久しぶりのプログレ(プログレッシブ・ロック)投稿です。
キング・クリムゾンのアルバムは、通常のCD盤だけでなく、DVD-Audioのマルチチャンネル盤も発売されています。
キング・クリムゾンのアルバムのなかでは
『クリムゾン・キングの宮殿』
『太陽と戦慄』
『レッド』
『スラック』
『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』
が個人的にベスト5アルバムなのですが、最近『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』を入手して、5枚のマルチチャンネル盤がすべて手元に揃いました。
以下にその5枚のレビューを記します。
0. キング・クリムゾンのマルチチャンネル盤
プログレッシブ・ロック(通称プログレ)とは、1970年代にイギリスを中心に一大ブームを巻き起こしたロックのジャンルを指すもので、従来のロックの表現を越えて、クラシックやジャズとの融合を目指した前衛的もしくは先進的(プログレッシブ)な音楽と定義されています。
バンド活動の最盛期は1970年から1980年代で、その後は解散や再結成を繰り返していますが、その後の音楽界に与えた影響は大きく、プログレッシブロックというジャンルは現在でも根強い人気を誇っています。
代表的なバンドでは、
キングクリムゾン(King Crimson)
ピンクフロイド(Pink Floyd)
イエス(Yes)
エマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)
ジェネシス(Genesis)
が5大プログレバンドと呼ばれています。
キング・クリムゾンは、その5大プログレバンドのひとつで、1969年の結成以来、メンバーチェンジを繰り返しながらも、2003年まで活動を続けていた非常に息の長いバンドでした。
以下はWikiからの引用です。
キング・クリムゾン
キング・クリムゾン(King
Crimson)は、イングランド出身のプログレッシヴ・ロック・バンド。
同国のミュージシャン、ロバート・フリップが主宰を務めていることで知られ、同分野で重要な位置に格付けられているグループの一つ。活動は中断期間を挟みながら50年以上に及び、ロック史に大きな足跡を刻んでいる。
概要
1968年12月に結成。アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』で1969年にデビュー。以降、リーダーのロバート・フリップはバンドのメンバーを次々と替えていき、音楽性も多様に変遷を辿った。
活動は、大きく4つの時期に分けられる。
1960年代末 - 1970年代前半
プログレッシブ・ロック形成の時代。演奏ジャンルに明確な線引きもなく、バンド史上最も実験性(エクスペリメンタル)に富んでいた。
1980年代前半
管弦楽器やメロトロンを廃したギター・ロックに徹し、これまでの音楽性を転換。音響機器の飛躍的な進歩もあり、ニュー・ウェイヴの時代に沿ったスタイルを展開した。通称ディシプリン期とも呼ばれる。
1990年代中半 - 2000年代中半
ヘヴィメタル路線を推進したプログレッシブ・メタルを展開。メタル・クリムゾンとも呼ばれ、独自のヘヴィサウンド「ヌーヴォメタル」を創り出した。
2010年代中半 - 2020年代前半
公演活動にシフトし、ライブサウンドに特化。過去の作品を高度なレベルで演奏する、洗練かつ円熟した時代。
(引用おわり)
キング・クリムゾンはプログレッシブ・ロック・バンドとしては異例なほど長期間活動しており、その進化は常に時代を先取りしてきました。
キング・クリムゾンがプログレッシブ・ロックを開拓し尽くした結果、プログレッシブ・ロックというジャンルは終焉を迎えたとみなす人もいます。
私がプログレッシブ・ロックと出会ったのは、中学3年生のときに聴いたエマーソン・レイク・アンド・パーマーの「展覧会の絵」でした。
以来、どっぷりとプログレッシブ・ロックのマニアックかつ深淵な世界にハマってしまいました。
プログレバンドの作品には、通常のCDだけでなく、SACDやDVD-Audioといったマルチチャンネル(サラウンド、または5.1ch)、いわゆるハイレゾ盤が多くリリースされています。
プログレのハイレゾ盤については、以前ブログに書きました。
キング・クリムゾンのマルチチャンネル盤は、2009年に、デビュー盤『クリムゾン・キングの宮殿』の発売40周年記念でDVD
Audio盤(48kHz, 24bit)がリリースされたのを皮切りに、すべての作品がDVD Audio化されました。
以来、コツコツと買い貯めて、先日『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』のDVD-Audio盤を購入、個人的なベストアルバムの名盤5枚がすべて揃いました。
そのDVD-Audioのリミックスによる音質向上効果は凄まじく、またスティーブ・ウィルソンによるマルチチャンネルトラックも完成度が高く、これまでのCD盤とは次元の違う音響効果を楽しめるようになりました。
1. 『クリムゾン・キングの宮殿』
1969年リリースのキング・クリムゾンの衝撃のデビューアルバムです。
当時ビルボード・チャートで1位だったビートルズの名作『アビーロード』ををチャート1位から蹴落としたアルバムとして名高いです。
しかし、全英オフィシャルチャートでは最高5位、全米ビルボードチャートは28位だったようです。
プログレッシブ・ロックの特徴であるロックとクラシック、ジャズの融合の極致の世界が堪能できます。潰れたロックのダミ声に、ヴィブラフォンやフルートといった楽器による美しい旋律が織り交ぜられる物悲しくも独創的な音楽です。
実はこのアルバム、音楽性はともかく、発売当初のオリジナルのLP/CDの音質はお世辞にもいい音とは言えなかった代物でした。
リリースが1969年と古いとはいえ、分解能が低くこもりがちの音質で、ステレオ効果も薄いものでした。
ところが、2009年に発売されたこの発売40周年記念盤は、CD(24kHz, 16bit)/DVD-Audio(48kHz, 24bit)ともに、劇的な音質向上が施されました。
4曲目の抒情的な「ムーンチャイルド」は、以前「バッファロー66」という映画でも使われていた印象的な曲です。
この曲のスネアドラムやハイハットの鮮烈な音質を聴くと、以前のLPやCDからはびっくりするほど音質改善されています。
King Crimson - Moonchild (Including "The Dream" And "The Illusion")
この発売40周年記念盤は、2009年に発売されました。
マルチチャンネルでは、グレッグ・レイクの透明なボーカルとギターがセンタースピーカーの中央に定位し、序盤のドラムのハイハットなどはフロントの左右のスピーカーに分散、ザイロフォンなどはリアのスピーカーも含めて空間を取り巻くように聴こえてきます。
ステレオのCDでは味わうことにできない『クリムゾン・キングの宮殿』の音響の世界に身体をどっぷりと浸すことができます。
スティーブ・ウィルソンのリミックスは流石で、いたずらにマルチチャンネルに音源を振らすことなく、非常に自然な形に仕上がっています。
2. 『太陽と戦慄』
1973年リリースのキング・クリムゾンの6作目。
中期の大傑作といわれている理由は、その暴力的な表現と繊細で知的な音楽が見事に融和しているからだと思います。デビュー作の「クリムゾン・キングの宮殿」の幻影的なイメージはここでは薄れ、よりハード寄りな音作りになっています。
「トーキング・ドラム」から「太陽と戦慄パートII」に移行する部分のヴァイオリンを効果的に使った緊張感と、突如神経を逆撫でするような異音とその後のシビれるようなギターのリフは、このアルバムの聴きどころです。
「トーキング・ドラム」から「太陽と戦慄パートII」に移行する部分のヴァイオリンを効果的に使った緊張感と、突如神経を逆撫でするような異音とその後のシビれるようなギターのリフは、このアルバムの聴きどころです。
以下の「太陽と戦慄パートII」をぜひお聞きください。
King Crimson - Larks' Tongues In Aspic, Part Two
この発売40周年記念盤は、2012年に発売されました。
マルチチャンネルでは、ジョン・ウェットンのボーカルがセンタースピーカーの中央に定位します。
リズムセクションの楽器群は、フロントの左右スピーカーを中心に、時折リアスピーカーに音が分散されるなど、こちらもナチュラルなミキシングに仕上がっています。
キング・クリムゾンの楽曲は、いろいろな楽器が複雑に混じり合うパターンが多いので、マルチチャンネル向けと言えるかもしれません。
3. 『レッド』
1974年リリースのキング・クリムゾンの8作目。
ローリング・ストーン誌の『史上最高のプログレッシブ・ロック・アルバム50選』で第15位に選ばれるなど、キング・クリムゾンの最高傑作と評価する人も多い名盤です。
ジャケットの3人は、リーダーのロバート・フリップ(ギター、メロトロン)、ジョン・ウェットン(ベース、ヴォーカル)、ビル・ブルーフォード(ドラムス、パーカッション)です。
「表題曲「レッド」はディストーション・ギターのハードなリフを前面に押し出した重厚な曲で、従来のキング・クリムゾンの音楽からの趣向の変化を見せている」(Wikiからの引用)とある通り、まずはアルバム・タイトルの「レッド」の正統的なロックのカッコよさに惹きつけられます。
King Crimson - Red (OFFICIAL)
しかしこの作品のハイライトは、最後に収録されている12分に及ぶ大作「スターレス」ではないでしょうか。
抒情的な導入部、激しい即興演奏の後半部から、終盤には主題が展開されて壮大なスケールで締めくくるこの曲には、キング・クリムゾンのエッセンスがすべて詰まっています。
この発売40周年記念盤は、2009年に発売されました。
マルチチャンネルでは、ストレートな楽曲の「レッド」はサラウンド効果は控え目ですが、「プロヴィデンス」などは、ギターが前後左右のスピーカー間を行き交うようなエフェクトが施されています。
『太陽と戦慄』と同様、ジョン・ウェットンのボーカルがセンタースピーカーの中央に定位します。
個人的にはジョン・ウェットンのポップス指向の強いヴォーカルは、多くのプログレバンドのなかでも特に気にっています。
ジョン・ウェットン
ジョン・ウェットンは、『太陽と戦慄』『暗黒の世界』『レッド』『USA』の4枚のアルバムのメンバーでした。
ジョン・ウェットンといえば、エイジアでの活動が一番有名だと思いますが、彼のソロ・アルバム『Rock
of Faith』(Spotifyで偶然見つけた)は、非常に完成度が高いと思います。
4. 『スラック』
1995年リリースのキング・クリムゾンの12作目。
個人的には、社会人になってからリアルタイムで体験したキング・クリムゾンとなります。
前年にリリースされた『ヴルーム』に収録されていたタイトル曲を含めて、珠玉のごとく名作が散りばめられた愛すべきアルバム。
King Crimson - VROOOM
インダストリアル・ロックに通じる無機質なサウンド、捨て曲ゼロの個人的には非常に気に入っているアルバムです。
「レッド」に共通するカッコよさ炸裂の曲ですね!
小曲「インナーガーデン
II」も雰囲気があって超お気に入りの曲です。
King Crimson - Inner Garden II
さすがに1990年代の作品となると、デジタルマスタリングの威力なのか、マルチチャンネルも含めて抜群の音質を誇ります(そのぶん1970~80年代の温かみは薄れますが)。
5. 『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』
2003年リリースのキング・クリムゾンの14作目。(現時点で)最後のオリジナル・アルバムです。
これまでもメンバーチェンジを幾度も繰り返してきましたが、このアルバムでは、ロバート・フリップ、エイドリアン・ブリュー、パット・マステロット、トレイ・ガンの4人でレコーディングされました。
『スラック』に代表される1990~2000年代以降の「ヌーヴォー・メタル」というコンセプトが完成した作品として知られています。
2曲目の「レヴェル・ファイブ」は、まさにこれまでのキング・クリムゾンのヘヴィー指向なサウンドの集大成といえる作品です。
この発売40周年記念盤は、2019年に発売されました。
マルチチャンネルでは、「レヴェル・ファイブ」はオーソドックスなミキシングに無難に処理されています。
一方、「パワー・トゥ・ビリーブII」や「デンジャラス・カーブス」などの楽曲は、前後左右のスピーカーをフル活用した音作りになっており、マルチチャンネル効果が絶大です。
ステレオでは決して再現できない音場感は、これぞまさにマルチチャンネル盤の醍醐味といった感じです。
以上、キング・クリムゾンの5枚のマルチチャンネル盤のレビューでした。
1968年の結成以来、50年以上の長い期間にわたって何度も解散や再結成、メンバーの変遷を繰り返してきました。
かつての中核メンバーだった、グレッグ・レイクも、ジョン・ウェットンも、イアン・マクドナルドも、もう亡くなってしまったんですよね。。。
(以下はWikiからの引用です)
2020年代 プロジェクトの終焉(2021年- )
2021年夏から北米ツアーを再開。そしてジャッコ・ジャクジクは北米ツアーについて、バンドにとって最後になる可能性を示唆する。各種イベント延期分のしわ寄せで会場確保が今後困難になること、正常に戻った頃には年長メンバーの高齢化が進行している健康事情を説明した。
同11月末から3年ぶりの来日ツアーを開催。そしてトニー・レヴィンも前述の北米ツアーと同様に、ツアーの形態による開催はこの日本公演をもって最後を示唆した。ロバート・フリップから『ツアーの全行程を「日本で幕を閉じる」』と説明された話を明かし、コロナ禍で開催実現に奔走してくれた関係者に謝意を伝えている。
2022年2月、創設メンバーのイアン・マクドナルドが死去。3月、バンドのドキュメンタリー映画『In
the Court of the Crimson King』を公開上映。
同年4月、メンバーのギャヴィン・ハリソンが音楽メディアの取材で、バンドの状況を自分なりに語った。昨年末の最終ツアーは『2013年からのプロジェクトが完走し、あくまで一つのサイクルが終了したに過ぎない』『ロバート・フリップは物事をプロジェクト単位(○○年周期)で考えるため、その度に白か黒か(継続なのか解散なのか)といった判断はしない』と私見を述べ、今後どんなケースもあり得ると説明している。
そして同年7月、ロバート・フリップ本人が取材に答え、『我々の年齢の現実からすれば、今後のツアーは難しい』『キング・クリムゾンのギターパートは演奏オリンピックのようなもので、若い頃のようなアスリート能力を求められても応えるには困難』と、ツアーの再開は明確に否定した。
(引用おわり)
ロバート・フリップも今年で78歳になりました。
この先、キング・クリムゾン(とロバート・フリップ)は何処に向かうのでしょうか。。。?
6. マルチチャンネル盤の再生環境
最後に、マルチチャンネル盤の再生環境について簡単に紹介します。
ちなみに、マルチチャンネルとサラウンドは全く同じ意味の用語ですが、音楽ではマルチチャンネル、映画ではサラウンドと言われるのが多いような気がします。
CDなどの通常のステレオ再生とは違い、マルチチャンネル盤の再生には前後左右に配置したいくつものスピーカーが必要となります。
典型的なマルチチャンネル盤のチャンネル数は、5.1chなので、左右のフロントスピーカーに加えて、センタースピーカー、左右のリアスピーカー、そして重低音用のサブウーファーの構成です。
サブウーファーは、アンプで信号をフロントスピーカーに振り分けることもできるので、その場合は、5.0chとなります。
マルチチャンネル盤の再生には、通常のCDプレーヤーではなく、ブルーレイディスクプレーヤー/レコーダーか、ユニバーサルプレーヤーというマルチチャンネル対応の再生機器(もしくはPC)と、AVアンプが必要となります。
典型的な構成では、プレーヤーとAVアンプをHDMI(もしくはアナログケーブル)で接続し、AVアンプのスピーカー出力端子をそれぞれのスピーカーに接続(サブウーファだけはアナログ出力を直接接続)します。
マルチチャンネルのデジタル信号のD/A変換は、HDMIで接続した場合はAVアンプ側で、アナログケーブルで接続した場合は、プレーヤー側で行われます。
拙宅では、OPPOのユニバーサルプレーヤーと、マランツのAVアンプ、そしてモニターオーディオのスピーカーの環境で再生しています。
ブルーレイディスクプレーヤー/レコーダーの場合は、DTSフォーマットの圧縮音源が再生され、ユニバーサルプレーヤーの場合は、MLPロスレスという非圧縮フォーマットの音源が再生されます。
ハイレゾという意味では、MLPロスレスのほうが音質的に優れているのですが、普通に聞いている分にはDTSフォーマットの圧縮音源との差はまずわからないでしょう。
予断ですが、次世代オーディオフォーマットとしてDVD Audioの競合であるSACDは、SACDプレーヤーかユニバーサルプレーヤーでしか再生できないので、再生機器の幅広さという点では、DVD Audioのほうが利便性は高いです。
残念ながら、DVD AudioやSACDのマルチチャンネルでの音楽視聴は、リアスピーカーが必要など、機器の構成に手間がかかることなどから、一部のオーディオマニアを除いて一般的に普及しているとは言い難い状況です。
しかし、CDで聴き慣れた音楽も、マルチチャンネルの環境で聴くとオリジナルとはまた違った発見や楽しみがあるのでぜひおススメです。
【究極のプログレッシブ・ロックアルバム名盤ベスト10】ハイレゾディスクで聴くプログレッシブ・ロック(King Crimson, Pink Floyd, Yes,
EL&P)
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