もうじきクリスマスですね。
毎年クリスマスの季節には、J.S.バッハの声楽曲を聴きたくなります。
クリスマスシーズンに相応しいバッハの声楽曲のなかから、おススメの『カンタータ』と『クリスマス・オラトリオ』を以下に紹介します。
1. バッハの声楽曲
バッハの膨大な作品のなかで、声楽曲(器楽に加えて独唱や合唱といった人の声が加わる作品群)は、その中心的な存在です。
バッハの声楽曲はどれも傑作揃いですが、大別すると以下のような作品があります。
- カンタータ
- クリスマス・オラトリオ
- 復活祭オラトリオ
- マニフィカト
- ミサ・ブレヴィス
- モテット
- マタイ受難曲
- ヨハネ受難曲
- ロ短調ミサ曲
以下では、代表的な作品である『カンタータ』と『クリスマス・オラトリオ』を紹介します。
2. カンタータ
カンタータとは主に17~18世紀に発展した声楽曲のジャンルのひとつで、独唱・合唱及び器楽伴奏で構成される楽曲です。
以下はCotocoto♪Classicからの引用です。
カンタータはもともと、ある基本の旋律を少しずつ変化させながら繰り返すという有節変奏形式の声楽曲でした。
しかし、1650年頃からオペラの影響を受け、いくつかの楽章で構成されるようになります。楽章の形式には次のようなものがあります。
レチタティーヴォ
オペラで登場する人物の対話部分に使われる歌唱様式です。
自然な話し言葉のリズムやアクセントを真似たり、強調したりします。
アリア
叙情的かつ旋律的な表現に富んだ独唱による歌唱様式です。心情をたっぷりと表現する部分に用いられます。
コラール
ドイツ・プロテスタント教会で歌われる讃美歌です。
カトリック教会では基本的に一般の人々が礼拝音楽に参加することはありませんでしたが、マルティン・ルターの宗教改革によって、民衆が覚え歌いやすいドイツ語の讃美歌が生まれました。
18世紀前半にドイツで発展した教会カンタータに取り入れられました。
バッハは200~300曲ものカンタータを残していますが、バッハのカンタータは主に、教会カンタータと世俗カンタータの2種類に分けることができます。
教会カンタータ
カンタータはイタリアで誕生し、貴族の家で催されるパーティなどで演奏されていました。
しかし、17世紀ドイツ中北部のプロテスタント地域では、礼拝音楽として独自の教会音楽が生まれます。それが教会カンタータです。
バッハは、イタリアのレチタティーヴォやアリアなどの形式を取り入れたり、コラールを加えたりしながら、時代とともに教会カンタータを変化させていき、200曲もの教会カンタータを残しました。
世俗カンタータ
世俗カンタータは、一般の演奏会や特別な行事のために作られたカンタータです。
貴族のパーティ用音楽としてイタリアで生まれた本来のカンタータの姿に近いものと言えるでしょう。
バッハの世俗カンタータでは、22曲が完全な形として残っています。
(引用おわり)
バッハのカンタータで最も有名なのは、おそらくBWV 147
「心と口と行いと生命持て」の第10曲
コラール合唱「イエスは変わらざるわが喜び」(Jesus bleibet meine Freude)
ではないでしょうか。
このコラールは、『主よ、人の望みの喜びよ』の名で広く親しまれています。
J.S.Bach - ”Jesus bleibet meine Freude" - BWV147 - Harnoncourt
3. クリスマス・オラトリオ
クリスマス・オラトリオというのは、聖書を元に「台詞(セリフ)」を主体にしたオペラと言えば分かりやすいかもしれません。
バッハの『クリスマス・オラトリオ』 BWV 248 は、ヘンデルの『メサイア』と双璧をなすクリスマス・オラトリオの傑作です。
『クリスマス・オラトリオ』(独:Weihnachts-Oratorium, 英:Christmas
Oratorio) BWV 248
は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが1734年に作曲したオラトリオである。教会でクリスマスシーズン(クリスマスの12日,
12月25日~1月6日)に、合唱団、独唱陣そしてオーケストラにより演奏するために作曲された。現代においては、例えばドイツではクリスマスシーズンに教会でミサとして、また12月にコンサートホールで演奏会形式でも広く演奏される。
概要
ドイツ語の歌詞による全6部(計64曲)から成るカンタータ集であり、演奏する際は教会暦に沿ってクリスマス(12月25日)から顕現節(1月6日)の内、日曜と祝日の計6日間に全6部を1日1部ずつ行うが(下記構成参照)、現代においては、コンサートなどでは全6部を休憩をはさみ、一度に演奏することが一般的である。また、年末に第1部から第3部、年明けに第4部から第6部など分割して演奏される事もある。
バッハはライプツィヒの聖トーマス教会の聖歌隊を率いて、同地の聖ニコライ教会と聖トーマス教会の2つの教会を往復しつつ、このオラトリオを演奏したという。
バッハはオラトリオと題する作品を1734年から1735年にかけて3つ作曲しているが、3つのオラトリオのうちの1つはクリスマスから顕現節までの祝日のためのこの『クリスマス・オラトリオ』で、残る2つは復活祭のための『復活祭オラトリオ』(BWV
249)と、昇天祭のための『昇天祭オラトリオ』(BWV 11)である。
『クリスマス・オラトリオ』は、バッハの受難曲同様にルカによる福音書、マタイによる福音書など、新約聖書の文章が福音史家などによって語られることでストーリィが進められる形式を取っており、楽曲の合唱曲とアリアの大半と器楽伴奏つきレチタティーヴォの一部は旧作のカンタータからの転用で、第1部から第4部の合唱曲やアリアのもとになったのは2つの世俗カンタータ『岐路に立つヘラクレス』(BWV
213)と『太鼓よ轟け、ラッパよ響け』(BWV
214)の音楽である。改作した『クリスマス・オラトリオ』は、原曲のカンタータからの転用が自然に行われており、両者がよく対応しているため、バッハは2つの世俗カンタータを作曲した1733年に再度クリスマス用の宗教曲に転用する構想を予め練っていたと考えられている。
(引用おわり)
4. ガーディナー指揮イギリス・バロック管弦楽団
ジョン・エリオット・ガーディナーは、イギリスの指揮者です。
ジョン・エリオット・ガーディナー
1943年英国ドーセット州生まれ。15歳から合唱指揮をはじめ、ケンブリッジ大学在学中の64年にモンテヴェルディ合唱団を結成しました。
卒業後キングス・カレッジで古楽研究家サーストン・ダートに学び、1968年にモンテヴェルディ管弦楽団を創設、古楽演奏の新星として活躍しました。
1978年にイギリス・バロック管弦楽団を結成し、歌劇も含めたバロックからロマン派まで、斬新でシャープな演奏を繰り広げています。
英国王立音楽アカデミー、キングスカレッジ・ロンドン、英国アカデミー、キングスカレッジ・ケンブリッジの名誉会員。1990年に大英帝国勲章、2005年にはドイツ連邦共和国の一等功労十字章を授与されました。
そのジョン・エリオット・ガーディナーがイギリス・バロック管弦楽団を指揮したバッハの主要な声楽曲が収められているのが、こちらの
"Sacred Masterpieces Cantatas"です。
以下はAmazonの商品説明の翻訳です。
この限定版の22枚の CD ボックス セットには、ジョン エリオット
ガーディナーが指揮し、モンテヴェルディ合唱団とイングリッシュ バロック
ソロイスツが演奏するバッハの宗教的傑作とカンタータが収められています。
このセットの最初の 10 枚の CD
は、バッハの主要な合唱曲の定評ある演奏で、「これらの作品の第一候補」
(ペンギン ガイド) とされており、現代の最高録音の 1 つです。
これらの録音に加えて、2000
年のガーディナーの「巡礼」で録音されたバッハのカンタータの同様に優れた録音が収められた
12 枚の CD が付属します。
クリスマス
オラトリオ、マタイ受難曲、ヨハネ受難曲、ロ短調ミサの録音が含まれます。
教会暦全体とその他の行事を網羅した 37
曲のカンタータ、頌歌、モテットの幅広いセレクション。Nun komm、der Heiden
Heiland、Wachet auf、Herz und Mund und Tat und Leben、Ich habe genug
などの人気曲が含まれています。
ボーカル ソリストは、ナンシー アルジェンタ、オラフ ベア、バーバラ
ボニー、マイケル チャンス、ベルナルダ フィンク、マグダレーナ
コゼナー、デレク リー ラギン、サラ ミンガルド、アンネ ゾフィー フォン
オッター、マーク パドモア、アンソニー ロルフ ジョンソン、アンドレアス
シュミット、スティーブン ヴァーコーです。
これらの尊敬される録音は、1980 年代初頭から 2000
年にかけて行われました。このセットは、クラシックなキャップボックスに収められ、全トラック
リスト (テキストは Web リンクから入手可能) を含む 32
ページのブックレットが付属します。
(翻訳おわり)
以下では、この22CDボックスのなかから、おススメの曲をピックアップして紹介します。
ガーディナー指揮イギリス・バロック管弦楽団の22CDボックス
"Sacred Masterpieces Cantatas"
5. ガーディナー盤の教会カンタータ10選
以下では、収録されているバッハの教会カンタータのなかから、独断に基づいて珠玉の10の作品(アリア、合唱曲など)を選びました。
5.1. BWV 36 (「喜び勇みて羽ばたき昇れ」Schwingt Freudig Euch Empor) - Aria (Baritone): "Wilkommen, Werter Schatz!"
Willkommen, werter Schatz!
Die Lieb und Glaube machet Platz
Vor dich in meinem Herzen rein,
Zieh bei mir ein!
来たれ とうとき 主 来たれ わが主
愛と まことは
きよき み座を そなえん
わが 心の うちに 入りたまえ
BWV 36は、待降節カンタータのひとつです。
待降節(たいこうせつ)とは、キリスト教の教会暦において、イエス・キリストの降誕(クリスマス)を待ち望む期間を意味します。
待降節の期間は、11月30日に最も近い日曜日からクリスマスの前日までで、4回の主日を経た後にクリスマスを迎えます。
待降節の期間には、クリスマスの飾り付けが始まり、ツリーやリース、アドヴェント・クランツなどが飾られます。
まさに今の時期にぴったりのカンタータですね!
J. S. BACH, Cantata «Schwingt freudig euch empor»
BWV 36 (John Eliot Gardiner)
5.2. BWV 36 ( 「喜び勇みて羽ばたき昇れ」Schwingt Freudig Euch Empor) - Aria (Soprano): "Auch Mit Gedämpften, Schwachen Stimmen"
Auch mit gedämpften, schwachen Stimmen
Wird Gottes Majestät verehrt.
Denn schallet nur der Geist darbei,
So ist ihm solches ein Geschrei,
Das er im Himmel selber hört.
かよわき 声すらも
み神を あがむべし
みたま ましませば
歌は 天(あめ)に
とどかん
BWV 36からもう一曲、美しいソプラノ・アリアを紹介します。
ヴァイオリンのメロディとソプラノが交互に旋律を奏でる作品、聴いていて穏やかな気持ちにさせてくれます。
J. S. BACH, Cantata «Schwingt freudig euch empor»
BWV 36 (John Eliot Gardiner)
5.3. BWV 61 (「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」Cantata For The First Sunday In Advent Nun Komm, Der Heiden Heiland) - Aria (Soprano): "Öffne Dich, Mein Ganzes Herze"
Öffne dich, mein ganzes Herze,
Jesus kömmt und ziehet ein.
Bin ich gleich nur Staub und Erde,
Will er mich doch nicht verschmähn,
Seine Lust an mir zu sehn,
Daß ich seine Wohnung werde.
O wie selig werd' ich sein!
開け わが 心
イェス 入りたもう
塵なる わが 身をも
賤(いや)しめたまわず
おのが すみかと
なしたまわん 主は
おお このさち いかばかりならん
BWV 61は、BWV 36と同じく待降節カンタータのひとつです。
通奏低音をバックに優しく朗らかに唄うソプラノが美しい作品です。
J.S. BACH, Cantata BWV 61
«Nun komm, der Heiden Heiland I» John Eliot Gardiner
5.4. BWV 62 (「いざ来ませ、異邦人の救い主よⅡ」 Nun Komm, Der Heiden Heiland) - Aria (Tenor): "Bewundert, O Menschen, Dies Große Geheimnis"
Bewundert, o Menschen, dies große Geheimnis:
Der höchste Beherrscher erscheinet der Welt.
Hier werden die Schätze des Himmels entdecket,
Hier wird uns ein göttliches Manna bestellt,
O Wunder! die Keuschheit wird gar nicht beflecket.
仰げ 大いなる この不思議を
高き 天の主 地に 出でぬ
ここに 天の宝 現われ
神の み糧(かて) 備えられ
われらを きよめ 強めたもう
BWV 62は、BWV 36/BWV 61と同じく待降節カンタータのひとつです。
このCDボックスセットに収められている楽曲のうち、個人的には最も気に入っているアリアです。
バッハの楽曲は、多くのソプラノ・アリアはもちろん素晴らしいのですが、テノールのアリアも負けていません。
J.S. BACH, Cantata BWV 62
«Nun komm, der Heiden Heiland II» John Eliot Gardiner
5.5. BWV 63 (「彫りきざめ この日」 Christmas Cantatas Christen, Ätzet Diesen Tag) - Duet (Alto, Tenor): "Ruft Und Fleht Den Himmel An"
Ruft und fleht den Himmel an,
Kommt, ihr Christen, kommt zum Reihen,
Ihr sollt euch ob dem erfreuen,
Was Gott hat anheut getan!
Da uns Seine Huld verpfleget
Und mit so viel Heil beleget,
Daß man nicht g'nug danken kann.
呼ばわれ み空に
来たれ 主の 民 こぞり
喜べ 今日 この日
成れる 大みわざ
いつくしみ 溢れ
大いなる 救いに
われら 謝しまつらん
アルト・テノールの二重唱です。
BWV
63は、バッハがワイマールの宮廷楽師長に任命された1714年12月25日に演奏された曲です。
クリスマスにふさわしい祝典的な合唱曲で始まりますが、この二重唱も明るく脈動感に満ちた名曲です。
J.S. Bach: "Christen, ätzet diesen Tag" Cantata, BWV 63
- No. 5 "Ruft und fleht den Himmel an"
5.6. BWV 66 (「よろこべ、汝らの心」 Erfreut Euch, Ihr Herzen) - Aria (Bass): "Lasset Dem Höchsten Ein Danklied Erschallen"
Lasset dem Höchsten ein Danklied erschallen
Vor sein Erbarmen und ewige Treu.
Jesus erscheinet, uns Friede zu geben,
Jesus berufet uns, mit ihm zu leben,
Täglich wird seine Barmherzigkeit neu.
世界よ、立ち去れ、
主の救いの力を見よ
死はもはや勝利しない
命の冠はわたしたちのものだ
バスの力強いアリアです。この曲を聴くと全身に元気がみなぎってきますね。
J.S. Bach: "Erfreut euch, ihr Herzen" Cantata, BWV 66
- Aria "Lasset dem Höchsten ein Danklied...
5.7. BWV 82 (「われ 足れり」 Ich Habe Genug) - Aria (Bass): "Schlummert Ein, Ihr Matten Augen"
Schlummert ein, ihr matten Augen,
Fallet sanft und selig zu!
Welt, ich bleibe nicht mehr hier,
Hab ich doch kein Teil an dir,
Das der Seele könnte taugen.
Hier muß ich das Elend bauen,
Aber dort, dort werd ich schauen
Süßen Friede, stille Ruh.
まどろめ 弱れる まなこ
やすらに 閉じよ.
われ 留(とどま)らじ,
もはや この世に,
わが 魂に 益なし.
ここは 苦しみ のみ,
かしこに 見るは
甘き 平和,安らぎ
この穏やかなバス・アリアは、なんと11分11秒と、バッハの膨大なアリアのなかでも最も長い作品ではないでしょうか。
さざ波が打ち寄せてはまた引くような、同じメロディが何度も繰り返される、ゆったりとしたテンポの作品です。
J.S. Bach: Ich habe genug, Cantata BWV 82
- No. 3 Aria: Schlummert ein, ihr matten Augen
5.8. BWV 98 (「神のみわざは善きかな」 Was Gott Tut, Das Ist Wohlgetan) - Chorus: "Was Gott Tut, Das Ist Wohlgetan"
Was Gott tut, das ist wohlgetan,
Es bleibt gerecht sein Wille;
Wie er fängt meine Sachen an,
Will ich ihm halten stille.
Er ist mein Gott,
Der in der Not
Mich wohl weiß zu erhalten;
Drum laß ich ihn nur walten.
神のみわざは善きかな、
それは決して誤りではない
どのようにしても、私の心は静まり、
主の御言葉に満ちている
主がどの道を選ばれようとも、
私は主の御手の中に安らぐ
小気味良いテンポのコーラスです。まるで室内楽曲のような作品。
J.S. Bach: Cantata: "Was Gott tut, das ist wohlgetan",
BWV 98 - Chorale "Was Gott tut, das ist...
5.9. BWV 106 (「神の時は いとも ただし」 Gottes Zeit Ist Die Allerbeste Zeit, "Actus Tragicus") - Sonatina
BWV 106、通称「哀悼行事」(Actus
Tragicus)と呼ばれています。
以下はWikiからの引用です。
全4曲からなり、当時の死生観を反映した作品として、また草創期の素朴な作品として重視する愛好家も多く、のちの整然としたカンタータとは違う構造もあいまって、非常に人気の高いカンタータの一つである。
第1曲 ソナティーナ
リコーダー2・ガンバ2、通奏低音、ヘ長調(変ホ長調)、4/4拍子
寄り添うガンバと歩行音型を刻む通奏低音を前奏として、リコーダーが主導する。ユニゾンを基本としながら、波動音型のパートでは別れて和音を交し合う。素朴な音楽だが、タイトルどおり提示・展開・再現のソナタ形式で構成されている。
(引用おわり)
冒頭のソナティーナは、リコーダーが印象的な素晴らしい曲で、これを聴くたびに幸福な気分に浸ることができます。
J.S. Bach: Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit,
Cantata BWV 106 - No. 1 Sonatina
5.10. BWV 121 (「われらまさにキリストを讃うべし」 Christum Wir Sollen Loben Schon) - Aria (Bass): "Johannis Freudenvolles Springen"
Johannis freudenvolles Springen
erkannte dich, mein Jesu, schon.
Nun da ein Glaubensarm dich hält,
so will mein Herze von der Welt
zu deiner Krippe brünstig dringen.
ヨハネの喜びに満ちた踊りは
あなたを、私のイエスよ、すでに知っていたからだ
今、信仰の腕はあなたを抱く、
それ故私の心はこの世を捨てて、
あなたの飼い葉桶に心を燃やして進むのだ
BWV 121は、降誕祭のためのコラール・カンタータです。
降誕祭(こうたんさい)とは、クリスマスのことで、イエス・キリストの降誕を祝う祭日です。違いはありません。
バス・アリアはワクワクするような、生命力に満ち溢れています。クリスマスを迎えた喜びを象徴しているような作品です。
J.S. Bach: Cantata "Christum wir sollen loben schon", BWV 121
- Aria: Johannis freudenvolles...
6. ガーディナー盤のクリスマス・オラトリオから"Sinfonia"
ガーディナーのクリスマス・オラトリオは、この22CDボックスに収録されているのですが、CDボックスが発売される遥か以前(1989年)にリリースされた2枚組CDを愛聴していました。
個人的にはこのガーディナー盤が、クリスマス・オラトリオの最高の演奏だと思っています。
第10曲のSinfoniaは、『クリスマス・オラトリオ』BWV248
全64曲(演奏時間約2時間30分)のなかで、声楽を伴わない器楽曲です。
しかし、この曲を聴けば『クリスマス・オラトリオ』が如何に素晴らしい作品なのかわかるでしょう。
『クリスマス・オラトリオ』のなかでのハイライトではないでしょうか。
下はガーディナー指揮の映像です。
Bach: Weihnachtsoratorium, Sinfonia - Sir John Eliot Gardiner
この曲を聴いただけで、気分はすっかりクリスマスです。
7. その他の声楽曲
『教会カンタータ』と『クリスマス・オラトリオ』のほかにも、クリスマスの季節にピッタリのバッハの声楽曲を紹介します。
『マタイ受難曲』は、新約聖書「マタイによる福音書」のキリストの受難を題材にした受難曲で、ヨハン・セバスチャン・バッハの最高傑作にして、西洋音楽の最高傑作、人類の財産です。
『マタイ受難曲』の第65曲「わが心よ、おのれを浄めよ」は、個人的には全てのバッハの声楽曲のなかで最も気に入っています。
「わが心よ、おのれを浄めよ」
Mache dich, mein Herze, rein,
Ich will Jesum selbst begraben.
Denn er soll nunmehr in mir
Für und für eine süße Ruhe haben.
Welt, geh aus, laß Jesum ein!
わが心よ、おのれを浄めよ
私はイエスをこの手で葬ろう
なぜなら彼はこれから私の中で
いつまでも甘い安らぎの時を過ごし続けるのだから。
世よ、出て行け、イエスを迎え入れさせよ!
また、『ヨハネ受難曲』も、『マタイ受難曲』と並んでバッハの最高傑作のひとつです。
バッハの声楽曲は、どれも傑作揃いで、クリスマスの季節に聴くには最高です。
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