MPD音楽再生ソフトのVolumioを使ってPCオーディオのシステムを構築すれば、自宅のハイレゾ音楽ライブラリだけでなく、Spotifyの4000万曲以上という膨大な音楽コレクションも併せて聴くことができて大変便利です。
VolumioにはデフォルトでSpotifyのストリーム再生をサポートする機能が付いているので、特に何も設定しなくても、iPhoneのAirPlay機能を使えば簡単に再生できますが、Volumio Spotify Connectという機能を利用すると、AirPlayよりも遥かに高音質で聴くことができます。
VolumioでSpotify
以下では、Volumio Build 2.714 (2020/03/02)の環境で、Volumio Spotify Connectを利用する方法をご紹介します。
1. Volumioとは
Volumioとは、デジタルオーディオ再生における様々な音楽ファイルを再生する機能に特化したLinuxベースのOSです。Raspberry PiやCuBox、BeagleBoneなど幅広いハードウェアプラットフォームをサポートしており、拙宅でもCubox-i1にインストールしたものを長年メインシステムで愛用しています。
現在のバージョンはVolumio2で、2016年秋にリリースされています。ギャップレス再生やアルバム単位の再生に対応しました。
最新のビルド(build 2.714)では、UIがVolumio3となって左側のペインにメニューが表されるようになりました。
Volumio3の新しいUI
近いうちにVolumio3の正式バージョンが公開されるようですね。
Volumioについては、以前にこちらの記事で紹介しました。
MPD音楽再生ソフトVolumioがバージョンアップで大幅進化!Volumio2をCubox-i1で試してみる
Volumioの設定は、PCオーディオとしては非常に簡単なのですが、ネットワークドライブの設定で拡張オプション「vers=1.0」を明記することと、URL名は自分が指定した名前になるという2点は留意すべきです。
VolumioでSpotifyを聴く方法は大きく分けて3種類あります。以下それぞれ比較説明します。
尚、この記事ではVolumioをインストールしているハードウェアはRaspberry Pi2ですが、どのようなプラットフォームでも差異はありません。
2. VolumioでSpotifyその1(AirPlay)
一番簡単なのは、iPhoneなどからAirPlayを利用して再生機器としてVolumioを選択する方法です。
AirPlay
前述のとおり、VolumioにはデフォルトでSpotifyのストリーム再生をサポートする機能が付いているので、特に何も設定しなくても、iPhoneのAirPlay機能を使えば簡単に再生できます。
Volumioを立ち上げた状態で、iPhoneからSpotifyの音楽再生画面を立ち上げます。
Spotify再生画面
この段階では、もちろん音楽はiPhoneから再生されていますね、ここで右下の小さなアイコンを押します。すると「デバイスに接続」というメニューが現れます。
「デバイスに接続」メニュー
ここで、「他のデバイス」を選ぶと、下のようなメニューが現れるので、そこの「スピーカーとテレビ」にあるVolumioを選択します。
スピーカーとテレビ
すると、iPhoneで再生されていた楽曲が、AirPlay機能を使ってVolumioを経由しての再生に切り替わります。
楽曲の選択や再生コントロールなどはすべてiPhone側で行うことになります。
この方法は、AirPlayを利用した最も簡単で便利な方法ですね。
Volumioに限らず、AirPlay再生に対応しているデバイスであれば、どんなデバイスでも再生することができるのが特徴です(上の画面だと、Volumio以外にも、Apple TVやmarantz AV8801のAVアンプなどが対応デバイスです)。
また、再生側のアプリも、Spotifyだけでなく、Apple MusicでもAmazon MusicでもYouTubeでも何でも再生できます。
AirPlayの偉大なところは、再生コンテンツ、再生機器を問わずシームレスに簡単につなげられることでしょう。ユーザーはネットワーク接続がWiFiかBluetoothかさえ気にする必要がありません。
しかし、この方法では、音源から再生デバイス(この場合はVolumioがインストールされているPCトランスポート)まではワイヤレス接続なので、音源ストリームそのものがワイヤレス経由で再生されることになります。
当然、ワイヤレス接続なので、音質面では不利になりますね。
自宅でiPhoneを利用したAirPlayの場合は、Spotify音源は以下のような経路を通ります。
Spotify配信サーバー>自宅サーバー>自宅WiFi回線>iPhone>家庭内WiFi/Bluetooth回線>Volumioデバイス
なんと2回もワイヤレスを経由しているのです。
これではいくら便利とはいえ、ホームオーディオで聴くには音質面では決定的に不利ですね。
3. VolumioでSpotifyその2(Volumio)
2番目の方法は、Volumioから直接Spotifyを再生する方法です。この方法ではiPhoneは必要ありませんが、Spotifyのプレミアムアカウント(有料プラン)が必須です。
Spotifyプラグインをインストールすることによって、Spotifyの楽曲を再生することができます。
Spotifyプラグインのインストール
ビルドのバージョンによってはSpotifyへのログインなどConfiguration画面を出すのは、日本語環境だと「設定」ボタンが隠れてしまっており非常にわかりにくい場合があります。
少し古いver. 2.532では、下の画面の「インストール済みのプラグイン」の画面で、「アンインストール」と表示されている左側の狭いグリーンのエリアをクリックします。
アンインストールの左のグリーンをクリック
すると、Spotify Configuration画面になり、ログインIDやパスワードを入力できます。
無事にログインできたら、次はAuthorize(Spotifyのアカウント情報にVolumioからアクセスを許可する)を求められます。
Authorizeボタンを押すと、ブラウザの画面が立ち上がり、VolumioのSpotifyの動作やアクセスを許可することに同意を求められるので、「同意する」を押します。
Authorize
これでようやくSpotifyへのフルアクセスが可能となります。
Spotifyの再生
再生楽曲を選択
左下の再生楽曲を選ぶと、再生画面にSpotifyプレミアムの標準フォーマットである320kbps/16bit がしっかりと表示されています。
Spotifyアイコン
すると、自分のSpotifyアカウントと同じメニューがリスト表示されます。
Spotifyメニューのリスト表示
Spotifyのストリームのビットレートは、無料版では160kbpsと低いのですが、有料会員のプレミアムでは320kbpsとまずまずのビットレートであることは意外と知られていません。
また、AirPlayの再生と違って、Volumioが直接Spotifyサーバーへアクセスしてストリーム再生するので、音質面ではこちらのほうが遥かに良いです。
聴覚上も明らかにAirPlayよりもハイクオリティです。特に中低域がハレーションを起こさずしっかりと再生されますね。
アプリの完成度は高いのですが、オリジナルのSpotifyアプリと違うのは、曲の歌詞が見れないことです(Spotifyではほとんどの曲の歌詞が画面に出てきます)。
また、古いビルド(ver. 2.532)ではSpotifyの仕様変更にVolumioが対応していないようで、Authorizeが効かず、利用することができないようなので注意が必要です。
古いビルド(ver. 2.532)ではAuthorizeが効かない
今後のSpotifyでの仕様変更に果たしてvolumioがどれだけタイムリーに対応できるか不明です。古いビルドが動かなくなったように、その都度最新のビルドでvolumioを再インストールするのは手間がかかりますね。
音質面ではAirPlayより有利であるものの、ユーザビリティがどうしても劣ることは否めません。
4. VolumioでSpotifyその3(Volumio Spotify Connect)
3番目の方法は、VolumioでSpotify Connectを利用する方法です。この方法ではiPhoneはコントローラーとしての役割を担うのですが、再生音源はあくまでVolumio側で処理されるため、ストリーム音源がワイヤレスネットワークを経由することはなく、高音質でかつ操作性も通常のSpotifyアプリを使えるのでフル機能を使えてしまうのです。
まさに、音質と操作性の両方の良いとこ取りをした理想的な方法です。
Spotify Connectとは、Spotifyアプリをリモコンのように操作して、スピーカーやテレビでSpotifyを聴くという比較的新しい方法です。
Spotify Connectには、従来のSpotifyをAirPlayで利用する方法と比較して以下の特徴があります。
- 高音質:Spotify ConnectはWi-Fiネットワークを利用して、他のデバイスから直接音楽を流すことができるので、Bluetooth接続とは違い、より高音質で楽しむことが出来ます。
- スマホのバッテリー節約:iPhoneのようなスマートフォンはただのリモコンとして利用するだけです。Volumioのようなデバイスから直接ストリーミングして再生しているので、スマートフォンのバッテリーを節約することが出来ます。
- 再生中にスマホを他に使える:スマートフォンで再生しないので、音楽を聴いている時にスマホで電話で通話しても、スマホの電源を切っても、止まることがありません。
Spotifyプラグインのインストールと同様の手順で、Volumioのプラグインのリストから「Volumio Spotify Connect2」を選択してインストールします。
プラグインリストから選択してインストール
Volumio Spotify Connect2のインストールが完了したら、「インストール済みのプラグイン」のタブに切り替えて、Volumio Spotify Connect2の設定ボタンを押します。
「インストール済みのプラグイン」
Volumio Spotify Connect2の設定画面では、すべての選択をデフォルトのままで問題ないと思います。
設定画面
Volumio側の設定は以上です(その2で紹介したSpotifyプラグインのインストールは必要ありません)。あとはすべてiPhone側からの操作となります。
Volumioを立ち上げた状態で、iPhoneからSpotifyの音楽再生画面を立ち上げます。
Spotify再生画面
この段階では、もちろん音楽はiPhoneから再生されていますね、ここで右下の小さなアイコンをクリックします。すると「デバイスに接続」というメニューが現れます。
「デバイスに接続」メニュー
ここまではAirPlayの再生と一緒ですが、ここで、「他のデバイス」をクリックする代わりに、その上にある「Volumio」というアイコンを選びます。
すると、画面中央にはVolumioと表示されたアイコンが一瞬現れます。
画面中央にVolumioアイコン
これでSpotfiy Volumio Connectの設定が完了です!
あとは、iPhone側で好きな楽曲を選んで再生すれば、そのコントロールコマンドだけがWiFi経由でVolumioに送信されて、Volumio側でSpotifyサーバーに(無線ネットワークを経由せずに)直接LAN経由で光接続されます(拙宅の場合)。
もちろん、楽曲の歌詞表示も含めて、Spotifyのすべての機能が利用できます。
念のため、VolumioのWeb画面(http://volumio.local/)にアクセスしてみると、しっかりとSpotifyの再生画面になっていますね。
http://volumio.local/(PC画面)
http://volumio.local/(iPhone画面)
音量調整で、注意すべき点があります。
Volumio設定画面の「音量オプション」にあるMixer Typeで、Hardwareを設定していると、音量調整は再生オーディオシステム側のボリューム(通常であればアンプのボリューム)でしか操作できず、iPhoneでは操作できません。
「音量オプション」のMixer Type
音質を厳しく追求するのであれば、余計なカーネルミキサーやリサンプリングなどを全てバイパスするHardwareの設定が好ましいのですが、iPhoneの音量で操作したい場合は、HardwareではなくSoftwareに設定変更する必要があります(その場合は再起動が必要となります)。
拙宅では、音質優先でHardware設定を選んでいるので、iPhoneの音量調整は無効です(音量調整はホームオーディオ側のアンプで行います)。
Volumio Spotify Connectは、Spotifyのスマホアプロをコントローラとして利用して、音源はVolumioが直接Spotifyサーバーにアクセスして高音質でストリーム再生するという実に上手い仕組みだと思います。
5. Volumio Spotify Connectで実現するオーディオ理想郷
Volumioで再生するサウンドの特徴は、一言で表現すると「原音に限りなく忠実な再生」と「透明感」です。
PCオーディオのポテンシャル(とそれを最大限に引き出すための設定の難しさ)は、これまでも語り尽くされていますが、Volumio2の登場で、設定の利便性が更に高まり、デフォルトの設定のままで細かいチューニングを施さなくても、ほとんど完成された音質が得られるようになりました。
Volumioさえあれば、あとはハイレゾを含めた音楽ライブラリがNASに保存されていれば、好きな音楽をハイフィデリティの環境で心ゆくまで楽しめます。
Spotifyは320kbpsなのでハイレゾではありませんが、Volumio Spotify Connectを加えることによって、ハイレゾだけではない、4000万曲以上という膨大な音楽ソースの高品質再生が同じシステムで併用できるのです。
これはまさに、ハイレゾ再生とストリーム再生の究極の両立システムではないでしょうか!?
「人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある」
確かに、私自身も中年を迎えて新しい楽曲を貪欲に聴くことが減ってしまいました。
しかし、Spotifyを利用するようになってからは、これまで気付かなかった新しいジャンルの音楽や、お気に入りアーティストや作曲家の見落としていた名曲に出会うことができました。
以下のその実例を記事にしたものです。
自前のお気に入りライブラリ楽曲をハイクオリティで聴くというピュアオーディオも高尚な趣味ですが、それに加えてVolumio Spotify Connectで新しい音楽の世界も高音質に楽しめるとしたらこれはまさにオーディオ理想郷ではないでしょうか??
。。。ちょっと脱線してしまいましたが、以上がVolumio Spotify Connectの使い方の紹介でした。
Volumio Spotify Connectの登場で、拙宅のオーディオシステムは引き続きVolumioがメインで稼働することになりそうです。
貴ブログ等を参考に、しばらく前よりラズベリーパイ+Volumio2でSpotifyを楽しんでおりますが、1点だけ解決できない問題にぶつかっております。それは、ギャップレス再生が実現できていないことです。この組合せではギャップレス再生はできないのでしょうか。モニオさんの場合はいかがでしょうか。ご教示いただけますと幸いです。
返信削除ブログ訪問多謝です!
削除お問い合わせのSpotifyギャップレスの件、こちらでも試したところ、確かにギャップレス再生できませんでした。
ちょっと調べたところ、Spotifyがパートナーに提供しているSDKでギャップレス機能が使えないという問題が昨年より「既知の問題」だったようですが、最近解決の糸口が見えてきたようです。VolumioのSpotify Pluginの今後のリリースで対応されれば、いずれ解決するものと思われます。
https://github.com/balbuze/volumio-plugins/issues/228
早々のご回答ありがとうございます。
返信削除ひょっとして自分の設定が悪くてギャップレス再生ができないのでは、と懸念しておりましたので、ご回答の内容にはがっかりしたのと同時にホッとした面もあります。Spotify Pluginの対応を待ちたいと思います。
今後もちょくちょくブログ訪問させていただきます。
本当にありがとうございました。
ご紹介いただいた構成に興味を持っているものです。
返信削除一つ気になっている点があり、本構成にてspotify connect利用時に、spotify側のプレイリストにNAS上のファイルを混ぜて再生させることは可能でしょうか?
PC上のspotifyアプリではできることはわかっていますが、volumio経由で同じことができるのかがわからず、質問させていただきました。
こんにちは、現在spotifyを止めてしまったので何とも不明なのですが、記憶では混在させることはできなかったような気がします。ただし、Spotify SDKも進化しているようなので、もしかしたら可能かもしれません。お答えになっておらずすみません。
削除ご回答ありがとうございます。
削除現環境でも、PCを経由せずにspotify, NASと別々に再生はできているので、混在させたプレイリストで再生できればよかったのですが、導入についてはこう少し検討してみます。