[ヤマハの中古ピアノの驚くべき買取価格] 55年前のアップライトピアノU5Bを売却

実家のマンションにあるYAMAHAのアップライトピアノを売却することにしました。

私が小中高時代、実家で弾いていたピアノですが、もはや誰も弾く人もおらず、リビングのレイアウト変更に合わせて処分することにしたのです。

売却のために、ピアノの型番を調べたところ、1965年(昭和40年)製造のU5Bというモデルでした。


買取業者に連絡を入れて見積りをしてもらったところ、なんと、マンションからの搬出費用を差し引いても7万円の売却価格がつくとのこと!

詳しく調べたところ、このU5Bというモデルは、ヤマハアップライトピアノの定番シリーズ「Uシリーズ」のなかでも、木目調モデルとして製造された初期の高級ピアノ(上位機種)だったのです。

今は亡き母親の嫁入り道具として我が家にやってきたピアノにも歴史があることがわかって感慨無量です。

1. YAMAHAのU5B

U5Bというモデルについては、「ちょっと珍しいピアノ ~YAMAHA U5B~」というサイトに詳しく紹介されていました。

以下一部引用します。

YAMAHAのピアノって、機種名は『数字』と『アルファベット』で識別されています。
この『数字』ですが、基本的には数字が大きいほうが上位機種で、YAMAHAは『1』~『7』まであり、『1<2<3<5<7』(なぜか4と6はありません)ってイメージです。

一般家庭に納入されているピアノは『1』『2(じつはこのピアノも珍しい・・・)』『3』がほとんどです。
ですので、『5』はあまりお目にかかることのないピアノなんです。

YAMAHA U5B木目調ピアノの木材は様々ですが、主に2種類です。

『ウォールナット』=シックなイメージ
『マホガニー』=華やかなイメージ

『 U (シリーズ) 』 『 5 (クラス) 』 『 B (製造年) 』です。
『数字の前のアルファベット』と『数字の後のアルファベット』はそれぞれ、『シリーズ名(Uシリーズ・UXシリーズなど・・・)』と『製造年』を表しているんです。

(引用おわり)

U5Bという中古モデルの販売サイトもいくつか見つかりました。




ぴあの屋ドットコムには商品の動画もアップされていました。商品説明にも述べられていますが、ヤマハアップライトの松竹梅のなかで、U5シリーズは「松」なのだそうです(さらに上位機種のU7もあります)。

U5B商品の紹介(ぴあの屋ドットコム)

販売価格と製造年はそれぞれ

TAKE OFF: 298,000円(1969年製)
ぴあの屋ドットコム: 292,582円(製造年不明)
玉田ピアノ: 220,000円(1967年製)

と、なかなかの高値で取引されているんですね、驚きです。

2. 家庭用ピアノの歴史

電子ピアノの普及もあり、アップライトピアノを一家に一台という時代ではなくなりましたが、戦後の高度成長期には、アップライトピアノはかなりの数量が生産・販売されていたようです。

少し古いレポートですが、「しんきん経済レポート」によると、

「平成21年における県内でのピアノ生産台数は平成20年に比べ41,375台減少の93,390台となり、昭和37年以来、47年ぶりに10万台を割り込んだ。ピアノの生産は昭和50年代半ばまで増加傾向が続き、ピークの昭和55年には年間39万台が生産されていた。その後、生産台数の減少が続き、平成5年に生産台数が20万台を割り込み、ピーク時の2分の1以下にまで低下。最近は10万台の生産を維持していたものの、リーマン・ショック以降の景気低迷により、昨年の生産台数が対前年比、3割の落ち込みとなった」

ということです。

ピアノ生産台数の推移(出所:静岡県楽器製造協会)

2010年に47年振りに10万台を割り込んだピアノの生産台数は、その後さらに減少を続け、ここ数年は年間3万台にまで落ち込んでいます。

ピアノ生産台数の推移(Source:経済産業省「生産動態統計年報」)

1979年(昭和54年)の最盛期から実に90%以上の市場縮小ということになります。

普及率でみると、1963年が3.7%だったのが、1974年に10.2%と10%を超えて、1989年には21.9%に達しましたが、その後は頭打ちとなりました。

背景には、電子ピアノの普及、ピアノの買い替え需要の不在、生産拠点の海外へのシフト、クラシック人気の衰退など、さまざま要因が絡んでいるようです。

3. 実家の中古ピアノ

実家の中古のピアノは、普段はクロスの布をかけていたこともあり、目立った傷や凹みもほとんどないコンディションの良好なものでした。





木材は『ウォールナット』でしょうか。。。
因みに、木材専用サイトによると、『チーク』『マホガニー』『ウォールナット』は高級家具によく使われていて、世界三大銘木ということです。

ペダルは3つあります。

鍵盤の上の赤いフェルト布までちゃんと残っています。


付属のピアノ椅子は、連弾で二人掛けができる仕様のものです。座面が蓋になっており、内部に楽譜を収納することができます。



上部の板は、前面の半分が開くようになっています。




蓋を開けると、内部に「NO.U5」「NIPPON GAKKI」という刻印が見えます。



YAMAHAのエンブレムの刻印の下には製造番号(387771)が黒い文字で記されています。


左がソフトペダル(ほとんど使いません)、中央がロック式の弱音器(マフラーペダル)、右が一般的なラウドペダル(音が拡がる)です。


鍵穴がありますが、さすがに鍵は紛失してしまいました。


ペダル上のフロント部分は前面に引き出せるようになっています。内部にはスチール弦が垂直に張り巡らされています。


なかなか芸術的ですね。


物品税証紙が貼ってあります。


上部の蓋の内部には、調律の記録紙が挟んであります。
55年間の歴史の記録ですね。



「半艶オールナット」との印鑑が。。。木材はやはりウォールナットですね。
納入調律は昭和40年3月22日と記されています。


調律師は昭和40年から昭和54年まで同じ名前の方になっていますね。


昭和57年からは別の調律師の名前になっていますが、これは団地からマンションに引っ越したからでしょう。平成4年まで毎年調律をしていますが、そこで途絶えています。


直近では2017年(3年前)に調律済みになっています。実に26年振りの調律ですが、これは、引退した父親がピアノを習い始めたのがきっかけでした。

ピアノの調律師というと、数年前に話題となった宮下奈都の「羊と鋼の森」を思い出します。調律師の知られざる世界を紹介した良本でした。



ところで、当時のピアノの価格は一体いくらだったのでしょうか??

「日本におけるピアノ文化の普及」という論文から一部引用します。

それでは戦前、市民層には手の届かなかったピアノ文化は、戦後になって変化しただろうか。前出の大正15年生まれOさんは次にように語っている。Oさんは昭和24年に結婚、2年後に長女が生まれた。その長女のためにヤマハピアノ・U2型(23万円)を購入。ピアノを購入したのは昭和30年代中頃で、ご主人の月収は5万円くらいだったという。

昭和30年代も半ばになると、ピアノはかつてない売れ行きを見せるようになった。昭和34年8月18日の朝日新聞朝刊は、最近都内ではピアノが良く売れているとして、『生産追いつかず、町はピアノブーム』という記事を掲載している。それによると、ピアノは一、二カ月待たないと買うことのできないほどの人気であったらしい。

(引用おわり)

なるほど!そういう時代背景だったのですね。しかし当時生産が追いつかなかったほど売れたというのは驚きです。

実家のピアノは、当時、今は亡き母の嫁入り道具としてプレゼントされたそうなので、祖父と祖母は大変な思いで購入したのでは。。。と想像します。

私は兄と二人兄弟なので、母としては、残念ながら娘がピアノを弾くということにはなりませんでしたが、兄も私も物心ついた頃には毎週のようにピアノ教室に(強制的に)通わされていました。

中学生になって部活が忙しくなり、ピアノは辞めることになるのですが、私は、珍しくも、中学生になってからひょんなことをきっかけにピアノを再開し、高校卒業までピアノを続けました。

当時は団地住まいだったので、今から思うと、朝っぱらからピアノの練習を嫌という程聴かされた両親と、団地の住民には本当に申し訳ないと思います。

4. ピアノ買取りの査定価格

このピアノを買取業者に連絡を入れて見積りをしてもらったところ、なんと、マンションからの搬出費用を差し引いても7万円の売却価格がつくとのことでした。

買取業者へ電話でピアノの保存状態を伝えたところ、「真ん中のペダルを踏んでみて、内部はどのように動いてますか」と聞かれました。この部分は特に不具合が多い箇所なのでしょうか。。。

また、ピアノの長椅子のほうは、通常の一人椅子ではないので、最初は引き取り不可ということでしたが、交渉したところ、こちらも無料で引取りしてもらえることになりました。

今は買取業者の比較もネットから簡単に比較できます(中古自動車の買取比較と似た仕組み)。

U5Bモデルは、買取価格が6万円と相場がきまっているようですが、業者のなかで期間限定で1万円を上乗せして見積もってくれたところがあったのでそこに決めました。


近日中にピアノの引取り業者がやってきて、実家のピアノは人の手に渡ることになりました。

いつの日か、新しいオーナーの元で再びこのピアノが弾かれることになると思うと、嬉しいやら、なんとなく寂しいやら、複雑な気持ちです。

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