TV映画『ツイン・ピークス』:デヴィッド・リンチ監督の摩訶不思議な闇の世界

デヴィッド・リンチ監督のTVシリーズ「ツイン・ピークス」は、興行収入的には大失敗となりましたが、後世に残るSF史上に輝く超大作でもあります。

「ツイン・ピークス」

「誰がローラ・パーマーを殺したのか?」という謎解きで全米のお茶の間を熱中にさせた90年代のTVシリーズです。全30話。ファーストシーズンの視聴率が21.7%と世界で大ブームを巻き起こしました(国内でもWOWOWなどで放映)。

主人公は殺人事件発生で派遣されてきたFBI特別捜査官のデイル・クーパーで、「デューン/砂の惑星」と同じくカイル・マクラクランが好演しています。

シアトル郊外の街「ツイン・ピークス」を舞台に、一見平穏な生活を送る人々のなかの、複雑な人間関係、不倫、恐喝、売春などを鋭く浮き彫りにしたドラマで、学園のミスコン優勝者ローラ・パーマーを誰が殺したかという謎解きもさることながら、森林に潜む超常現象や究極の善悪の対決といったテーマも奥が深く興味が尽きません。

登場人物も実に多彩です。TVシリーズなので日本で有名な俳優は出ていませんが、デヴィッド・リンチお気に入りの個性的な俳優陣が揃って出演しています。

ちなみにデヴィッド・リンチは女優に美女を起用することが多いのですが、「ツイン・ピークス」には美人女優が次々に登場します。第1話で死体で登場するローラ・パーマー(シェリル・リー)、そしてローラの親友ドナ・ヘイワード(ララ・フリン・ボイル)、ホーン産業ご令嬢のオードリー・ホーン(シェリリン・フェン)、ダイナーのウェイトレスのシェリー・ジョンソン(メッチェン・アミック)、ダイナーのオーナーのノーマ・ジェニングス(ペギー・リプトン)、などなど。。。セカンドシーズンでは若き日のヘザー・グラハムまで出演しています。

主な登場人物(ファーストシーズン) WOWOWのサイトより

主な登場人物(セカンドトシーズン) WOWOWのサイトより

「ツイン・ピークス」全シリーズを観たのはもうずいぶん前のことなので、記憶もあいまいな部分が多いのですが、それでも当時の衝撃は良く覚えています。

ストーリーは極めて複雑、謎が謎を呼び、登場人物の全員がローラ殺しの犯人に思えてきてしまいます。というかどうしてこんな変な人物ばかりいるのでしょうか、このツインピークスという街には。。。 (´д`)

とにかく一度観始めると止めることができない、禁断症状に陥ってしまうという不思議な魅力が「ツイン・ピークス」には詰まっています。

ではどこがそんなに面白いのでしょうか?

個人的には、ドロドロとした人間関係と現代社会の病巣と、北米という厳しい大自然の環境が、超常現象や人知を超えた悪という存在を通して結び付いているところが面白いと思います。

ローラを殺した真犯人が、半狂乱になって嘆き悲しむ実の父親であったという衝撃的な事実もビックリでしたが、売春・暴行・近親相姦という目を逸らしたくなるような犯罪が日常に潜んでいるという恐怖と、人間を悪行に走らせる超常的な力の存在というものが、The Black Lodgeという異次元世界への物理的な入り口を介して繋がっているという発想は、例えて言えば、異次元宇宙とブラックホールの関係に良く似ていると思います。

「ツイン・ピークス」には、そのような科学的な部分と、科学を越えた宗教的なテーマが混ざって人間社会を痛烈に批判しているところがあります。

シリーズの最終章ではFBI特別捜査官のデイル・クーパー自身がその罠にはまってしまい、発狂してエンディングを迎えます(と解釈しました)。

ちなみに昨年、この「ツイン・ピークス」の新シリーズが2016年にアメリカのTV局で放映されるという信じ難いニュースが流れました。実現すれば25年ぶりに新シリーズが始まることになります。新シリーズは全9話で構成され、当初はリンチとフロストが全話の脚本とプロデュースを担当、リンチが監督を務めるはずでしたが、今年の4月になってリンチが制作から降板したことが報じられ、ファンをがっかりさせました。一体どうなってしまうのでしょうか。。。

「ツイン・ピークス」のパッケージソフトですが、待望のブルーレイBOX(10枚組)が昨年リリースされています。
「ツイン・ピークス」ブルーレイBOX

国内版はリンチ監修日本版オリジナルTシャツ付と豪華仕様ですが、海外版(日本語字幕付き)よりもかなり割高なようです。いつもながらブルーレイの内外価格差はどうにかならないものでしょうか。。。

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