ブレイク・クラウチの3部作『パインズ』『ウェイワード』『ラスト・タウン』を読みました。
久しぶりにSF小説(というよりミステリー小説)を読みましたが、この三部作は面白くて読みやすく、グイグイ引き込まれてしまい、夢中になって2週間ほどで読了してしまいました。
以下に三部作の内容をまとめました(ネタバレ注意)。
0. ブレイク・クラウチ
ウィリアム・ブレイク・クラウチはアメリカの作家で、『ダークマター』、『リカーション』、『アップグレード』、そして2015年にテレビシリーズ化された『ウェイワード・パインズ三部作』などの本で知られています。『ダークマター』は2024年にテレビ化されました。
ブレイク・クラウチ(出典:Wiki)
以下Wikiより引用です。
クラウチはノースカロライナ州ステイツビルの町の近くで生まれました。ノースアイアデル高校とノースカロライナ大学チャペルヒル校に通い、[
1 ]
2000年に英語とクリエイティブライティングの学位を取得して卒業しました。
クラウチは2004年と2005年に最初の2冊の小説『デザート・プレイス』と『ロックド・ドア』をそれぞれ出版した。彼の作品はエラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン、アルフレッド・ヒッチコック・ミステリー・マガジン、スリラー2
、その他のアンソロジーに掲載されている。2016年にはSF小説『ダーク・マター』を出版した。
クラウチのウェイワード・パインズ三部作(2012-14)は、2015年にテレビシリーズ「ウェイワード・パインズ」に採用されました。別の作品「グッド・ビヘイビア」は、
2016年11月にテレビシリーズとして初公開されました。
2019年、クラウチは『Recursion』というタイトルの別のSF小説を発表し、批評家から高い評価を得た。
2020年、クラウチはソニー・ピクチャーズ向けに『ダークマター』をテレビシリーズ化するための脚本に取り掛かり、2024年5月8日にApple
TV+で公開された。
(引用おわり)
クラウチ(倉内)という姓から、日系人ではないかと思いましたが、顔はアジア系ではないし、関連情報も見つけることはできませんでした。
ブレイク・クラウチを知ったのは、たまたま図書館で借りたSF小説『ダーク・マター』(2017)を読んだのがきっかけでした。
以下は早川書房の書籍紹介からの引用です。
問題作『パインズ』著者の最新刊!
物理学の新星として期待されたジェイソンも、今は大学で教えるだけの毎日。それでも愛する家族とともに幸せな日々を送っていた。だがある晩、謎の男に暴行されたことを契機ににその人生は一変する。かつてのわが家はなくなり、自身も人気科学者に……。
これまでの人生は一体どこへ? ノンストップ・スリラー!
(引用おわり)
この小説は、宇宙物理学の『ダーク・マター』そのものは全く関係ないストーリーでしたが、パラレルワールドをテーマにしたなかなか面白い小説だったので、同じ著者の作品を読もうと思って、ウェイワード・パインズ三部作に巡り合いました。
1. 『パインズ -美しい地獄-』
『パインズ -美しい地獄-』(2012)
以下は早川書房の書籍紹介からの引用です。
この町では尋常でない何かが起こっている。捜査官バークの生還可能性はゼロなのか? ラストは絶対予測不能! 衝撃のスリラー。
川沿いの芝生で目覚めた男は所持品の大半を失い、自分の名さえ思い出せない。しかも全身がやけに痛む。事故にでも遭ったのか…。やがて病院で記憶を回復し、みずからが捜査官だと思い出した男は、町の保安官や住民に助けを求めた。
だが、この美しい町パインズはどこか狂っていた。住民は男が町から出ようとするのを執拗に阻み続け、外部との連絡にも必ず邪魔が入る。
(引用おわり)
記憶を失って目覚めた見知らぬ閑静な街が、何だかおかしいというストーリー展開は、前にもあったような記憶が。。。
主人公のイーサン・バークは、妻子とともにシアトル近郊のクイーン・アンという郊外に在住していたという設定。
シアトルは、米国ワシントン州の州都です。
ダウンタウンにはスペース・ニードルというタワーが建っていて街の象徴になっています。
ボーイング社やマイクロソフト社の本社もシアトルにあります。
TVシリーズ『ツイン・ピークス』もシアトル郊外にあります。
クイーン・アンという街を調べたら、シアトル市街から近くになる実在する街でした。
一方、物語の舞台のウェイワード・パインズという架空の街は、アイダホ州にある小さな町という設定です。
アイダホ州は、ワシントン州の東に隣接した州ですが、シアトルと違って日本人にはほとんど馴染みのない場所ではないでしょうか?(ワタシも一度も訪れたことはありません)
アイダホが舞台の映画や小説って、ちょっと思いつきません。
イーサン・バークは特別捜査官ですが、元兵士でファルージャでブラックホークのパイロットでした。
彼は、このおかしい街を脱出しようと試みるものの、街全体が高圧電流の流れるフェンスで囲われており、しかも周囲は断崖絶壁で孤立しています。
なんとなく、ナイト・シャマラン監督の映画『ヴィレッジ』を彷彿とさせますね。
謎が謎を呼ぶ展開が続き、読み進めるにつれてすっかり魅了されてしまいます。。。
人間ではない動物(アビー)が登場して、いよいよ頭が混乱してきます。
終盤で、ようやく、主人公は、1800年以上昔に仮死状態に置かれていたことが明かされて、いろいろなパズルが解けてきます。
ヒト・ゲノムの変質により、人類が近い将来に絶滅の危機に陥るということを予測して、選ばれた650人が仮死状態維持システムによって眠らされていたという事実が発覚。。。
人類が将来退化して食物連鎖の頂点から転落するというシナリオは、いろいろなSF小説で取り上げられてきた定番ですね。
『猿の惑星』から『星を継ぐもの』まで。。。
天才科学者による徹底した管理社会が、全編を貫くメッセージになっています。
これも定番といえば定番。
保安官のポープが、「あの男はやたらと仕切りたがる」という理由だけで、ピルチャーに見殺しにされるくだりは、さすがに同情してしまいましたが。
物語は、主人公のイーサン・バークが、ポープに代わって新しい保安官として家族と合流して街に住み着くという形で締めくくられます。
なかなか壮大な娯楽作品でした。
あとがきで、著者自ら、本作品はデヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス』のような作品を完成させたかったと述べています。
2. 『ウェイワード -背反者たち-』
『ウェイワード -背反者たち-』(2013)
以下は早川書房の書籍紹介からの引用です。
絵のように美しい町ウェイワード・パインズで、初めての殺人事件が起こる。打ち捨てられていた女性の死体には、血が一滴もなく拷問を受けた形跡があった。
捜査のなか、被害者の意外な正体と町に潜む闇が浮かびあがる……。『パインズ』続編、シャマラン監督ドラマ化!
(引用おわり)
三部作の中間となる本篇は、ウェイワード・パインズで保安官となったイーサン・バークがある殺人事件の捜査を通して、徐々に街に対する不信を深めていくという展開です。
章ごとに時代も激しく前後しますが、映画と違って小説は簡単に読み返せるし、文字情報も多いので、迷うことはないと思います。
ピルチャーの娘のアリッサを殺した犯人は誰なのか?
何だか『ツイン・ピークス』そっくりの展開だと思って読み進めていくと、犯人は実の父親のピルチャーだったということで、「誰がローラを殺したのか?」と全く同じでした。
ただし、娘殺しの動機が全然違うので、パクリというよりはインスパイアされてそういうストーリーになった気がします。
犯人のピルチャー自身が、イーサン・バークに犯人を突き止めるように指示するところも、ミステリー小説では定番の仕掛けです。
SF小説というよりは、ミステリー小説ですね。
登場人物はなかなか上手く設定されているので、読んでいてそう簡単にはタネを見破ることはできませんが。
それにしても、本作も映画化を前提にして書かれた作品であるのは間違いないと思います。
3. 『ラスト・タウン -神の怒り-』
『ラスト・タウン -神の怒り-』(2014)
以下は早川書房の書籍紹介からの引用です。
保安官イーサン・バークの告発が引き金となって、町を外界と隔てるゲートは開け放たれた!異形の生き物が群れをなしてなだれ込み、人びとに襲いかかる。
凶暴な牙と爪!血塗られた町を飛び交う恐怖の叫び!イーサンは住民を組織して、怪物たちや町の創設者に立ち向かう。
だが、仲間は次々と怪物の餌食に……。人類最後の町の未来はいかに?
『パインズ』『ウェイワード』に続く三部作の完結編!
(引用おわり)
冒頭から、フェンスの外から街に侵入したアビーたちに人間が生きたまま喰われるという殺戮の展開が続きます。
前半はほとんどサバイバルストーリー。
イーサン・バークだけは、相変わらず銃でアビーをやっつけまくって、ほとんど無双状態、ここらへんは、ハリウッドの能天気ヒーローものと変わらない
笑
かつての不倫相手と再びタッグを組むというのも、アメリカらしい。
不倫というテーマが、ほとんどすべての映画や小説に登場するのには、ちょっとうんざりしてしまいますが。。。
ピルチャーは、自分を神と同格の存在として意識しているので、自分を裏切った人間は、生かす価値がないと判断したわけですが、ヤハウェの神のような性格ですね。。。
悪役のパムがあっさりと死んでしまうところはちょっと拍子抜け(しかも、ハスラーの登場が偶然に偶然が重なり過ぎていてちょっと不自然)でした。
悪の最期がどういう運命を辿るのか、もう少しひねりが欲しかったです。
ピルチャーの善悪については、一概に言えない(そもそも彼がいなかったら人類はとっくに絶滅していた)ところが、この小説の興味深いところだと思います。
また、そのピルチャーを裁くにあたり、民主主義的に生き残った住民全員で採決するというのも、果たして選挙による民主主義は万能なのか?という問いかけにもなっている気がします。
飼育施設に監禁していたメスのアビーを解放したことが、種の進化につながって、やがてアビーが知的生命体になるというのが、将来の地球への期待につながるわけです。
ラストは、生き残った人間がみな機能停止装置に入って、7万年後に目覚めるようにセットするという結末です。
果たして7万年後の地球は人類にとって存続できる環境なのか?アビーは進化しているのか?絶滅しているのか?そもその地球の環境は人間が住めるものなのか?
いろいろと想像が膨らんで三部作は終わります。
『ラスト・タウン』は一気読みしてしまいました。
以上、三部作を一気に読んだ感想ですが、古典SF小説の名作のような高尚な内容ではありませんが、エンターテインメントとしてはいろいろな構成要素を上手くまとめた出来栄えだと思います。
4. 『ウェイワード・パインズ 出口のない街』
ウェイワード・パインズ三部作は、『ウェイワード・パインズ
出口のない街』というタイトルで、2015年5月14日から2016年7月27日までFOXTVにおいて2シーズン放送されました(各シーズン全10話)。
ナイト・シャマラン監督、マット・ディロン主演という超豪華キャストで、DVDも発売されています。
(以下Amazonからの引用です)
●映画界の大物2人が初タッグ!
『シックス・センス』M・ナイト・シャマラン監督×『アウトサイダー』『クラッシュ』マット・ディロン
M・ナイト・シャマラン監督のTV初進出作。マット・ディロンTV初主演。強力な2人のタッグにより圧倒的完成度のTVドラマがここに誕生
●謎に満ちた街で何が起こるのか?
先が読めないストーリーが展開する壮大な脱出ミステリー!
●映画を超える史上空前の<大どんでん返し>! 予測不可能!?
驚愕の結末が待っている
●原作は世界的ベストセラーミステリー小説!
『ウェイワード・パインズ』3部作
●実力派俳優たちの豪華競演!
主演のマット・ディロンの脇を固めるのは、ジュリエット・ルイス『カリフォルニア』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』、テレンス・ハワード『クラッシュ』『アイアンマン』
●予測不可能な新たなストーリーが始まる待望のシーズン2!
映画『シックス・センス』のM・ナイト・シャマランが手掛けたSFサバイバル・アクション!!
●西暦4028年のウェイワード・パインズ――。新たに街を支配していたのは第1世代、そして人類の存亡を賭けて最後の選ばれし者“Cグループ"が目覚めるのだが……。
●食糧不足、知性を持つモンスター
アビーの逆襲、そして渦巻く人間の欲望。果たして、人類絶滅の危機は防げるのか!?
●主演は、映画『スピード2』のジェイソン・パトリック。シーズン1の出演者に実力派の新たなキャストが加わって、さらにパワーアップ!
(引用おわり)
ナイト・シャマラン監督といえば、個人的にはデヴィッド・リンチ監督と並んで最もお気に入りの監督です。
主演のマット・ディロンは、私が学生時代に青春映画のアイドルスターでしたが、その後、『クラッシュ』などにも出演して実力派の俳優として大成しました。
このTVシリーズは面白そうですね!
国内では、Amazonプライム、DMM TV、楽天TVなどで視聴ができます。
さっそく年末年始にでもじっくり鑑賞しようと思います。
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