今年も年末調整の時期がやってきました。
会社員にとって年末調整を受けるのは義務なので、扶養控除申告書や、保険料控除申告や住宅ローン控除申告など、煩雑な作業を提出期限内に済ませなければなりません。
毎年この時期になるとバラバラと郵送で到着する各種保険料の控除証明書をなくさずに保管するのも大変だし、それをひとつひとつ間違いのないように手書きで記載するのも大変な労力です。
年末調整を行う会社員だけでなく、それを集計して記載ミスや漏れをチェックする会社の労務担当者の労力も計り知れないものがあります。
今年(令和2年)は、法制度上の変更も多く、「令和2年分の年末調整は90%の人が混乱?税理士が分かやすく解説」の記事にあるように、さらに難解になってしまいました。
日本国家が、源泉徴収制度による納税システムを行っている以上、年末調整は国民の義務なので、果たしてこの前近代的な無駄とも思える作業は何とかならないでしょうか??
実は、e-Taxによる確定申告を行うのであれば、年末調整の時期に、保険料控除や住宅ローン控除をわざわざ苦労して申告する必要はありません!!
これはほとんど知られていない事実なので、繰り返して強調しますが、
年末調整の時期に、保険料控除や住宅ローン控除を申告する必要はないのです!!
こんな重要なことが、世間でなぜ知らされていないのか、摩訶不思議なのですが、年末調整の時期に、保険料控除や住宅ローン控除を申告しないのは違法でもなければ、むしろ、世の中の無駄な作業を大幅に減らすことのできる極めて効果的な方法なのです。
ネットで検索しても、年末調整で各種控除の申告をしなくても良いと解説しているサイトはほとんどありません。
唯一見つけたのが、「年末調整は義務?確定申告する場合、会社員は不要か」という記事です(以下引用します)。
確定申告する場合、保険料控除申告書は年末調整で未提出でも問題なし
もう一方の保険料控除申告書は、生命保険料控除や地震保険料控除などを受けるために提出します。こちらは「どうせ確定申告するから、生命保険料控除もその時に申告しよう」とお考えの方は、特に提出しなくても大丈夫です。もしくは、会社から出すようにいわれたら、ハンコだけ押して提出しておけば問題ありません。年末調整が強制ということと、年末調整でどの控除を受けるのかは別のハナシです。
住宅ローン控除も同じで、年末調整で受けるか確定申告で受けるかは個人の自由です(ちなみに1年目は必ず確定申告が必要です)。
(引用おわり)
では具体的にどうするのか?
まず、扶養控除申告書など、源泉徴収制度のベースとなる申告は、年末調整のタイミングで必ず提出します。
今年(2020年、令和2年)を例にすると、年末調整で提出義務のあるものは以下の4枚です。
①から④の用紙はすべて提出義務があるものですが、このなかで最も煩雑なのが、③令和2年分 給与所得者の保険料控除申告書です。
③の用紙は、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、そして小規模金兼共済等掛金控除のためのものですが、すべての控除に対してそれを証明する書類の原本を添付して提出する必要があります。
さらに、住宅ローン控除を受ける場合は、これら4枚の用紙とは別に、「給与所得者の特定増改築等住宅借入金等特別控除申告書」という複雑極まりない用紙を記入して提出する必要があります。
しかも、この用紙は、年末調整を行う勤務先の会社から配布されるのではなく、住宅ローン控除を開始した年に10年分の用紙がまとめて郵送されてきたものを保管して、毎年そこから1枚づつ該当年の用紙を選択して記入する必要があります。
もうこれだけで毎年発狂しそうになる面倒な作業ですね。。。
毎年の年末調整の提出書類のコピーを取って保管するような、よほど几帳面な人でも、全ての必要書類を取り揃えるのは至難の業です。
しかし、これらの控除の申告は、年末調整のタイミングで行わなくても、翌年(2021年)の確定申告の時期(2021年1月~3月)に申告すれば良いのです。
もちろん、年末調整で申告しようが、確定申告で申告しようが、最終的に控除される金額がまったく変わりません。
控除によって還付金が発生する場合、年末調整であれば自動的に年末調整額として翌年1月の給与支払時に自動的に反映され、確定申告であれば、申告後1ヶ月程度に還付金として指定銀行口座に振込まれる違いがあるだけです。
まとめると、生命保険料、地震保険料、住宅ローン控除、寄付金控除、ふるさと納税控除、医療費控除など、その他の控除に関わる申告は、すべて翌年の確定申告時に行うのです。
年末調整時には、①~④までの用紙はすべて記入して提出する必要がありますが、③は名前と押印だけして中身は未記入のまま提出、⑤は提出する必要さえありません。
繰り返しますが、③は名前と押印だけして中身は未記入のまま提出すればよいのです。
確定申告は、e-Taxで自宅でパソコンとマイナンバーカードなどの証明を利用すれば、わざわざ税務署まで行く必要もなければ、書類提出さえ必要ありません。
そして、e-Taxでは、控除の申告に、書類提出を割愛することができるのです!!!
もちろん、書類は手元に保有していることが前提なので、郵送で送られてくる各種控除証明書は保管しておく必要があります(書類提出しない代わりに、5年間の保管義務があります)。
しかし、5年間保管していても、何か特殊な事情が発生しない限りは、提出を求められることはないので、極端な話、郵送で送られてくる控除証明書をなくしてしまっても問題はありません。
年末調整では、各種証明書は必ず原本の提出を求められるので、これは大きな違いです。
そして、ここが一番重要なポイントなのですが、生命保険料、地震保険料、住宅ローン控除などは、契約内容に変更がなければ、毎年の支払額は変わらないので、昨年の確定申告で提出したデータをそのままコピーして利用することができるのです!!
e-Taxであれば、過去の確定申告のデータはすべて保存できるので、新規にすべての控除額をわざわざ頭をひねりながら考えることなく、昨年と同じフォーマットで、金額に変更がなければ、そのまま流用することができます。
過去の確定申告データは、確定申告時にPCにローカルファイルとして、「令和xx年分所得申告データ.data」というファイル名で保存しておけば良いのです。
年末調整で、生命保険料、地震保険料、住宅ローン控除、寄付金控除、ふるさと納税控除、医療費控除などをすべて漏れなく記載して、証明書の貼り付けなどもすると、慣れている人でもおそらく数時間はかかると思います。
一方、e-Taxで確定申告時にこれらの控除を申請するのは、たったの5分あれば済んでしまいます!!
e-Taxで確定申告するのに必要なものは、マイナンバーカード、カードリーダー、そしてPCだけです。
しかも、e-Taxであれば、記載漏れやミスの可能性は大幅に減らすことができます。
こんなにも便利なe-Taxによる確定申告を、会社員も利用しない手はありません。
会社員のe-Taxによる確定申告については、以下にまとめました。
[e-Taxで確定申告をしよう] メリット満載!サラリーマンもe-Taxで確定申告のおススメ
年末調整の煩わしい作業からはこれで解放されます。皆さんもぜひ、e-Taxによる確定申告をぜひ活用しましょう。
(2020年11月20日 追記)
「国税庁、年末調整控除申告書作成アプリをiPhoneとMac向けに公開」という記事を見つけました。
年末調整申告書について、従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、勤務先に提出する電子データまたは書面を作成する機能を持つ、国税庁が提供するソフトウェアということです。
まあ、国のデジタル化も少しは進歩したかという感じですが、書面で提出することに変わりはないので、やはり、e-Taxで確定申告時に控除申告をまとめたほうがはるかに便利ですね。
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