映画『17歳のカルテ』は、ウィノナ・ライダーがパーソナリティ障害の少女を演じる意欲作です。
あらすじ:ある日突然、薬物大量服用による自殺未遂を起こして精神科病院に収容されたスザンナ(ウィノナ・ライダー)。パーソナリティ障害という自覚が無く、その環境に馴染めなかったスザンナだが、病棟のボス的存在であるリサ(アンジェリーナ・ジョリー)の、精神疾患である事を誇るかのような態度に魅かれていく内に、精神科病院が自分の居場所と感じるようになっていく。
しかし退院した患者の近親姦を喝破してその患者を自殺に追い込むというリサの行動から、徐々に彼女の行動に疑問を持つようになって行く。だがその事でリサに疎んじられ、他の患者も全員リサに同調して彼女は孤立する。。。
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、ウーピー・ゴールドバーグ
アンジェリーナ・ジョリーの実質デビュー作です。彼女はこの作品でアカデミー助演女優賞を受賞しています。
Wikiによると、「この映画はウィノナ・ライダーが原作に惚れ込み映画化権を買い取って製作総指揮も兼任した作品であるが、当時新人であったアンジェリーナ・ジョリーの方がそのエキセントリックな役柄から注目され、ウィノナ・ライダー自身はまったく注目されなかった」とありますが、それは誇張で、ウィノナ・ライダーの代表作のひとつにもなっています。
病棟を舞台にした感動ドラマという点で、名作『カッコーの巣の上で』や『レナードの朝』に共通するものがありますが、主人公が若い女性というところが、将来の夢や希望が絡む前向きな内容になっています。
ウィノナ・ライダーが主演だけでなく製作総指揮も兼任しただけあって、映画の仕上がりに対する思い入れは尋常ではなかったと思います。それだけ完成度が極めて高く、ウィノナ・ライダーの恐るべき才能に驚愕してしまいました。彼女は単なる万引き癖や気まぐれ出演だけの女優ではないですね。
ウィノナ・ライダーと言えば、『シザーハンズ』の可憐な少女のイメージが強かったのですが、この映画を観て改めてユダヤ系才女の底力を見せつけられました。
精神病棟での長期間の生活というと、何やら人生を無駄に過ごしているような印象がありますが、この映画の患者たちは、障害に苦しみながらも、実に「輝いて」毎日を懸命に過ごしています。
自由を謳歌しているはずの我々一般人のほうが、様々なしがらみに束縛され、狭い世界に閉じ込められているような気がしてくるので不思議です。
自分はパーソナリティ境界障害なんて縁がないと思っている人にこそ、ぜひ観てもらいたい映画です。
『17歳のカルテ』は、私が2020年に観た100本の映画のベスト10のひとつです。
(2022年6月15日追記)
コメント