最近Amazon Musicに加入したので、昔からのお気に入りアーティストのアルバムを気軽に聴けるようになりました。
ビョーク(Björk)もお気に入りアーティストの一人です。
彼女は、アイスランド出身の世界的アーティストで、これまでどのようなジャンルにも属さないような革新的な音楽を次々と生み出してきました。
遅まきながら、Amazon Musicで彼女の最新作『ユートピア』(2017年) を聴いたのですが、このアルバムに収録されている2つの曲『Utopia』と『Losss』があまりにも衝撃的で、聴いていて涙が出てきました。
このアルバムには、現代の地球環境破壊や資本経済至上主義を、どんなメディアも霞んでしまうほど痛烈に表現しています。
いや、批判というより、人間が地球の自然というユートピアを、もはや修復することができないまでに徹底的に破壊し尽くした現在、かつての桃源郷(ユートピア)をノスタルジックに表現している、とでも言ったら良いのか。。。
アルバム『ユートピア』の紹介と併せて、地球環境問題についても、日頃思う事を以下にまとめてみました。
1. ビョーク
(以下Wikiより)
ビョーク、正式にはビョーク・グズムンズドッティル (Björk Guðmundsdóttir [ˈpjœr̥k
ˈkvʏðmʏntsˌtoʊhtɪr] )、1965年11月21日 -
)は、アイスランドの歌手、シンガーソングライター、音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、女優
(出典:Wiki)
彼女は様々なジャンルの音楽に影響を受けた革新的な音楽を生み出すことで知られ、グラミー賞に12回、アカデミー賞に1回ノミネートされるなど多数の賞を獲得している。
彼女のレコード・レーベル One Little
Indianによると、2003年現在、彼女は全世界で1,500万枚のアルバムを売り上げている。
「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第60位にランクインしている。
(引用おわり)
私がビョークを知ったのは、もう10年以上前、オーディオ趣味にハマっていた頃だったと思います。
CDクオリティを上回る超高音質オーディオとして、SACDやDVD-Audioといった新しいディスクメディアが登場した頃でした。
ビョークのアルバムは、そのような超高音質オーディオのメディアとしてリリースされました。
以下は、彼女の代表作である『ヴェスパタイン』(2001年)と『メダラ』(2004年)の超高音質オーディオ盤です。
『ヴェスパタイン』(2001年)
『メダラ』(2004年)
『ヴェスパタイン』はDVD-Audio(96kHz/24bit,
5.1ch)、『メダラ』はDTS-CD(48kHz/24bit, 5.1ch)です。
どちらも廃盤で現在入手困難品、中古品はプレミアム価格がついています(『ヴェスパタイン』は\26,100
笑)
これらのディスクは、音質的にもオーディオレファレンスとなるほどの優れモノです。
彼女の音楽ジャンルは、敢えてジャンル分けすると「洋楽ポップス」だと思いますが、その音楽性の高さとオリジナリティの高さは、比肩するアーティストがいないほどユニークなものです。
ビョークの代表曲が何かは様々な意見があると思いますが、私は、上記のアルバム『ヴェスパタイン』の冒頭曲『Hidden
Place』ではないかと思います。
YouTubeでは、動画ナシのCD音源と、オフィシャルのPVの2通りがあるのですが、先入観ナシに聴くには、動画ナシのほうをおススメします。
Björk - Hidden Place
2. ダンサー・イン・ザ・ダーク
ビョークを語る上で避けて通れないのが、ラース・フォン・トリアー監督、ビョーク主演の、2000年製作のミュージカル映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』です。
映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」日本版劇場予告
彼女は全盲の主人公セルマを演じているのですが、この映画、2000年の第53回カンヌ国際映画祭では最高賞であるパルム・ドールを受賞し、ビョークは映画主演2作目で主演女優賞を獲得しています。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョーク
(出典:renote)
映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の評価はこのように非常に高いのですが、何と言っても、この映画は、「どこにも救いようがない名作」「観るに堪えない絶望的なシーン」の象徴的存在として有名です。
これもある意味、米国の『格差社会』をテーマにした映画です。
何度観ても、素晴らしい内容で、特にラストシーンは涙無しには耐えられません。
3. 『ユートピア』
前置きが長くなってしまいましたが。。。そのビョークの最も新しいアルバムが『ユートピア』(2017年)
です。
『ユートピア』では、ビョークが新たにフルートの演奏に挑戦しており、随所でその音色を聴くことができます。
このアルバムに収録されている2つの曲『Utopia』と『Losss』があまりにも衝撃的でした。
björk: utopia(PV)
私は最初に(何の予備知識もなく)この『Utopia』を聴いたときに、桃源郷的なフルートの調べに乗って、野鳥の鳴き声のようなリズミカルな効果音が響くこの曲に、すっかり心を奪われてしまいました。
そして、『Utopia』の余韻がずっと頭に響き続けて、同時に、何とも言えないノスタルジックな気分にさせらてしまったのです。
それは、人間の都合で徹底的に破壊された現在の自然の生態系は、もはや二度と回復することのないような、そんな感覚でした。
そして、この曲が、現代の地球環境破壊を、どんなメディアも霞んでしまうほど痛烈に批判しているようにも感じました。
新型コロナウィルスにしても、人間が自然の生態系を破壊したのがそもそもの元凶でしたね。
VOGUEのサイトの本人のインタビューでは、アルバム『ユートピア』について以下のようにコメントしています。
アルバム『ユートピア』に込めたメッセージは、「明るい未来を思い描く想像力を羽ばたかせよう!」というものだった。つまり、地球が直面する環境問題について、絶望感を抱いたり悲観するのではなく、前向きに解決策を考えよう、見つけようと、呼びかけたかった。過去を省みると、どうしてもそこに囚われてしまって次のステージにポジティブな想像を巡らせることが難しいけれど、このアルバムを通して辿り着きたかった場所とは、まさにそこだった。
このインタビュー記事を読むと、ビョークの意図は、地球環境破壊の批判ではなく、むしろ解決策を模索する前向きなメッセージだったことがわかります。
私の感性は、ビョークの意図したものとは違っていたようです。
もう一曲の『Losss』も強烈です。
björk: losss(PV)
こちらも、平和なフルートの調べに乗ってどこかしら寂し気な曲調のビョークの歌声が重なるのですが、背後にはナイン・インチ・ネイルズに代表されるインダストリアル・ロックのような、機械が発生する等間隔なノイズが徐々に迫ってきます。
上のPVでは残念ながら終盤が省略されていますが、下のフルバージョンでは、曲の終盤で機械ノイズが他の静寂なサウンドを圧倒して、やがてそれも収束し、サイレンの音だけが残ります。
björk: losss
これは、まさに現代の機械文明(資本主義文明)が地球上の自然を薙ぎ倒しながら増殖し、やがて機械文明自身がその破壊力のせいで自らの破滅を招き、最後にはサイレンの音(終焉の象徴)が訪れるような感じです。
自然破壊を繰り返し、人間の欲望を極限まで追求した資本主義の成れの果ての、ディストピアの世界。
好きなものを好きなときに好きなだけ消費(浪費)して、マシーンのような労働に従事する(もしくは逆に就く仕事もなく時間だけを持て余す)一方、医学の発達で寿命だけは延びるという現代社会は、まさに「今が」ディストピア状態なのかもしれません。
4. SDGs
以下Wikiより引用
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:
SDGs(エスディージーズ))とは、持続可能な開発のために国連が定める国際目標である。2015年9月の国連総会で採択された『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(Transforming
our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)
と題する成果文書で、2030年に向けた具体的行動指針として示された。
(引用おわり)
SDGs活動の象徴として、カラーのピンバッジをつけている人を街で見かけるようになりました。
Amazonでも売っています。
地球の環境保護問題もSDGsの一環なので、小泉進次郎環境大臣も公の場ではこのバッジをつけいていますね。
小泉環境大臣会見(令和3年6月22日)
骨太の方針、成長戦略、規制改革実施計画等の閣議決定について、とあります。
スターバックスが発表した、プラスチックのカップを、リサイクル(シェア)することでゴミを提言する話から始まり、地方創成の話など、現在の環境省の取り組みを説明しています。
小泉環境大臣といえば、2019年の史上最年少大臣就任直後に「環境問題はセクシーだ」とユニークな発言をして話題になりました。
かつては次期総理大臣として名前も挙がったほどの人気政治家でしたが、その後ワイドショーのネタにされたりして今はメディアの露出も減ってしまいましたね。
「環境問題がセクシー」かどうかは別として、日本が環境問題に真剣に取り組んで来なかった結果、今や環境後進国になってしまったのも周知の事実です(【単独インタビュー】小泉大臣に直撃、日本が環境先進国に返り咲くには?)。
これは何も小泉環境大臣に責任があるのではなく、過去長年にわたり、環境問題のような一国では解決できない国際的な問題に、歴代の首相と政府が積極的に向き合って来なかったツケだと思います。
(出典:ニュースイッチ)
また、菅義偉首相が、閣僚が参加する地球温暖化対策推進本部で、日本の2030年度における温室効果ガス削減目標を引き上げて、
「2030年度の排出量を13年度比で46%削減する。同時に、50%(削減)の高みに向けて挑戦を続ける」
と発表した(2021年4月22日)のは記憶に新しいですね。
(出典:日経ESG)
46%削減という目標が、何の科学的根拠もなく、単なる政治的判断でそういう発言になったということは、国民の誰もが思っていることですが、これも菅義偉首相ひとりの責任ではないと思います。
問題の根源は、ここ10年くらいの間に、日本国家がコロナやオリンピック、景気回復といった自国内の問題解決だけで手一杯になってしまい、かつてのように、世界的なリーダーシップを発揮するような立場を失ってしまったことにあるのではないでしょうか?
先月のG7では、菅首相が「オリンピック開催の支持を各国首脳から取り付けた」というニュースばかりが報道されました。
一方、G7初心者の菅首相が、世界のリーダー達の輪から外れてポツンと孤立していた姿も報道されました。
これは何を意味するのでしょうか?
日本は、もはや、諸外国から国際社会でのリーダーシップの期待をされなくなった地位に成り下がったのだと思います。
なので、もはやG7首脳会議に日本の首相が参加する必要はないと思います。
何も国際政治で主導権を取ろうとしなくとも、国内政治を堂々と優先して、北欧やスイスのような国を目指せばよいのですから。。。
環境問題に関しても、もはや諸外国は日本のリーダーシップなど期待していないようです。
自動車製造では世界一のトヨタを誇る一方、電気自動車の導入や、ガソリン代替のエネルギー政策、再生可能エネルギー推進では、日本は欧米に完全に後れを取ってしまいました。
コロナワクチンの開発に至っては、欧米が(軍事目的という背景はあったにせよ)長期的な視野を持って投資を続けていたのに対し、日本は早々に手を引き揚げてしまい、今やワクチン開発はロシアや中国、インドといった新興勢力国にも及ばない惨状です。
そもそも、環境大臣に小泉進次郎が選出されたのも、なかなか成果が出しにくく、政治家としては大した旨味も重要度もない環境大臣の役を押し付けて、小泉進次郎の鼻っ柱をくじいてやろうという作用が働いたのではないかと個人的には勘繰ってしまいます。
政府や役人だけの問題ではありません。
先日、「国家公務員、志望減少に危機感」という報道がありましたが、もはや一般国民も、政治を通して世の中を変えていこうという若い世代の風潮もすっかり退化してしまったようです。
資本主義活動を抑制して環境保護を最優先にすれば問題解決というような乱暴な考えは通用しないことは、以前の投稿でも書きました。
以下、上の投稿から抜粋します。
ここで一つの想像として、「快楽カプセル」というものを考えてみよう。つまり人間一人が入れるカプセルがあって、その中で仮想現実のゲームに浸っていると、そうした薬物の助けを借りて脳内の幸福物質(ドーパミン)などが最も効率良く分泌されるとするのである。そして両方の技術をどんどん洗練させていけば、肉体的に完全に無害なままで、カプセルの中で個人の短期的な幸福感が極大化されるようになるというわけである。
この場合、人々がずっとその快楽カプセルの中で過ごすようになれば、物理的なエネルギーも消費量も少ないので地球環境にかかる負担も最小限にできる。つまり環境問題に対する究極的な解決策だというわけである。
10〜20年後には日本の労働人口のおよそ49%が就いている職業において、AIで代替可能になるという野村総研の予測が正しければ、労働人口の半分を占める失業者は、快楽カプセルに入った生活をすることで、環境問題も解決するかもしれませんね。
。。ビョークの話から、大きく脱線してしまいました。
話を元に戻すと、アルバム『ユートピア』は必聴、個人的にはビョークの最高傑作だと思います。
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