映画『ムーンライト』は、ズバリ、LGBTの映画です。
こんな題材の映画がアカデミー賞(作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚色賞)を受賞してしまうとは、米国の映画界の懐の深さを感じます。
学校ではいじめに遭い、友人はコカインの売人、母親は麻薬ジャンキーで売春婦という、想像を絶する世界での、ゲイに目覚めた青年の人生を、ほろ苦いタッチで描く青春映画(?)です。
主人公に感情移入できるかというと、こんなに生まれ育った境遇が違うので、それは無理というもの。
しかし、主人公の心情や行動には、激しく共感させられてしまい、それが映画の感動に繋がります。
非常にエモーショナルな映画だと思います。
大人になって再会を果たした二人、風貌も仕事も何もかもがすべて豹変して、かつての面影などどこにも存在しないのですが、二人のあの夏の出来事とその感情だけは、何十年の歳月にも関わらず、今もまるで昨日のことのように鮮烈に想い出に焼き付いている(そしてそれが故に人生の軌道修正ができなかった)のでしょう。
映画タイトルのムーンライトというのは、エンディングシーンで主人公の青年時代にビーチで遊んでいる月夜のシーンに由来しています。
人生いろいろ苦難があっても、決して忘れることのできない輝いた瞬間が誰にでもある、主人公にとっては、それは自分がゲイとして相手に目覚めさせられた瞬間でした。
。。。まあとにかく、この映画は単一民族でLGBTなど亜流は一切無視される日本では決して幅広く受け入れられることはないだろうと思います。
マイノリティを主題にしたという点で共通点がある、日本映画「万引き家族」(第71回カンヌ国際映画祭において最高賞であるパルム・ドールを獲得)が日本以上に海外で受ける理由がよくわかります。
『ムーンライト』は、私が2019年に観た100本の映画のベスト10のひとつです。
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