[宇宙のランドスケープ] 現代物理学をわかりやすく解説した超力作 - 宇宙定数と人間原理の関係を解き明かす

ひも理論の先駆者レオナルド・サスキンドの『宇宙のランドスケープ』を読みました。


『宇宙のランドスケープ』
(レオナルド・サスキンド、2006年)


本著『宇宙のランドスケープ』は、500ページを超える力作です。


これまでにも宇宙論や現代物理学に関するポピュラー・サイエンス書をいろいろ読みました。


昨年(2021年)の秋には、宇宙論に関する新書5冊を一気読みして書評をブログにしています。

[宇宙はひとつだけではない] 宇宙論の新書シリーズその1 - 『不自然な宇宙』(須藤靖)

[時間と空間の終わり] 宇宙論の新書シリーズその2 - 『宇宙の果てになにがあるのか』(戸谷友則)

[人間原理と宇宙論] 宇宙論の新書シリーズその3 - 『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(青木薫)

[私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか] 宇宙論の新書シリーズその4 - 『マルチバース宇宙論入門』(野村泰紀)

[宇宙はひとつだけではない] 宇宙論の新書シリーズその1 - 『不自然な宇宙』(須藤靖)


相対性理論と量子力学がなぜ統合できないのか、アインシュタインの宇宙定数はなぜゼロではなく10⁻¹²⁰という極端に小さい値なのか(宇宙定数が10⁻¹²⁰よりもほんの1桁か2桁大きければ、銀河も星も惑星も形成されていない)。


そもそもなぜ宇宙はこれほどまでに精密に調整されているのか。。。


本著では、量子力学や不確定性原理といった現代物理学の基本を丁寧に紹介して、その偶然に潜む人間原理という驚くべき仮説を肯定的に解説します。


また、ひも理論といった最新の科学最前線についても触れ、ランドスケープという宇宙像を提唱しています。


内容が内容だけに、読了までに数か月を要しましたが、私のような門外漢が内容を理解するのは不可能。。。


それでも、ポピュラー・サイエンス書としては、これまで読んだ本のベストオブベスト、決定版と言って良いほどの素晴らしい本です。

0. 『宇宙のランドスケープ』

以下はアマゾンの書籍紹介からの引用です。


「宇宙はなぜこのようになっているのか」「宇宙に生命が存在できるのはなぜか」という誰の心の中にもある根本的な疑問を追求したポピュラー・サイエンス。

サスキンドはひも理論、インフレーション宇宙論、最新の宇宙観測結果に基づいて、この大いなる謎を探究する。本書で中心的な役割を果たすのは、ランドスケープと呼ぶ概念である。

これはひも理論の研究から生まれたもので、可能な物理法則の全体を指す。この宇宙の物理法則だけでなく、いっさいの可能な物理法則からなる巨大な空間である。サスキンドは物理法則の可能性全体の空間を「風景」に見立てることで、そこに山や、谷や、平原などを見出
す。

その「風景」の中で、宇宙はボール玉のように転がってゆく。この宇宙の歴史とは、サスキンドによれば、「インフレーションの棚」を転がってゆき、きわめて小さな宇宙定数を持つ谷で静止することだったという。

しかし、この宇宙は、もっとはるかに広大な、いわゆる「メガバース」の中のほんのちっぽけな片隅を占めるにすぎない。メガバースの中で、無数の種類の小宇宙が無限回出現するという新しい宇宙像にたどり着く。 世界天文年2009日本委員会の公認書籍。

(目次)
  1. ファインマンが描いた世界
  2. 物理学の難問中の難問
  3. ランドスケープを転がる宇宙
  4. 唯一性とエレガンスの神話
  5. 晴天の霹靂
  6. ありそうもない偶然を解き明かす
  7. ゴムひもで動く世界
  8. ひも理論の復活
  9. 理論の力だけでどこまで行けるか
  10. ルーブ・ゴールドバーグ機械の背後に
  11. 泡を吹き出す宇宙
  12. ブラックホール戦争
  13. 要約
546ページの大作ですが、難解な技術用語や数式を極力使わずに、ひも理論、人間原理、インフレーション宇宙論、素粒子論といった現代物理学の最先端テーマを網羅しています。

Amazonのカスタマーレビューでは、星5つ中4.7という非常に高い評価を受けています。

以下は著者のレオナルド・サスキンドの紹介(本著より抜粋)です。

レオナルド・サスキンド

スタンフォード大学の理論物理学教授。ひも理論の先駆者として知られている。

1969年、南部楊一郎と同じ時期にハドロンのひも理論に到達した。

ブラックホールに吸い込まれた量子の情報は失われると主張するスティーブン・ホーキングに対抗して、ゲラルド・トフーフトとともに情報は失われないとする論陣を張った(「ブラックホール戦争」)。

トフーフトとの共同研究の成果として、ブラックホールの奇妙な相補性の原理やホログラフィック原理を見出し、理論物理学に深い影響を与えた。

1940年1月1日生まれ。82歳という高齢にも関わらず、今でも精力的に研究活動を続けているようです。

【以下の各章の要点は、断片的な文章かつ支離滅裂な点をご了承ください】

1. ファインマンが描いた世界

粒子の振る舞いを図式化するファインマン・ダイアグラムの具体的な説明がわかりやすかったです。

ダーウィンの進化論についても随所で触れられており、現代物理学との関連性がある点も興味深いです。

宇宙の物質の90%がダークマター
宇宙のエネルギーの70%がダークエネルギー

場の量子論
素粒子物理学

超新星爆発 陽子、中性子、電子、光子、重力、ニュートリノ

アインシュタインの宇宙定数 = 真空エネルギーの密度 10⁻¹²⁰

ダーウィンの進化論
- 情報の複製は決して完璧ではない(突然変異)
- 競争原理

宇宙定数は一種の反重力であり、実世界には絶対に存在し得ないものと考えられている

ニュートンの超決定論的自然観 vs アインシュタインの量子力学(確率と不確定性)

ハイゼンベルクの不確定性原理 最初の位置と速度のデータから未来を予測することができない

位置の不確定性と運動量の不確定性の積は、プランク定数(6.62607004 × 10⁻³⁴ m²kg/s)より必ず大きくなる

自発的対称性の破れ

素粒子 = クオークとレプトンとボソン

素粒子
- 物質を構成する粒子(電子、クオーク、ニュートリノ)
- 力を媒介する粒子(グルーオン、ウィークボソン、光子)
- 質量の起源となる 粒子(ヒッグスボゾン=ヒッグス粒子)

- ハドロン = 陽子と中性子
- クォーク = 6種類、陽子や中性子を構成する

量子のゆらぎ = 零点エネルギー(運動エネルギー)、絶対零度であってもエネルギーがある

エネルギーと時間の不確定性原理

ある事象が起こる正確な時間と、それに関与する物体の正確なエネルギーの両方を確定することは不可能である

電場と磁場は同時に確定できない

真空エネルギー

電磁放射 = 振動現象

振動エネルギー = プランク定数 x 振動数

スリットの実験 打ち消し合う干渉

ファインマン・ダイアグラム = 素粒子の相互作用の事象を図式化したもの



量子電磁気学(QED)電子と光子のみ

伝搬関数
頂点ダイアグラム
結合定数

光子放出 = 電子の運動が突然妨害されると光子を振りまく

荷電粒子(電子、陽子)には、必ず反粒子がある

粒子と反粒子が結合して消えるときに、光子を放出する

陽電子

粒子間の力はダイアグラムには入れる必要がない

電子の間の電気力は、一つの電子が光子を放出して、それをもう一つの電子が吸収する

電子が静止していれば電気力、動いていればさらに磁力が加わる

光子が飛び回るのは、電子だけでなく、陽子や原子核もOK

アインシュタイン「神はサイコロを振らない」

微細構造定数(=結合定数) アルファ(α)1/137 = 電子が光子を放出する確率

量子色力学(QCD)電子と光子に加えて、たくさんの新しい粒子

電子(QED)= クオーク(QCD)
光子(QED)= グルーオン(QCD)

ニュートリノと電子 = 中性子と陽子の関係に似ている

ニュートリノ(僅かな質量)はほとんど何もしない

電子はWボソンを放出してニュートリノになる
中性子はWボソンを放出して電子になる

微細構造定数は、”観測される宇宙”においては、時や場所で変化しない


重力は標準模型の一部と見なされない

重力と、量子力学に従う素粒子の微視的な世界との関係がまだ解明されていない

2. 物理学の難問中の難問

アインシュタインの宇宙定数についての基礎勉強。この章を読むと、わかった気になりますが、おそらく何もわかっていない 笑

アインシュタインの自然定数λ(ラムダ)

引力を打ち消すある種の斥力があるはず

ラムダが正の数なら、距離が遠のくにつれて強くなる万有斥力

アインシュタインの宇宙は不安定な釣り合いだった → ハッブルの宇宙膨張の発見でラムダはゼロに

宇宙定数 = 真空エネルギー(量子のゆらぎ)場の量子論

真空 = エネルギーが最小の状態 (エネルギーがゼロの状態ではない)

- エネルギーは重力作用を及ぼす(E=mc²)
- エネルギーは重力場の源である

真空のエネルギー = すべての仮想粒子(電子、陽電子、光子、ニュートリノ、重力子)のエネルギーの合計

非常に高エネルギーの仮想粒子の振る舞いは、実験ができないため、良くわかっていない(二つの高エネルギー粒子が衝突するとブラックホールができてしまう)

ボゾン 光子、重力子、グルーオン、Wボゾン、Zボゾン、ヒッグス粒子
フェルミオン 電子、ニュートリノ、ミューオン、クオーク

フェルミオンは同じ種類が同じ量子状態を占めることはできないが、ボゾンはできる

真空中
ボゾンは正のエネルギー
フェルミオンは負のエネルギー

フェルミオンは物質を構成する要素(陽子、中性子、クオークなど)
ボゾンはそれを結合させるためのフェルミオンの間でやりとりされる要素(光子、グルーオンなど)

すべて相殺にはなぜかならない

超対称性理論では真空エネルギーは相殺し合って存在しない

人間原理:宇宙の性質の一部や物理法則が真実なのは、そうでないと私たちが存在できないからだという原理

なぜ宇宙は大きいのか?
なぜ電子は存在するのか?
空間はなぜ三次元なのか?

宇宙定数が観測されるユニットの限界の10⁻¹²⁰よりも大きくなると、生命にとって破滅的になってしまう

過去において完全に均質だったら、塊を形成することができなかった

ワインバーグは、宇宙定数が観測的な限界よりもほんの1桁か2桁大きければ、銀河も星も惑星も形成されなかったことを発見した!

宇宙定数(真空エネルギー)が負の場合(フェルミオンのほうがボゾンより影響が大きい場合)は、宇宙はビッグクランチになってやがて潰れてしまう。

ワインバーグの予測
人間原理が正しければ、真空エネルギーはゼロではなく、たぶん1ユニットの10⁻¹²⁰よりも極端に小さくはないことを天文学者は発見するだろう、と。

プランク定数
プランク長 10⁻³³ cm(量子のゆらぎを顕微鏡で見ることができる)
プランク時間 10⁻⁴² 秒(変動するものが一定な時間)
プランク質量(エネルギー) 10⁻⁵ g(二つの粒子が衝突してブラックホールになるエネルギー) 

1プランク質量が最小のブラックホールで、1プランク長の大きさで、消滅するまでに1プランク時間存在する。

素粒子論と重力理論を組み合わせると、宇宙定数の脅威が、銀河、星、惑星を破壊するだけでなく、原子、さらには陽子と中性子さえ破壊するほど強大である

ただし、ボゾン、フェルミオン、質量と結合定数がうまく一致協力して、最初の小数点以下119桁を相殺すれば、そうはならない。

そんなとても起こりそうもない唯一無二の物理法則が存在するのか?

特別に稀な場所がメガバースにあるのか? →ランドスケープのアイデアに繋がる

3. ランドスケープを転がる宇宙

著者の提唱するランドスケープ宇宙の概要が出てきます。

メガバースと似ていますが、後述の泡を吹き出す宇宙というコンセプトは説得力があります。

ランドスケープのほぼすべてが生命の存在できない環境

電子の質量、光子の質量、微細構造定数、クオークやニュートリノの種類、空間の次元数、すべてが異なる真空(= 世界)

ヒッグス粒子とヒッグス場
ヒッグス場がないと標準模型が数学的に一貫しない(計算結果が無限大や、負の確率となってしまう)
素粒子に重量を与えるためにヒッグス場が必要だった
粒子の動きに対してヒッグス流体が抵抗を生じさせるような感じ
ヒッグス場をゼロにしたら、電子の質量もゼロになり、原子も分子も存在せず、生命も存在できない

磁場とランドスケープ 高度を備えた2次元のランドスケープのグラフ


電場と磁場はベクトル vs スカラー場(ヒッグス場)

重力子(まだ検出されていない)は、光子と同様に質量を持たない

電子の質量はその電子が置かれているヒッグス場の値によって決まる

ヒッグススケープのグラフ ふたつの谷にはさまれた丘の頂上(ヒッグス場がゼロのポイント)

エネルギーが最低になる谷の底が人間が住める場所

ビッグバン直後は、宇宙全体からヒッグス場を一掃できるだけのエネルギー(1cm³あたり太陽100万年分のエネルギー)があった

ヒッグス場がゼロだったとき(丘の一番上)に宇宙が誕生した

ヒッグススケープの極小値が10⁻¹²⁰となる、極めて小さいエネルギーを持つ確率は非常に小さい

ひも理論では、500次元の空間があり、10⁵⁰⁰もの極小値があり、それぞれ独自の物理法則と自然定数がある

4. 唯一性とエレガンスの神話

ルーブ・ゴールドバーグ機械(ルーブ・ゴールドバーグ・マシン)- 本著で比喩的に再三登場するこの単語は、ピタゴラスイッチや、バックトゥザフューチャーに出てくるドクの家の仕掛けのようなものです。

この世界の物理法則が、エレガントとはかけ離れたルーブ・ゴールドバーグ機械のような代物という事実から、人間原理を信じざるを得ません。。。

物理学者の希望と抱負

方程式はエレガントだというもの、簡潔な方程式を少しだけ使って表現できるもの

そして唯一性

ルーブ・ゴールドバーグ機械

一般相対性理論は最もエレガント、逆に最も醜いのは原子核物理学、科学、周期表(大きいほど例外や注釈が増える)

ケプラーの宇宙模型(5つの正多面体で惑星 金星 火星 木星 土星 地球を表す)

標準模型での約30個のパラメータ、しかし重力(重力子)だけは含まれていない

素粒子物理学のほとんどの目的に関して、重力は桁違いに小さいので少しも重要ではない

一般相対性理論(重力)と量子論(量子力学)の統合に向けて

ひも理論の登場

一般相対性理論と量子論を矛盾なく統合する数学的な理論

ひも理論の粒子は、フェルミオンとボゾン

ひも理論はエレガントだろうか?唯一性があるだろうか? まだ方程式さえわかっていない

エレガントでないことと、唯一性の欠如が、実はひも理論の強みとみなされるのでは?

(標準模型の素粒子の質量一覧) 

いっそルーブ・ゴールドバーグ理論とでも呼ぶのがふさわしい

驚くべき偶然の一致
- 宇宙は精密に調整されている 膨張速度は早くも遅くもなく絶妙のスピードだった
- 初期の宇宙は滑らかすぎず、塊が多過ぎず、物質の凝縮にちょうどよかった
- 重力の強さは絶妙である 知的な生命を生み出す数十億年の恒星の寿命
- 微視的な物理法則も絶妙 炭素や酸素など生命に必要な元素が恒星のなかでうまい具合に調理されて、超新星爆発で宇宙のなかに飛び散ることができる

基本的な設定があまりにも都合よすぎて、真実とは思えない

自然の法則は、数学的な簡易さやエレガンスというよりも、私たちの存在にあわせて特別に作られたように見える

5. 青天の霹靂

この章は目から鱗でした。

ハッブル定数と回転する銀河の速度から宇宙定数を計算すると、ワインバーグの「真空エネルギーはゼロではなく、たぶん1ユニットの10⁻¹²⁰よりも極端に小さくはない」という人間原理から予測された値と合致するというのは、まさに驚愕の事実です。

一方、、宇宙マイクロ波背景放射のデータでは宇宙の曲率が完全にゼロ(宇宙定数はゼロ)という矛盾があるのも謎ですね。。。

銀河は、その距離とハッブル定数と呼ばれる数値パラメータの積に等しい速度で、私たちから遠ざかっている

ハッブル定数 = 1メガパーセク(300万光年)あたり75km/s(測定値)= 10分で地球を1周

曲率 3種類の幾何 球面(常にプラス) 平面(ゼロ) 双曲型幾何(負の場所がある)

3種類は常に均質である、三次元空間である

3種類の宇宙の終焉(宇宙は開いているのか、閉じているのか、平坦なのか)
- ビッグクランチ k=1
- ビッグリップ k=-1
- 平坦な宇宙 永久に膨張しながら速度も永久に減少 k=0

アンドロメダ銀河は重力の影響で逆に地球に近づいている

観測では
宇宙の平均質量密度 = 1個の陽子質量/1m³
宇宙を閉じるのに必要な値の1/50しかない = ビッグリップ(永久に膨張を続ける)

実際には
回転する銀河の速度を計算すると。。。なんと10倍もの重さが!
質量の残りの90%がダークマター

でもやはり
宇宙を閉じるのに必要な値の1/5しかない = ビッグリップ(永久に膨張を続ける)

ハッブル定数の厳密な測定値がもっと小さければ、ビッグクランチになるが。。。

曲率を測定するもうひとつの方法 三角形の内角の和を測定(現実にはムリ)

代わりに宇宙マイクロ波背景放射を測定すると。。。なんとピッタリ180度!

質量の測定では開いている
曲率の測定では平坦
二つの答えはなぜか一致しない

ハッブル定数(75km/s)で時間を逆廻しにすると、150億年で一点に集中 = 宇宙の年齢
重力による加速を加味すると、約100億年

p197
普通の物質とダークマタ―を合計すると、宇宙を平坦または閉じ込めるために必要とされる質量の約30%になる。 ⇒ あれ?「宇宙を閉じるのに必要な値の1/5しかない」(20%)なのでは?

足りない70%を宇宙定数(斥力)として与えてしまう

再び。。。宇宙定数を含めて再計算すると。。。

ハッブル定数(75km/s)で時間を逆廻し
重力による加速を加味すると、約100億年 ⇒ 約140億年に!

ちょうどうまくいく!

宇宙のエネルギーの70%に相当する小さな宇宙定数の存在は、宇宙論の二つの最大の難問
- 観測する宇宙は平坦なのに、宇宙を平坦にするのに不十分
- 最も古い星が宇宙の年齢よりも古い
を解決する

宇宙定数はゼロではない
最初の小数点以下119桁は相殺されるが、120桁めは信じられないことにゼロではない!

「さらに面白いことに、その値は、ワインバーグが人間原理に基づくものであろうとして予言した値とほぼ一致する。。。!」

予言した値 = 宇宙定数が観測されるユニットの限界の10⁻¹²⁰よりも大きくなると、生命にとって破滅的になってしまう

ワインバーグは、密度の不均一さ(10⁻⁵、10万分の1)があって初めて銀河や星や惑星が形成されるという発見をした

密度の不均一さ = マイクロ波の強度の違い(10⁻⁵、10万分の1)WMAP測定でわずかな違いを検出

(前述)代わりに宇宙マイクロ波背景放射を測定すると。。。なんとピッタリ180度!

最大の宇宙マイクロ波背景放射の塊の見かけの大きさ(2度、月とほぼ同じ)で測定

200億光年のスケールでは完全に平坦

真空エネルギーは、空間が膨張してもエネルギー密度は変わらない

十分な膨張の後に、真空エネルギーを除くすべての形のエネルギーは薄まる

初期と後期の宇宙で宇宙定数が違う??

現在の宇宙論はすべて、宇宙定数が一つの値からはるかに小さな値へと変化する「転がり」の期間に起こったことを述べている!?

宇宙は特別に設計されたように見える、なぜ?

6. ありそうもない偶然を解き明かす

荷電粒子の間の電気力は、荷電粒子の間で交換される光子によって引き起こされる

電子はフェルミオン(パウリの原理:一つの量子状態には一つしか存在できない)でなければならない

白色矮星は、電子が押しつぶされているが、パウリの排他原理で、ある程度以上は押しつぶされない

白色矮星からブラックホールになる途中で、高密度な中性子物質の固体のボールになって、弱い相互作用で、陽子が中性子になるときに、陽電子とニュートリノを放出する。陽電子はすぐに星の中の電子と結合して消滅するが、ニュートリノは巨大な圧力を生み出して、星の外側を吹き飛ばす(超新星爆発)。

約10万分の1のでこぼここそが、生命が発生するのに必要不可欠である

物質と反物質、粒子と反粒子

「禁止されていないものは、すべて義務である」(T.H.ホワイト)永遠の王アーサーの著者

中性子は不安定(原子核のなかに拘束されていなければ12分間で消滅する)

陽子は安定(しかし崩壊して光子と陽電子になる)普通の状態でも気の長くなる時間(宇宙の年齢の何倍も)で自然崩壊するかもしれない、少なくとも140億年は崩壊しない

人間の体には10²⁸個の陽子がある

陽子の寿命は実験によって崩壊が確認できないことから10³³年より長いことは確実

以下の章はランドスケープを示す証拠

7. ゴムひもで動く世界

ここからの3章をじっくり読むと、ひも理論、超ひも理論、M理論、カラビ・ヤウ空間が理解できた気にさせられます。それぐらい、丁寧にわかりやすく解説されています。

ひも理論の章その1

ハドロン = クオーク、反クオーク、およびグルーオンでつくられている粒子
例:陽子、中性子
大きさ:原子の約10万分の一

弱い相互作用 ニュートリノ間
強い相互作用 原子核を結合させている力

ゴムひも理論

ハドロンのひも クオークの間を結びつける

振動するひも

ハドロン
- バリオン(陽子、中性子)どちらも3個のクオークからなる
- 中間子(クオーク1個と反クオーク1個)
- グルーボール(端もクオークもない閉じたひものループ)

3本のひもが中心で結合し、その端に3個のクオークがある、弾性を持った量子投げ縄


励起状態 エネルギー

中間子がグルーボールになる


ひも理論は、ファインマン・ダイアグラムの一般化
ひもがそれぞれの点粒子にとって代わるもの

世界線、世界管、世界面

Yジョイント


QCDとひも理論は同じ理論の側面

ひも理論は、次元の数が9プラス1のときしかうまくいかない

核力、電磁気力、重力

ひも理論の当初の目的は、ハドロンを解明することだった ⇒ 失敗

サスキンドと南部の発見したものは、ボゾンひも理論

8. ひも理論の復活

ひも理論の章その2

10次元の空間と1次元の時間を持つ超ひも理論によって、従来の量子電磁気学ではうまく説明できなかった重力までもが統合して説明できるようになるとは驚きです!

次元のコンパクト化、プランク長まで縮小すると次元を識別できなくなる

空間に余分な観測されない次元がある

空間が3プラス1次元であれば、アインシュタインの重力場とマクスウェルの電磁場も包括できる(カルツァ)

コンパクト化された方向へのスピン 電荷のある粒子とない粒子の理由が説明できる

円筒状のつつにひもが巻き付いている


6次元で巻き上げる方法は何百万通りもある カラビ・ヤウ空間

細いトーラス、太いトーラス、ねじれたトーラス

パラメータをモジュライと呼ぶ

典型的なカラビ・ヤウ空間には何百ものモジュライがある


コンパクト化された次元の大きさがさまざまな結合定数と質量を決定する、それは変化する

モジュライが何百もの次元があるランドスケープを形成する

超対称性は存在しない

併進と回転の対称性

超ひも理論は、ボゾンだけでなく、フェルミオンも総括する新バージョン

ボゾンとフェルミオンの間の対称性

粒子に超対称性のぺアがあれば、宇宙定数はゼロになる

超対称性パートナーは発見されていない、ひょっとしたら歪んでいるから?

超対称性の世界は非常にエレガントであるが、生命は存在できない

ひも理論の種類
タイプIa Ib 閉じたひもと開いたひもを扱う
タイプIIa IIb ヘテロティック 閉じたひものみ扱う

量子電磁気学では重力は「任意」に対して、ひも理論では重力(閉じたひも)は「必須」

M理論の登場(ウィッテン, 1995年)
10次元の空間と1次元の時間を持つ理論
M理論は「ひも」ではなく「膜」(弾性を持った2次元のシート)に関する理論
ひもは実際には非常に薄いリボン

9. 理論の力だけでどこまで行けるか

(省略)

10. ルーブ・ゴールドバーグ機会の背後に

ひも理論の章その3

Dブレーンのモデルで、閉じたひもでブレーンに固定できない重力だけが、異なる宇宙間を行ったり来たりすることができる。

すなわち、これこそがダークマターの正体では!!!

そのような摩訶不思議な世界を想像するだけで、ワクワクしてきますね。初めてダークマターの正体を理解できた(ような気がするだけですが)。笑

ひも理論のランドスケープには、驚くべき数の多様な「谷」がある (単なる真空ではなく)

多様な谷: 空間の余分な6次元を隠す、小さな、巻き上げられた形状のとてつもない複雑さ

Dブレーン(ディリクレ・ブレーン)
ひもが終わる点、線、面のこと

ひもがブレーンの上を動き回っているが、離れることはできない


重力子は端のないひもなので、ブレーンに固定できない

私たちは、余分な6次元を持つ空間に浮かぶブレーン世界に住んでいる

こちら側の光子はこちらのブレーンにくっついており、あちら側の光子はあちらのブレーンにくっついているので私たちには見えない

閉じたひもでつくられた重力が、ブレーン間のギャップを超えて行ったり来たりしている
=ダークマター?

フラックス:スカラー場 電場と磁場
コニフォールド特異点 円錐特異点(フットボールの球)

KKLT模型
反Dブレーン

一つのカラビ・ヤウ空間の中にあるドーナツ穴をフラックスで満たすとする
二つの穴とそれぞれに0から9の間のフラックスがある場合 = 10²=100通り
五百の穴だったら。。。10⁵⁰⁰もの真空エネルギーの値を取り得る

「生命の窓」人間原理的な選択の範囲に入ってくるのは、10¹²⁰個の谷に1個の割合

11. 泡を吹き出す宇宙

かなり難解な内容です。。。インフレーションとランドスケープの遷移の関係が頭にスッキリと入りません。再読が必要。

過冷却された水、沸点以上に加熱された水
準安定性

量子ゆらぎによって空間の小さな泡が絶え間なく生み出される

ド・シッター空間 = エネルギーも重力作用をする物質もなく、真空エネルギー(宇宙定数)だけがある空間

空間の中にいる観測者

谷に落ちて空間の一片はそこに留まり永久にインフレーションを続ける


空間のクローン化

メガバース = クローン化によって繁殖する有機体の群れ 領域を自己増殖する

超対称的な領域(宇宙定数ゼロ)は宇宙の墓場 泡の繁殖が終わる

近くの谷は似ていない

新しいルーブ・ゴールドバーグ機械が(新しい物理法則とともに)生み出された

負の曲率を持つ無限の宇宙 (泡の中の人から見る場合)
エッシャーのリミット・サークル: 均一に負の曲率を持つ空間

拡大する泡に呑み込まれる未来 負の曲率のポケット宇宙に、超対称性の宇宙に

泡に呑み込まれるのはいつか?明日か?

量子力学から確率を求めると、千兆年以内に起こる可能性は低い
1ゴーグルプレックス年以上はかかる

多世界解釈

量子力学と波動関数、確率、パラレルワールド(あとは難解すぎる)

12. ブラックホール戦争

最後に重要なホログラフィック原理が紹介されていますが、ホーキングとのブラックホール戦争とは直接関係が薄いのでは?

ホーキング放射

内部からの情報がホーキング放射と一緒に地平線から脱出することはできない、ブラックホールがなくなった瞬間に消滅する

一般相対性理論:情報は地平線を通ってブラックホールの奥深くに落ちる(中の人)
量子力学:ブラックホールの外部に残っていなければならない(外の人)

シャーロックホームズの名言
「不可能なものをすべて消去すれば、残ったものが真実なんだ。たとえそれがどれほどありそうもないことであっても」

ハイゼンベルクの不確定性原理

相補性のパラドックス

外の人と中の人は、お互いに永久に接触ができない

ホログラフィック原理

ホログラム ボクセル 膨大な3次元情報

ホログラフィック画像とブラックホールの関係

世界は一種のホログラフィック画像である

ブラックホールの相補性 = 同じホログラムを基にした異なるホログラフィック画像

13. 要約

偉大な物理学者たちの功績の説明が中心ですが、興味深いトピックがたくさん出てきます。

新しい宇宙がブラックホールの内部で生まれる?

そのブラックホールも宇宙の内部にあり。。。と複製が次々と。。。

宇宙はブラックホールを生み出すために調整される

無限大の数を比較するという問題 自然数と偶数はどちらが多いか?どちらも同じ!

【以上です】


最後にホーキング博士とのブラックホール戦争の話が出てきました。


次は『ブラックホール戦争 スティーブン・ホーキングとの20年越しの闘い』を読もうと思います。


【宇宙は本当にひとつなのか】村山博士の著書と科学番組「コズミックフロント」の新宇宙論

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