映画『スノーデン』:一大スキャンダルとなった「スノーデン事件」をオリバー・ストーン監督が忠実にドラマ化

映画『スノーデン』は、2013年に発覚して世界を揺るがす一大スキャンダルとなった「スノーデン事件」を忠実にドラマ化したものです。



スノーデン事件とは、元CIA職員のエドワード・スノーデンが、米国家安全保障局(NSA)が米電話会社の通話記録を収集したり、マイクロソフトやグーグル、フェイスブックといった大手IT企業も国家ぐるみの個人情報収集に協力していた事実を暴露した事件です。

日本を含む世界38の大使館や代表部、メルケル独首相、欧州連合や国連本部までもが盗聴・監視の対象だったことも発覚、当時のオバマ大統領が、事態の収拾を図りつつも、「どの国の政府も裏ではやっている」と開き直ったことでも有名になりました。

6年前の事件なので、記憶が薄れてしまっていたのですが、この映画を観ると、トランプ大統領の「ファーウェイ外し」などは、実は米国も大々的にやっていることをよくもまあと呆れてしまいます。

映画は2015年12月に米国で公開されました(日本公開は2016年)。残念ながらアカデミー賞の受賞はなりませんでしたが、同時期に制作されたスノーデン事件の長編ドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。

社会派ドラマをやらせたら右に出るものはいないあのオリバー・ストーン監督(代表作は『プラトーン』『7月4日に生まれて』『ウォール街』『JFK』『ニクソン』。。。挙げればきりがない)の作品だけあって、重厚かつ隙のない作品です。

国家レベルのスキャンダルや恥部を映画にしてさらけ出すというのは、米国のお家芸なのでしょうか。70年代のウォーターゲート事件をドラマ化した『大統領の陰謀』をはじめ、米国の失政や汚職などはことごとく映画化されてきました。

それに対して、日本の政治や国家レベルの不祥事(ロッキード事件やリクルート事件など)は果たして今まで映画化されたことはほとんどない(というか皆無)ではないでしょうか??

米国の映画産業の強さは、このような関係者多数が在職や存命中のたった数年前の事件でさえ、映画化して国民の前にさらけ出してしまうという点です。

民主党支持者の多いハリウッドが、スノーデン事件(当時はオバマ民主党政権)を取り上げるのですから、どこかの国の政党寄りのメディアとは覚悟が違いますね。

映画の内容も、ドキュメンタリーと同じ史実に忠実に描いているにも関わらず、観ていて全く飽きさせないダイナミックな展開となっているのは、スノーデン自身の「愛国心」に焦点を当てているからではないでしょうか。

派手なアクションもなし、有名俳優もゼロ。

スノーデンを演じた当時ほぼ無名の俳優ゴードン=レヴィットは、技術と民主主義の関係についての「対話を促進するのを助ける」ために出演料を全額寄付することを約束したそうです(Wikiより)。

米国の映画業界は凄すぎる。。。

香港の学生が自由を求めて中国政府に対して反対デモを繰り返していますが、所詮、西側の国家体制にも個人の自由やプライバシーなど何の保証もないのではと、この映画を観てしまうと感じます。

『スノーデン』は、私が2019年に観た100本の映画のベスト10のひとつです。

コメント