Tripath TA2020 という伝説のチップを積んだ、中国製の3000円程度の小型デジタルアンプです。
数年前に購入したものの、ずっとお蔵入りしていたのですが、ふと思い立って、RasPiとI²S接続で繋げて再生してみたら、目が覚めるようなとんでもなく素晴らしい音で、まさに神オーディオ!
常時電源入れっぱなしで寝室のサブシステムとして使おうと思っていましたが、これならリビングのメインシステムでも十分通用するのでは。。。
Spotify Connectも使えるし、LepaiとRasPiさえあれば、重厚で高価なオーディオシステムがなくても、ハイファイオーディオの世界をもっと便利に楽しむことができます。
1. LepaiのLP-2020A+
ネットで「Lepai LP-2020A+」と検索すると、この中国製のポータブルデジタルアンプが如何に話題になったかがわかります。
Lepai LP-2020A+
発売は2012年ごろです。当時Amazonで2,500円くらいで販売されていました。
Lepai LP-2020A+というモデル名にあるとおり、オーデイオマニアには有名なTripath TA2020 というデジタルアンプ用のチップを搭載しています。
Tripath社 (Tripath Technology, inc) は、かつてカリフォルニア州に存在した半導体メーカーです。
以下Wikiからの引用です。
設立は1995年。1998年にはD級アンプの高効率を高音質と両立させたディジタル・アンプを「T級(class-T)」と名付けて発表、COMPUTEX TAIPEIにも製品を出展した。
1999年にはソニーと共同開発したディジタル・アンプが同社のデスクトップパソコン「VAIO PCV-MXシリーズ」に採用されたほか、2002年にはeMacにも同社のデジタルアンプTA2024が採用された。パソコン以外では、シャープやサムスンのフラットテレビにも採用された。
2000年にはIPOを行ったが、2005年にはNASDAQから上場廃止警告を受け、2007年2月に連邦倒産法第11章の手続きを申請、2008年4月にはSaaSプロバイダのEtelos, Inc.に逆さ合併で吸収された。一部の知的財産はシーラス・ロジックに売却された。
(引用おわり)
ちなみに、Tripath TA2020 というチップは、驚くことに、権威あるIEEEスペクトラムという電子情報学会誌の(2009年5月1日)の特別レポート”世界を揺るがした25個のマイクロチップ”の中の1つに取り上げられているのです!
Tripath TA2020
- シグネティックスNE555タイマー(1971)
- テキサス・インスツルメンツ TMC0281音声合成装置(1978)
- MOSテクノロジー 6502マイクロプロセッサー(1975)
- テキサス・インスツルメンツ TMS32010デジタル・シグナル・プロセッサ(1983)
- マイクロチップテクノロジー PIC 16C84マイクロコントローラ(1993)
- フェアチャイルドμA741オペアンプ(1968)
- Intersil ICL8038波形発生器(1983*のころ)
- ウェスターン・デジタルWD1402A UART (1971)
- Acorn Computers ARM1プロセッサー(1985)
- コダックKAF-1300イメージ・センサ(1986)
- IBM Deep Blue 2 チェス・チップ(1997)
- トランスメタ社クルーソー・プロセッサー(2000)
- テキサス・インスツルメンツ・デジタルMicromirror装置(1987)
- インテル8088マイクロプロセッサー(1979)
- Micronas半導体MAS3507 MP3デコーダー(1997)
- モステック MK4096 4-キロビットDRAM (1973)
- Xilinx XC2064 FPGA (1985)
- Zilog Z80マイクロプロセッサー(1976)
- サン・マイクロシステムズ SPARCプロセッサー(1987)
- トライパス TA2020 AudioAmplifier (1998)
- アマーティ通信序曲ADSLチップ・セット(1994)
- モトローラMC68000マイクロプロセッサー(1979)
- Chips & Technologies AT Chip Set (1985)
- コンピュータ・カウボーイズSh-Boomプロセッサー(1988)
- 東芝NAND型フラッシュメモリー(1989)⇒舛岡 富士
Tripath Technology TA2020オーディオアンプ(1998)
真空管ベースのアンプが最高のサウンドを生成し、常に実現すると主張するオーディオファンのサブセットがいます。そのため、シリコンバレーのTripath Technologyという会社によって作られたソリッドステートのクラスDアンプが、チューブアンプのように暖かく力強いサウンドを提供するとオーディオコミュニティの一部が主張したとき、それは大したことでした。
Tripathの秘は、50メガヘルツのサンプリングシステムを使用してアンプを駆動することでした。同社は、TA2020の性能が優れており、同等のソリッドステートアンプよりもはるかに低価格であることを誇っていました。展示会でチップを披露するために、「私たちはその歌を演奏します。タイタニックの非常にロマンチックな曲です」とトリパスの創立者であるアディア・トリパティは言います。
ほとんどのクラスDアンプと同様に、2020は電力効率が非常に優れていました。ヒートシンクは不要で、コンパクトなパッケージを使用できます。トライパスのローエンド、15ワットバージョンのTA2020は3ドルで販売され、ブームボックスやミニステレオで使用されました。他のバージョン(最も強力な出力は1000 Wでした)は、ホームシアター、ハイエンドオーディオシステム、およびソニー、シャープ、東芝などのテレビで使用されていました。
最終的に、大手半導体企業が追いつき、同様のチップを作成し、Tripathを忘却に追いやった。しかし、そのチップは熱心なカルトファンを育てました。 TA2020に基づくオーディオアンプキットと製品は、41 Hz Audio、Sure Electronics、Winsome Labsなどの企業から引き続き入手可能です。
製造メーカーが倒産しているため、Tripath TA2020チップは市場に流通しているだけで、現在入手困難です。
また、真偽の程は定かではありませんが、ウン百万円する高級オーディオセット(マッキントッシュ)とブラインドテストされた際に区別がつかなかったためTripath TA2020は一躍有名になったそうです。
TA2020のデジタルアンプとしての動作原理については、こちらのサイトが詳しいので一部引用します。
TA2020デジタルアンプは、入力の電源電圧信号を、パルス幅変調後、ローパスフィルターで復調する事により増幅特性を持たせています。信号が増幅素子の中を通らないため、音質劣化が少なく、低損失なので発熱もほとんどありません。
Tripath TA2020の後継チップである、TA2021やTA2021B、TA2024などは流通しているようですが、やはりTA2020の性能にはかないません。
LepaiのLP-2020A+も新製品は現在入手困難で、Amazonの出品も限られており、プレミアムが付いているようです(Lepaiに似たLepyという疑似メーカー製が出品されているようで注意が必要です)。
電圧・消費電流 DC10ー14.4V 2A
定格出力 20W×2RMS
スピーカーインピーダンス 4~8Ω
周波数応答 20Hz~20KHz
全高調波歪 <0.4%
信号雑音比 >80db
国内販売では、NFJストア (株式会社 ノースフラットジャパン)がカスタム版を販売していたようですが、こちらも現在在庫切れとなっているようです。
2. RasPiのI²S接続
RasPi (Raspberry Pi)のI²S接続の凄さに関しては、以前のブログにも書きましたが、USB DACとのUSB接続を介さないDAC出力のピュアオーディオの凄さは既に認知されているようです。I2Sの衝撃:Raspberry Pi2とVolumio/RuneAudioでI2Sを試してみました
以下ブログ記事から簡単に抜粋します。
サインスマートHIFI DACサウンドカードモジュール I2Sインタフェース Raspberry Pi B+, 2 Model B対応というものです。
サインスマートHIFI DACサウンドカードモジュール I2Sインタフェース
搭載されているDACチップはバーブラウン社のPCM5122です。32bit/384KHzをサポートするDACチップなのでスペック的には申し分ありません。基盤にはP1F1 DAC+ v2.0と刻印されています。
ドーターボードのようにピンヘッダを挿すだけです。もちろんジャンパーワイヤも不要。ボードも回路部品が干渉しないようにちゃんと設計されています。
Raspberry Pi2(左)とI2S DAC(右)
2つの基盤を繋げます
端子類はすべて全て前面に集結
電源に繋げたところ
Raspberry PiもDACも少し古いバージョンのものですが、スペック的に特に問題はありません。
3. LepaiとRasPiのシステム
2つの基盤を組み合わせたものを、LepaiのLP-2020A+デジタルアンプとアナログ接続します。
2つの基盤の組み合わせ
LepaiのLP-2020A+とアナログケーブルで接続
Raspberry PiをLAN接続して、あとは電源ケーブルとスピーカーケーブルを繋げば超小型のオーディオシステムの完成!
LepaiのデジタルアンプとRasPiのオーディオシステム
ケーブルや電源はこだわればきりがないので、ごく一般的なACケーブルと電源ラインを使っています。
この超小型オーディオシステムの最大の特徴は、常時電源を入れっぱなしでも電力消費も発熱も含めて全く問題ないことです。
RasPiは基盤剥き出しでは埃が溜まってしまうので、アクリルケースをAliExpressから取り寄せて装着しました。$3.85ナリ。。。
サイズもピッタリです!
アクリルケースを装着
寝室のサブシステムに導入しました。
LepaiとRasPiの再生システム
スピ-カーはモニターオーディオ社のBronzeといううブックシェルフ型のものです。
モニターオーディオのBronze
Volumioをインストールする方法については、以前のブログに書きました。
MPD音楽再生ソフトVolumioがバージョンアップで大幅進化!Volumio2をCubox-i1で試してみる
Raspberry PiもCuboxも基本的に同じ設定で問題ありませんが、今回はI²SのDACなので、出力デバイスはHiFiBerry DAC Plusとなります。
出力デバイスはHiFiBerry DAC Plus
MPD Client Volume ControlはON
これでシステムは完成です。
参考までに、このシステムの総費用(スピーカー除く)を計算してみました。
Lepai LP-2020A+デジタルアンプ: 2,580円
Raspberry Pi2: 6,000円
I²S対応DAC基盤: 4,250円
合計: 12,830円
1万円そこそこのシステムが、ハイエンドオーディオに匹敵するポテンシャルを発揮するというのは信じ難いことですね。
4. 究極のシンプルさ
完成したシステムは、常時電源を入れっぱなしなので、音楽を聴きたいときには、手元のスマホで楽曲を選択するだけです。聴きたい曲を決めたら、あとはスマホの画面で出力先をスマホ端末から、Volumioに切り替えるだけ、切替えは3秒くらい、すぐに音楽が流れ始まります。
これは感動的なほどの利便性です。
この究極の便利さに一度慣れてしまうと、もはやリモコンで機器の電源を入れるステップさえ無駄手間と思えるほどです。
スマホがWiFiに繋がっていれさえすれば、Bluetoothで繋がっている必要もないので、ペアリングが切れたりといった心配もありません。楽曲のソースはLAN経由でシステムにストリームされるので、スマホの電源を消費することもなければ、スマホのコントロールが音楽再生に支配されてしまうこともありません。
スマホで再生コントロール
極端な話、スマホで楽曲を選んだり音量をコントロールしながら、同じスマホでYouTubeを見たりすることもできてしまうのです。
これでCDクオリティの楽曲だけでなく、PCMであれば96kHz/24bitといったハイレゾの楽曲の再生も可能です。
TA2020とI²S接続の組み合わせという、ハイエンドオーディオクラスのテクノロジーを使っているので、音のクオリティは、廉価DACを積んだスマートスピーカーなどとは次元が違います。
自宅の音楽ライブラリだけでなく、Spotifyに繋げれば、数千万曲のカタログから自分の好きな曲を再生することができます。SpotifyもSpotify Connectを利用すれば、320kbpsのソースを最も条件の良い環境で再生することができます。
Spotify ConnectをVolumioで再生する方法についてもブログに書きました。
[Volumio Spotify Connectの衝撃] Spotifyを最高音質で聴くためには
4. 音質の特徴
セッティングを終えて、最初に音を出したときには、大袈裟な表現ですが、文字通り腰を抜かしそうになりました。神オーディオという表現しか出てきません。。。音が目の前に拡がる空間を満たすような、見事に定位した臨場感、透き通ったクリアな原音、怖ろしいほど高い再現性。。。音楽を聴く悦びに浸れるオーディオ道楽の極致そのもの。
特に低域の芯の強靭さは驚異的です。クラシックからロックまでソースも選びません。
こんな衝撃は、PCオーディオを始めたときに、RMEのFireface400を使ってLinuxのシステムから音を出したとき以来のインパクトでした。
音の良さを文章で定性的に表現してもあまり意味がないのですが、とにかく死にそうに素晴らしいの一言。
音量を上げてもクリップすることも一切ありません。
敢えて難を言えば、電源オン時のポップノイズでしょうか。。。しかし常時電源オンの環境で使うのであれは無縁です。
もちろん音質に徹底的にこだわれば、ノイズの出ないスイッチング電源の導入や、コンデンサ交換などカスタマイズの余地はいくらでもありますが、そのままポンと置いてここまでの音質が出ることに価値があると思います。
長時間聴いてもアンプは一切発熱がありません、まさにデジタルアンプならではのメリットですね。
この究極のオーディオシステムが、僅か12,000円で実現してしまうというのは、まさに破壊的イノベーションではないでしょうか??
こうなると、ブックシェルフだけでなく、大型のフロアスタンドのスピーカーでも十分駆動できるのでは。。。近いうちに試してみようと思います。
(追記)LepaiのLP-2020A+デジタルアンプは現在入手困難ですが、Tripath TA2020チップ内蔵のデジタルアンプで、国産(株式会社ノースフラットジャパン)のFX-AUDIO製品は評価も高く入手可能なようなのでリンクを貼っておきます。
ぜひ、ホーンスピーカーでテストしてください、楽しみにしております。
返信削除ホーンスピーカー持ってないんです。。。感度が高いとノイズが厳しいかもしれませんね。普通のフロアスタンドに繋いだらなかなかだったので、電源などいろいろいじりたくなってきました。いろいろ試しているところです。
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