、純正リモコンが付属しておらず、中古使用感もあって条件が一番悪い私の出品が、突出して40,500円という高値で落札されたのでしょうか??
入札履歴をチェックしてみました。
入札履歴
履歴を見ると、35,500円までは3人が入札競争をしており、その後の40,000円までは自動入札で2人が高値更新していることがわかります。そして最後に手動入札で40,500円で落札されています。
また、入札者の順位も調べてみました。
入札者の順位
最後まで入札争いをしていた入札者は、評価がそれぞれ74、413とかなりのヤフオク歴を持つベテランであることがわかります。
つまり、ヤフオク初心者が入札競争に我を忘れて熱くなってしまい、必要以上の高値で落札してしまったわけでもないようです。
入札者や履歴に特段変わったことが見当たらないので、私の出品の方法に高値落札の鍵が隠されているようです。
今回の出品の条件は、
開始価格は1円
オークション終了日は、6日後の日曜日午後11時36分
送料無料(出品者負担)
注目のオークションの設定あり
とこれまでのセオリー通りに設定しました。
出品の画像
出品の画像は8枚。いつものようにそれなりに背景を整えてキレイに撮影しました。
全部これまで出品した200点あまりの商品と変わりはありません。。。
理由をいろいろ分析した結果、唯一考えられるのが、学習リモコンを付属品として商品説明に「追加投稿」したことでした。
しかしなぜ?
最近たまたま読んだ行動経済学の本に書いてあった「プロスペクト理論」に、そのヒントが隠されていました。
4. ヤフオク「追加投稿」の知られざる効果
既に書いた通り、この商品は、当初は付属品の純正リモコンが欠落していたのですが、オークション出品後に、「学習リモコン付属しました!」と追加投稿した後に、価格が高騰しました。それも、オークション終了の前日という、ギリギリのタイミングでの追加投稿でした。
おそらく、最初から純正リモコンが付属した条件で出品していたら、40,500円という高値落札には至らなかったと思います。
純正リモコンに機能的に劣る原価500円の学習リモコンを付属させたという「変化」によって、入札者の効用(満足度)が上がったのです。
行動経済学の「プロスペクト理論」とは、簡単に言ってしまうと、
効用(満足度)を決めるのは「変化」であって、「状態」(富の絶対量)ではない
という説です。
ペルヌーイの有名な「期待効用理論」、すなわち、心理的な価値(効用)は、金額が大きくなったからと言って必ずしもそれに比例して上がるものではない、という理論は長らく経済学の主流だったのですが、行動経済学の「プロスペクト理論」は、「期待効用理論」をさらに発展させ、人というものは、最終的な状態に対してではなく、変化に対してはるかに強く反応するという性質を明らかにしました。
以下のグラフが「プロスペクト理論」の参照点依存をわかりやすく説明しています。
プロスペクト理論の価値関数(「道産子北国の経済教室」より引用)
この場合、最初から80%オフで売られていた場合より、タイムセールでさらに50%オフ(つまり合計70%オフ)で売られた場合のほうが、(最初から2,000円で買うよりはるかに高い3,000円で買うにも関わらず)人の効用は高まり購入していまうということです。
何となく感覚では思い当たるのではないでしょうか?
ポイントは、上のグラフの参照点依存という「基準とする場所が常に変わる」ことです。
今回のヤフオクの出品に当てはめて考えてみます。
最初から純正のリモコンが付属している状態での商品よりも、最初は純正リモコンが付属していなかったところに、純正リモコンと同等の学習リモコンが付属することによって、純正リモコンがなくても問題なく操作できるという効用が生まれました。
最終的な状態(=購入した商品)は、純正リモコンが欠落しているにも関わらず、学習リモコンが付属することになったというタイムセール的なお得感に、入札者は反応したのではないでしょうか。
参照点依存が落札(予想)価格と置き換えて考えるとわかりやすいです。
本来であれば、落札(予想)価格がグラフの原点(商品の条件に適した妥当な落札価格)なのが、効用が高まる変化が発生すると、落札(予想)価格が高くなります。
以上はあくまでの私の仮説ですが、もしこれが正しいとすると、ヤフオクの「追加投稿」機能は、高値落札を実現するための知られざるテクニックではないでしょうか?
「追加投稿」がヤフオク高値落札の裏ワザであるという話があるのか、ネット検索で調べてみましたが、そのような記事や投稿は見当たりませんでした。
5. ヤフオク高値落札のための行動経済学
経済学は「人は合理的な行動をする」という前提のもとに、何百年にも渡って学問体系が積み上げられてきましたが、人間の選択は感情に左右され、とても合理的とは言えないことがあります。人間の心理学を経済学に統合した「行動経済学」は、今最も注目を浴びている学問分野の一つで、その「プロスペクト理論」は、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱しました。
ダニエル・カーネマン(クーリエジャポンより引用)
2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーも、「行動経済学」の長年の功績が評価されたものでした。
プロスペクト理論の概要については、以下のダニエル・カーネマンの文献がわかりやすくておススメです。
行動経済学をヤフオク高値落札に応用する方法を考えてみます。
1. ヤフオクに出品
付属品の欠品や、欠落品などを明記する(手元に揃っていたとしても)
2. 高値販売のためのヤフオクの基本ルールに従う
開始価格1円
オークション終了を日曜日の夜に設定
注目のオークションの設定
送料無料
画像はできるだけキレイに
3. オークション終了の1日前に、欠落品などが付属する旨を「追加投稿」する
入札者の「効用」を高める投稿内容に
追加投稿は太字で目立つように
追加投稿の回数は何度でもOK
こんな感じでしょうか。。。
以上、ヤフオク高値落札のための「追加投稿」の活用方法の紹介でしたが、「行動経済学」をしっかりと理解しているわけではないので、憶測を含んでいることを了承ください。
心理学を突き詰めると、オークションでの取引でより高く売ることができるのではないかと思います。オークションは奥が深いですね。
前回のヤフオク記事は⇓こちら⇓です
【ヤフオク出品履歴】高値落札からクレーム返品まで。。。記憶に残る10アイテム
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